私たち日本人は米が主食です。
米に比べると、小麦や大麦などの麦類は影が薄いですが、麦類は弥生時代から食されていたそうです。
びっくりですね!
世界的に見ると麦類の歴史はさらに古く、遡ること一万年前から人は麦類を食してきました。
いま人気の古代小麦は5千年前から栽培されていたもので、古代の人の胃袋を支えていました。
イタリアで粉ものといえば、おなじみのパンとパスタです。
麦類は粒のまま食べることはせず、粒をすりつぶして粉に挽いて使うことがほとんどです。
優しい気持ちになるファッロ
弊社では、2006年にイタリア産パスタの取り扱いを始めました。
現在は古代麦1種類、古代小麦2種類をそれぞれ違う生産者に栽培してもらい、麦・小麦の種類ごとにパスタを作ってもらっています。
そのなかで今回ご紹介したいのが、古代麦のファッロです。
ファッロは、穂にたくさんの実がつき、もみ殻の中に粒が2つ入っています。
外皮であるもみ殻は非常に硬く、ちょっとやそっとではつぶれません。
もみ殻を取り除くと現れる2つの粒は玄麦と呼ばれ、火を通すと食べることができます。
弊社では、イタリアのマルケ州で新規就農したクリスチャンという生産者に、ファッロの栽培をお願いしており、今年で8年の付き合いになります。
パスタ用に種を蒔いてもらい、少しずつ生産量を増やしてきました。
パスタ用以外に、ファッロの実を挽いた全粒粉と三分搗き粉も取り扱っています。
全粒粉はパンや手打ち麺、焼き菓子に使うと味がしっかりし、ファッロの甘みと旨みが感じられます。
この粉でパンを作っているパン屋さんが数軒あり、「こねていると優しい気持ちになる」という職人もいます。
なぜだろうと、最初は私も不思議でしたが、製粉所を訪ねて腑に落ちました。
この製粉所は、1200年代から稼働しています。
現在も当時のままの製法で、粉に挽く際の摩擦熱で麦にストレスがかからないように製粉しています。
製粉には石臼を使用しているのですが、これが製粉所のオーナー自慢の天然石の石臼。
「天然の石臼って?
石が天然なのは当たり前でしょう」とオーナーに聞くと、フランスにある、石臼用に天然石を切り出している有名な産地のものだそうで、「〝ケミカル処理した材料を石臼風にした石臼〟とはまったく仕上がりが違う」と説明してくれました。
また、電力を使用せず、製粉所の下を流れる川の水力からすべての動力を賄っています。
川の動力、天然石の石臼、そして昔ながらの製法を頑固に守る製粉所オーナーの想い。
だから「ファッロの粉はこねた感触が優しく、味わいが違うのだ」と思いました。
ファッロのおすすめレシピ
私のおすすめは、ファッロ全粒粉でつくるタルト生地です。
バターやオリーブオイル、菜種油ベースでも、おいしいタルト生地ができます。
また、手打ち麺もおすすめです。
乾麺とはまた違う、噛んだときに優しい甘さと心地良いつるんとした食感が味わえます。
麺生地は、ファッロ全粒粉と水とを混ぜて練りまとめ、30分以上寝かせるとできるので簡単です。
山梨県の郷土料理「ほうとう」のように、具だくさんの和風のおつゆに入れてもおいしいです。
冬のまったりとした時間を、ファッロ全粒粉や三分搗き粉を使って、手打ち麺やおやつ作りをしながら過ごしてみてはいかがでしょうか。