私が個人セッション等でお聞きすることの多いテーマのひとつは「自分の子どもが問題を抱えている。どう関わればいいのか」。子どものほか、親、夫や妻、兄弟姉妹、友人、仕事上の部下などが相手という場合もあります。
身近な人が困難に直面しているとき、適切なサポートをするために大切なことは、まず自分の心をケアすること。心配で落ち着かなかったり、こうしなさいと強要したくなったりしている状態から出てくる言動は、相手への配慮に欠けるものになりがちです。結果として反発されたり聞き入れられなかったりします。かといって、余計な口出しをしないように我慢してもフラストレーションはたまりますね。
こういうときに役立つのが、相手に対する感情を手放すことです。ここでの「手放す」とは、感じないようになるとか、捨て去るという意味ではなく、その感情をいったん認めたうえで、握り拳を緩めるように放す、というニュアンスです。これを何度かゆっくり繰り返します。
気がかりや心配がすぐに無くならなくても大丈夫です。その感情を認め、いくらかはある落ち着きも認める。これを交互に繰り返すと、徐々に後者の割合が増えてきます。心配や苛立ちなどの感情を手放すと、冷静に状況と相手を見ることができ、自然に寄り添える心境になります(相手が離れた場所にいる場合も)。
感情の根本にある欲求
さらに相手に対する感情は、自分のどういう欲求から出てきているのかを自覚すると解放が深まります。
人の回復や成長を願う気持ちは、善意や思いやりから生まれるものではありますが、同時に相手や状況をコントロールしたい欲求を含んでいることがあります。苛立つ、語気が荒くなる、急かす、自分が思っていることや言っていることが正しいと拘る頑なさ、などがこの場合の兆候です。心の中に力みや硬さを自覚したなら、それを緩めてみましょう。すると柔軟さを取り戻して状況に応じた対処が可能になるのです。
安心したい欲求が絡んでいることもあります。この場合、びくびく、ざわざわ、不安や暗い気分、重苦しい感覚などとして自覚されます。これを手放すと穏やかさを取り戻します。
コントロール欲求が強いときの多くは、安心したい欲求との連鎖反応が起きています。自分が安心したいから相手や状況を何とかしたくなるわけです。どうしたらいいのかを考えることに頭が忙しい状態もそうです。考え続けるかわりに、これらの欲求を解放してみると適切な関わり方が見えてきます。
働きかけや助言を拒否や無視されて落胆したり憤慨したりするときは、認められたい欲求があります。言動や行動など相手の在り方が、自分が周囲からどう見られるかに影響するという感覚も、この欲求から生じています。これを手放すと、寛容さ、優しさ、温かさが戻り、相手の心境を受容し理解しやすくなります。
欲求に駆り立てられた言動が軽減すると、思いやりや善意が自然に態度に表れます。問題を解決する力、困難を乗り越える力が本人の中にあることを信頼し見守る。必要なときには働きかける。今はどの態度が適切かを見極める。どれも選べる自由度がある。目に見える結果にとらわれず、長期的で大局的な見方ができる。そういう在り方になるのです。
感情の根本にある欲求に注意を向けて解放する方法は、他者をサポートするケースだけでなく、あらゆる感情の解放も深めます。