桜の季節、到来ですね。イタリアでは春の花の代表はミモザ。大木に小さな黄色い花がみっしりと咲く様子は、桜に似ているといえば似ています。春が来ると同時に、弊社では一年で一番忙しい時期がやってきます。秋にとれたイタリアの生産物が一気に日本に入荷しはじめるからです。その筆頭は南イタリアが産地のエキストラバージンオイル・オルチョサンニータです。
フィルターを使わず時間をかけて分離させる
オリーブ果実は秋に収穫され、その日のうちに搾油しますが、毎日、その作業を一か月以上かけておこないます。搾油されたオイルは農園のタンクに入れて貯蔵し、それと同時に自然分離をおこないます。
収穫後すぐオリーブ果実を丸ごとつぶし、オイルとその他の成分に分離する搾油機。薬品などは使用しません。シンプルな物理的搾油で、含まれる成分が完全に分離・取り除くことができないため、最終工程で一般的にはフィルターに通し、その成分を濾過して完全に取り除きます。ただ、数十枚に重なるフィルターは果肉成分以外の目に見えないものさえも吸着させ取り除いてしまいます。香りや味わいのもとが取り除かれるため、オルチョサンニータの生産者はフィルターを使わず(濾過せず)タンク内で時間をかけて分離させています。タンク内でオイル成分より重い果肉を沈殿させるのです。こうして果肉は沈み、澱となり、クリアなオイル分と分離することができます。
オルチョサンニータを輸入し始めたころ、この沈殿が完全に終わらないうちにジョバンナさんが瓶詰をし、届いた瓶に、その果肉が沈殿していて、びっくりしたことがあります。お客様からも大変なクレームとなり、騒動になったのが今となっては懐かしい思い出です。実は、この沈殿……つまり澱入りの自然分離が完全に終わらないうちに瓶詰したものを、イタリアのしぼりたての香りと味わいを楽しんでいただく〝オルチョサンニータあらしぼり〟としてリリースしています。新ものの一番便限定でご紹介をして、かれこれ十年以上が経ちました。このあらしぼりオルチョの届くのが春。桜が咲く季節の恒例となりました。
健康な果実あっての無濾過
無濾過で輸入できるオイルの条件としてオイルが変質せぬよう、健康な果実であることが重要です。つまり農薬や肥料などで土壌汚染されていない土地のオリーブであることが必要なのです。なぜならば果肉成分にそれらが残留し、オイルの品質に影響を及ぼすからです。果実の品質の良さはもちろん、収穫後オリーブ果実が劣化しないうちに速やかに搾油されるからこそ、無濾過で作るオイルの価値があります。
毎年、楽しみにお待ちくださる方がたくさんで、〝あらしぼり〟は、今では弊社の人気アイテムとなっています。
昨年は日照りだったイタリア。一滴も雨が降らず、初夏から秋口までの過酷な天候の産地でした。天候と大地のコンディションの集結でできる、その年だけの果実のエキスといえるオリーブオイルです。イタリアの産地をダイレクトに味わっていただける無濾過の風味豊かな味わいは生産者ジョバンナさんらの手間暇、労働があってこそです。自然と人の連携でできあがるオルチョサンニータ。ぜひ、多くの方にお楽しみいただきたいです。