新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、私たちの日常生活や社会活動の形が大きく変容しました。
私の弁護士の仕事に関していえば、裁判や調停のあり方が大きく変わりましたし、会議や研修についても、オンラインで実施されることがスタンダードになりつつあります。
また、ダンサーの活動についていえば、緊急事態宣言下で、活動を休止せざるをえませんでしたが、現在、新型コロナ対策を実施するアートスペースなどで、活動を再開しています。
今回のコラムでは、8月30日に私が出演した舞台について、ご紹介します。
FOuR DANCERS
私がときどき出演させていただいているイベントに、UrBANGUILD京都という多目的アートスペースで実施される企画「FOuR DANCERS」があります。このイベントは、UrBANGUILD京都で毎月数回実施される企画で、毎回4名(4組)のダンサーが、30分間ずつパフォーマンスをおこないます。私自身は近年、年に3回程度、この企画に出演しており、今年は1月に出演させていただきました。
その後、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、このイベント自体が実施されなかった期間がありましたが、感染状況がある程度落ち着き始めたころから、イベントが再開されました。そして、8月30日、私は「FOuR DANCERS vol.173」に出演させていただきました。
音体験の共有
今回、作品をつくるにあたり、新型コロナウイルスを無視することはできませんでした。そして今回、私がテーマにしたのは、新型コロナ時代に困難となった「音体験の共有」でした。
新型コロナ時代においては、以前と同様のかたちでのコンサートやライブイベントの実施が困難になりました。また、他者とともに旅や登山などをして、自然の音を浴びることも難しくなりました。私たちは、他者と「音体験」を共有することが難しくなったといえるでしょう。しかし、他者と美しい音楽に耳を傾けたり、風の音や虫の声を感じたりすることは、豊かな体験であるに違いありません。
他方で、ダンスにおいて、音楽は重要な要素である一方、コンサートの指揮者の動きを観察すると、その動きがダンスのように感じられることがあります。その逆に、無音でのダンスから、音楽を感じることもあります。
そこで、今回、私はあたかもオーケストラの指揮者であるかのように指揮棒を持って登場し、指揮棒を振るうちに身体が大きく動き始めて踊りになるといった作品をつくりました。振られた指揮棒からは、きれいなメロディーが流れることもあれば、鳥のさえずりが聞こえることもありました。また、作品の途中で、同じく「FOuR DANCERS vol.173」に出演した友人のダンサーに舞台に登場してもらい、2人で音楽を奏でるつもりで、無音のデュオを踊ってみました。
無事に30分踊ることができました。実際に踊ってみて、また踊り終えたあとに観客の皆さんの感想をお聞きして、このテーマについて、まだ探究の緒についたばかりであることを思い知りました。
今後の舞台
今後もしばらくの間、劇場やアートスペースの活動は、以前とは異なる制約を伴って実施されることになることでしょう。しかし、そうしたなかでも、ダンサーたちは、それぞれの創意でもって、制約を乗り越え、あるいは、制約をいかして、作品を提供してくれることでしょう。また、時代に対する鋭敏な感性を通じて、次々と創造的な作品を発表してくれることでしょう。
私もダンサーの一人として、作品をつくり続けたいと思います。