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生物経済学事始

野村隆哉研究所

野村 隆哉 (のむら たかや)

1939年生まれ。京都大学農学部林学科卒業、京都大学大学院農学研究科博士課程中退。京都大学木質科学研究所助手。京都大学退官後、株式会社野村隆哉研究所、アトリエ・オータン設立。専門分野は木材物理学、木文学。木工作家。木のオモチャ作りもおこなう。朝日現代クラフト、旭川美術館招待作家。グッドデザイン選定、京都府新伝統産業認定。楽器用材研究会主宰。著作として『木のおもちゃ考』『木のひみつ』などがある。

【Vol.23】(その5)ホモ・ストレシス(都市型人間)の属性

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近畿地方は三日遅れの入梅です。しとしと降り出した雨に庭の草花が元気になりました。天気続きだと毎日の水やりに二時間近く掛ります。それでも、草花は不満顔ですが、雨が降ると見事に生き返り、翌日には一挙に草丈が伸びます。不思議なものです。

水無月の山野は、全ての植物がみずみずしい緑となり私の好きな季節です。三千坪近い研究所の敷地内ではアザミやホタルブクロが咲き乱れ、大切に育てているササユリも美しいピンクの花を可憐に咲かせてくれています。

ここ数ヶ月、少し時間にゆとりが出来たのでこの際思い切って気になっていた環境整備を始めましたがこれが大変な仕事になりました。三ヶ月間で体重が11kgも減少してしまいました。研究所の敷地外で、恐らく40年以上は放置されていたと思われる昔の畑地だったところには高さ4mもあるネザサがびっしりと生えています。現代の我国農林業のシンボルのようなところですが、思い切って刈り払ったところ、昔の里山だった頃の原風景が僅かながら再現出来たように思われました。このようにして農事の一端に関わってみると、昔の農村の原風景を維持するために百姓が日毎どれほどのエネルギーをこれらの維持のために費やしていたかが分かります。このようにいのちの営みに直接関わり、いのちと共生しながら人間の営みをどのように調和させるかということが生物経済学の原点だと思っていますが、ままごとのような百姓仕事の真似事の経験から見ても現代の物質文明を中心とする経済システムをパラダイムシフトさせることの困難さが実感できる思いです。

前置きが長くなってしまいましたが、そろそろ本題に入りたいと思います。前回、文明先進国の人種を「ホモ・ストレシス」という新しい種に分類しなおすべきではないかと提案させていただきましたが、今回の原稿を書くに当たってこの一ヶ月いろいろの情報を加え、己を含めた現代人を客観的総合的に整理してみるとほぼ間違いがないのではとの確信を得ました。文明先進国の人々は、好むと好まざるに関わらず自然から隔離された人工の環境で生活せざるをえなくなっています。この環境は際限もない快適性への欲求を亢進させる場所にもなっています。この快適性を獲得するためには金が要りますが、肉体労働による対価は頭脳労働のそれに比べて十分の一以下になってしまったようです。当然ながら頭を使う仕事へのストレスが強まり、大脳は活性化されることになるでしょう。この都市空間では金が全ての快適性を獲得するための最強のツールになるわけですから、あらゆる知恵、悪知恵を駆使して金儲けにまい進することになるのでしょう。ある者は組織を隠れ蓑に利用し、ある者は権力を利用することでこの目的を達成しようとします。彼等の視野にあるのはコスモポリタンという人工空間での快適性、快楽の追求のみで自然との共生感やいのちに対する思いやりなどは微塵もないでしょう。正に新人類、ミュータントです。

エコロジーも全て金に換算されるのでしょう。このホモ・ストレシスという新人類が通り過ぎた後は破壊し尽された不毛の砂漠が残されるだけです。

その一方で、多くの人々がいのちを救うために自分を投げ捨てて献身的な努力を続けている。マリア・テレサ、バングラデッシュのグラミン銀行、人身売買で売られていく少女達の救済に奔走しているタイのソンポップ・ジャンプラカ、インドのインデルジット・クラナは、鉄道の駅で学校を開き、子供たちを教育している。彼女によれば、男子は14歳までに、女子は10歳までに救済の手を差し伸べなければ手遅れになるという。アフリカのマウンテンゴリラの救済に一生を捧げた白人女性学者。

我国でも、名もなき多くの善意の人々によっていのちの救済や援助が行われているでしょう。一方の人間は、己の快適性の追及として物欲にこだわり、他方では、やさしさやおもいやりの塊のような人格を持ち、他愛に徹する人間が存在するわけです。このような極端な人格の差がどのようにして生じてくるのかを十分理解した上でないと、人間世界の営みを続ける上で重要な役割を担う経済問題の根底にあるものを明らかにし、問題解決の糸口を見付けることは出来ないのではないでしょうか。

この問題解決の鍵となるのが人間の脳機能にあると考えています。特に、ホモ・ストレシスがどのようにして生まれてきたかを考える上で、環境のストレスとこのストレスが人間の脳にどのような作用を及ぼすかを知る必要があるでしょう。

幸いな事に、自然科学の進歩のお蔭で少しずつ脳の機能が解明されつつあります。次回からはしばらく脳の働きについてお話してみたいと考えています。

野村隆哉(のむらたかや)

野村隆哉(のむらたかや)氏
元京都大学木質科学研究所教官。退官後も木材の研究を続け、現在は(株)野村隆哉研究所所長。燻煙熱処理技術による木質系素材の寸法安定化を研究。また、“子どもに親父の情緒を伝える”という理念のもと、「木」本来の性質を生かしたおもちゃ作りをし、「オータン」ブランドを立ち上げる。木工クラフト作家としても高い評価を受けている。

- 生物経済学事始 - 2009年7月発刊 Vol.23

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