深いところにある静けさ

感情は表面の波

心の状態を説明するのに使われる比喩のひとつが、海面の波です。風が吹くと波が立つように、何かが起こると感情が動きます。何かを思い浮かべるだけでそうなることもあります。

感情にとらわれているときは自分が波であるかのように感じているのですが、本当の自己は大海の水全体です。その表面や一部が波立っているときでも深いところには静かな領域があります。

心が乱れたとき、動揺したときに、それを早く鎮めようとすることは、風が吹いている最中に波を抑えようとしているようなものです。不快な感情を消そう、取り除こうとする努力も同じです。

軽微なざわつき程度であれば、切り替えや気分転換ですぐ落ち着くこともありますが、そうならない場合は、心をコントロールしようとするかわりに、しばらくそのままにしてみることが有効な対処方法になります。

感情をそのままにするというスタンスをとると、全体が見える視野を取り戻します。動揺や混乱が起きているときでも、いくらかの冷静さを保つことができます。時間が経てば風が止み、波が静まることもわかっているので、すぐにこの状態をなんとかしなければという焦りはなく、波と格闘し続けて疲れ果てることはありません。

 

感情をそのままにする

そのままにしてみるとは、感情をそのまま態度や言動に表すという意味ではありません。心と体の中に湧き上がってくる感情のエネルギーの流れや渦を、起こるままにさせるということです。

他の言葉では、感情を認める、容認する、許す、許容する、受容する、迎え入れる、などと表現されます。自分の感覚にフィットする言葉を採用するとよいでしょう。「手放す」も、手を放しコントロールしないという意味で、本質的に同じことを指しています。

この扱い方は、次の動作にもたとえられます。両手の平を、祈りの姿勢のように胸の前で合わせます。そして手の平の間隔をゆっくりと広げます。そうしながら、浮かんでくる感情に対して、内側を開いていきます。

「内側を開く」を映像的に描写すると次のようなことです。心身の内側には感情のエネルギーが下から上へと通るチューブがあるとイメージします。感情が浮かんでくると、チューブが伸びて径が広がり、通過できるスペースが拡大します。最初は密度が濃く重かった感情のエネルギーは拡散して薄まり軽くなります。

数十秒から数分間そうしていると、途中は不快感が強く大きく感じられることはあっても、その状態を通り過ぎると落ち着いてきます。充分に落ち着いたなら、その状態でしばらくくつろぎます。

 

両極を認める

いくらか落ち着きは戻ったが、まだざわつきが残っている場合は、次の方法が役立ちます。まず残っているざわつきをそのまま認めます。それから、いくらかは感じられる落ち着きを認めます。これをゆっくり交互に繰り返すと、徐々に落ち着きが増大します。

ここでの「認める」とは、認識する、注目する、注意を向ける、気づく、などの意味です。

心の中には対極的な状態が並存しています。表面と深部、波と静寂、不快と快など。最初は前者のほうが多く感じられたとしても、両極を交互に認めることを繰り返すうちに、後者の割合が増えてきたように感じられます。注意が問題や不快さに限定されていた状態から、全体を広く見渡せている状態へ移行したのです。とらわれていた状態からの解放です。

 

セドナメソッド認定コーチ
安藤 理(あんどう おさむ)

制限的な感情を解放し心の自由を生み出す手法の翻訳書「人生を変える一番シンプルな方法―セドナメソッド」監修者。日本で唯一、米国セドナ・トレーニング・アソシエイツから認定されたセドナメソッド・コーチ。
電話等での個人セッション、東京と関西でセミナーやセッションを実施している。
http://andoo.info