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生物経済学事始

【Vol.24】(その6)これまた摩訶不思議なヒトの脳

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 梅雨に入ってからというものは、わが研究所の周りの雑草の旺盛な成長に圧倒されています。ギシギシ、マオウ、ヨモギにススキ、これらの植物は地下に確りと栄養根を蓄えているため刈っても刈っても二週間もすれば元の木阿弥です。根源である地下の栄養根を除かない限り賽の河原の石積みと同じ。時間と労力、ガソリンを使って対症療法に明け暮れる自分が馬鹿らしくなって根本治療をしようと根っこからおこして行くことを始めましたが、その労力たるや大変なものです。このような作業を続けながら、ふと思ったのは、私たちが色々な社会問題、環境問題を解決するに当たっても、それらの問題の根源を掘り下げることなくほとんどが対症療法でお茶を濁しながら解決を先送りにしているのではないかと。この「対症療法で行こうよ。」という指令は脳の指令です。

 今回連載させていただいているテーマになっている経済の問題も同じ事で、雑草のように旺盛なヒトの欲望を充足させるために脳が種々の時代的社会的な利害背景をいち早く察知し、あの手この手と一番楽な手段で金儲けの仕掛けを考えるのでしょう。この仕掛けに行き詰ると経済が破綻します。これを解決するのに対症療法でお茶を濁してきました。「欲望」という巨大な根っ子を取り除いていないのですから同じことが繰り返されます。今回の一時給付金のバラマキなどは、もっとも愚劣な対症療法といえるのではないでしょうか。その付けは、子孫へ先送りです。

 地球という水の惑星が40億年掛けて作り出した生命の共生と調和を根底から破壊しても、それを省みないで欲望を求め続ける根源となるものを明確にして根本治療をしない限り、ヒトという一種類の生命体によって他の数千万種の生命がヒト諸共消滅することになるでしょう。ヒト(ホモ・サピエンス)という種は、化石年代で言うところの中新世(今から2400万年前~500万年前まで)のラマピテクスを起源として二足歩行から始め、2400万年掛けて環境のストレスと戦いながら今日に至っています。この環境のストレスから解放されるためにヒトは手と脳の機能を特化させてきました。その結果、他の地球上の生物から隔絶した超生物に進化してしまったのでしょう。

 現代社会、特にホモ・ストレシスという新人類が支配し、生存する空間はヒトの脳が際限もなく求め続ける快適性を実現し、現実化するためのバーチャルリアリティーの空間であって、そこには自然との共生や調和といった考え方は微塵もないと思われます。

 養老孟司は「唯脳論」の「はじめに」のところで以下のように述べています。『現代とは、要するに脳の時代である。情報化社会とはすなわち、社会がほとんど脳そのものになったことを意味している。脳は典型的な情報器官だからである。都会とは、要するに脳の産物である。あらゆる人工物は、脳機能の表出、つまり脳の産物に他ならない。都会では、人工物以外のものを見かけることは困難である。そこでは自然、すなわち植物や地面ですら、人為的に、すなわち脳によって、配置される。われわれの遠い祖先は、自然の洞窟に住んでいた。まさしく「自然の中に」住んでいたわけだが、現代人はいわば脳の中に住む。伝統や文化、社会制度、言語もまた、脳の産物である。したがって、われわれはハード面でもソフト面でも、もはや脳の中にほとんど閉じ込められたと言っていい。ヒトの歴史は、「自然の世界」に対する、「脳の世界」の浸潤の歴史だった。それをわれわれは進歩と呼んだのである。滔々たる人工環境化に対抗するものとして、自然保護運動が盛んである。しかしこれは、どこか見当が外れている。なぜなら、「自然」保護とは言うものの、じつは自然そのものが問題ではないからである。問題は脳の浸潤をどこまで許容するかであり、つまり脳が問題なのである。こうした運動が、しばしば理性に「反する」ように見えるのは、その実態が「自然に帰れ」運動ではなく、直感的な「反‐脳」運動だからであろう。』

 彼は、面白い表現をしています。『われわれはハード面でもソフト面でも、もはや脳の中にほとんど閉じ込められたと言っていい。』とまで極論しているのです。しかし、一般の人々は日常生活の中でこのような知覚を持ちつつ過ごしている人はほとんどいないでしょう。彼の言を借りるまでもなく私達個々人の存在、人格の全てを脳に委ねることが加速度的に進んでいることを自覚していないようです。今回の、アメリカにおけるサブプライムローンに端を発した世界恐慌は、バーチャルリアリティーを現実にうまく持ち込んだ、正に頭の中だけで考えた仕掛けに多くの人々が脳の「快適性」を求める指令のままに動いた結果といえるでしょう。今回は、前置きだけになってしまいましたが、お互いに脳についてしばらく考えてみたいと思います。

野村隆哉(のむらたかや)

野村隆哉(のむらたかや)氏
元京都大学木質科学研究所教官。退官後も木材の研究を続け、現在は(株)野村隆哉研究所所長。燻煙熱処理技術による木質系素材の寸法安定化を研究。また、“子どもに親父の情緒を伝える”という理念のもと、「木」本来の性質を生かしたおもちゃ作りをし、「オータン」ブランドを立ち上げる。木工クラフト作家としても高い評価を受けている。

- 生物経済学事始 - 2009年8月発刊 Vol.24

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