役割を離れる

役割が制限になるとき

人はたいてい、日常のなかで何らかの役割を果たしています。家庭のなかでは、親、妻、夫、職場では役職、上司、部下など。役割には、それを通して必要とされることを実行する、所属する集団のなかで貢献するといった価値があります。役割を担うことに喜びややりがいを感じることもあります。

一方で、役割は重荷になったり、自分や関わる人を縛ったりする要因にもなりえます。期待に完璧に応えなければと常にがんばる、自分の不完全さに苛まれる、関わる人を過剰にコントロールする、などは役割意識にとらわれた状態です。このような気持ちを自覚したなら、次の試みが役立つでしょう。

 

役割についての感情解放

軽く目を閉じ、自分が果たしている役割のひとつを思い浮かべます。それについて、心に浮かぶ今の気持ちに注目します。何らかの不快感(重さ、窮屈さ、いらだち、つまらない、など)があれば、それをそのまま認めます。役割への執着や同一化(役割イコール自分という感覚)、役割を十分に果たせないと自分の存在価値はない、といった感覚を自覚するかもしれません。その感覚が心の中にあることを許容してみます。そして、握りしめた拳を緩めるように力を抜いて、その感覚を放します。抱えていた重い荷物を一旦降ろしてみるように。

これを何度か繰り返し、軽さや楽さを感じられるようになったら、その感覚のなかでしばらく寛ぎます。役割としてすべきことを意識するのを休止し、今この瞬間は「ただ在る」ことを自分に許可してみましょう。

このとき、役割としての言動を心の中で繰り返している、あるいは次の機会を想定して準備していることに気づいたら、それも認めたうえで手放します。役割について考える必要がないひとときを味わってみましょう。

 

役割との新しい関わり

このようなひとときを持つことは、役割を果たす責任を放棄したり逃げたりすることではありません。心の中で役割から離れている状態は、休息や充電の時間になります。そのあとには、新たな気持ちで役割を担うことがしやすくなります。

あるべき姿に自分を押し込めようとする堅苦しさが溶ける、過剰な責任感を背負わなくなる、などの変化が生じて、柔軟な姿勢で取り組むようになるのです。

緊張感やプレッシャーを感じる状況に対しては、その感情を手放し、役割を演じるつもりで成りきってみることで、普段の自分の枠を超えたパフォーマンスを発揮することがあります。

こだわりをはずすと、今までの役割を終える方向に意識が向くこともありえます。その役割を別の人に譲る、新しい役割にチャレンジする、しばらく役割を持たない期間を楽しんでみる、といった変化の時を迎えているかもしれません。たとえば退職する時が近づいている、リストラや配置転換があるかもしれない、という状況ならば、今から心の準備をしておくことはスムーズな移行に役立ちます。子離れも親としての役割の一部を終える経験といえます。この場合、寂しさを感じたり、その先について不安になったりするのは無理もないことです。これからどうすべきか考え込んでしまうかもしれません。そういう感情も、認めてから手放すと、落ち着いて先のことを考え、適切な選択ができるようになるでしょう。

年末年始等の長期休暇がとれるときは、普段の役割から離れた視点に立つ好機です。そのための時間を取ってみてはいかがでしょうか。

セドナメソッド認定コーチ
安藤 理(あんどう おさむ)

制限的な感情を解放し心の自由を生み出す手法の翻訳書「人生を変える一番シンプルな方法―セドナメソッド」監修者。日本で唯一、米国セドナ・トレーニング・アソシエイツから認定されたセドナメソッド・コーチ。
電話等での個人セッション、東京と関西でセミナーやセッションを実施している。
http://andoo.info