累計122万件出荷!自然食品・自然療法・エコロジー・らくなちゅらる提案サイト

法の舞台/舞台の法

日常のなかにある法律問題踊る弁護士の活動報告

弁護士/舞踏家

和田 浩 (わだ ひろし)

1977 年新潟県柏崎市生まれ。京都大学総合人間学部卒業。弁護士として、さまざまな分野の事件に取り組んでいる。なかでも、障害者の権利に関する案件に多く携わっている。他方、舞踏家として舞台活動もおこなっている。福祉、芸術、司法の連携について、あれこれ考えている。
縁(えにし)法律事務所 
京都市中京区新椹木町通二条上る角倉町215
075-746-5482

表現の自由 憲法21条

投稿日:

昨年開催された国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」において、企画展「表現の不自由展・その後」が開催直後に中止に追い込まれ、文化庁が愛知県に対する補助金を全額不交付とするなど、法律上の問題を含む一連の騒動が発生しました。今月は、この問題と深く関係する「表現の自由」についてご紹介したいと思います。

「表現の自由」の意味と内容

憲法21条1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と規定しています。これが、表現の自由の根拠規定です。
 
一般に、表現の自由には2つの大きな価値があると説明されています。1つは、自己実現の価値です。これは、個人が表現活動を通じて自己の人格を形成発展させるという個人的な価値のことです。もう1つは、自己統治の価値です。これは、自由な言論活動によって健全な民主主義が実現するという社会的な価値のことです。こうした2つの価値を根拠に、憲法21条1項は、国家に干渉されることなく思想や情報を自由に発表・伝達することを保障します。このように、個人の活動に対して国家の干渉を排除する権利を、自由権といいます。

表現の自由の限界

表現の自由は、以上のような重要な価値を有することから、憲法上厚く保障されていますが、だからといって、表現の自由が絶対無制約というわけではありません。表現の自由も「公共の福祉」による制約を受けるのです。
 
では、表現の自由に対する規制としてどのようなものが考えられるでしょうか。一般に、これには2種類の規制が存在すると説明されます。1つは、表現内容そのものに着目してなされる規制(内容規制)です。わいせつ表現や名誉毀損的表現の規制がこれに該当しますが、内容規制は、公権力にとって都合の悪い表現が恣意的に抑制される可能性がある規制のため、必要最小限度にとどめられるべきです。
 
それからもう1つ、表現内容そのものではなく、表現の時・場所・方法等に着目してなされる規制(内容中立規制)が存在します。たとえば、一定地域での屋外広告物の規制や、学校付近での騒音の規制などが該当します。内容中立規制は内容そのものに対する規制ではないため、内容規制よりは緩やかに認められるとされますが、内容中立規制と内容規制を常に明確に区別できるとは限らないので、内容中立規制も広く認められるべきではないでしょう。

表現の自由と国家による援助

ところで今回の問題は、自由権としての表現の自由の問題とは言い切れない側面があります。公的機関が実施する芸術祭で表現活動をおこなうことや、国家から補助金の交付を受けることは、国家による援助を受けるという側面もあるからです。この問題は、「表現の自由と国家による援助」などと呼ばれる先端的なテーマであり、ここで深入りすることは避けますが、1つだけ、関連しそうな判例を紹介します。  
 
これは、公立図書館の職員が、すでに閲覧に供されている図書を、著作者の思想・信条を理由に勝手に廃棄したことから、その著作者が国家賠償請求をおこなった事案です。最高裁判所は、公立図書館は公的な場であり、そこで閲覧に供された図書の著作者にとっては、その思想、意見等を公的に伝達する公的な場であるとしたうえで、図書館職員が、著作物や著作者に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正に図書を廃棄した場合には、国家賠償法上違法になると判断しました(平成17年7月14日判決)。
 
憲法上、表現の自由が厚く保障されていることがわかる判例だと思います。次回は、表現の自由の一形態である「集会の自由」について、ご紹介します。

- 法の舞台/舞台の法 - 2020年2月発刊 vol.149

今月の記事

びんちょうたんコム

累計122万件出荷!自然食品、健康食品、スキンケア、エコロジー雑貨、健康雑貨などのほんもの商品を取りそろえております。

びんちょうたんコム 通販サイトへ