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中川信男の多事争論

「多事争論」とは……福沢諭吉の言葉。 多数に飲み込まれない少数意見の存在が、 自由に生きるための唯一の道であることを示す

プレマ株式会社 代表取締役
ジェラティエーレ

中川信男 (なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。

【Vol.49】「宮古島」という可能性

投稿日:

  日本本土から遠く、台湾にほど近い場所に宮古島はあります。ともすれば沖縄県の一部として沖縄本島と同様に語られるこの島ですが、ここには他の島とは全く違う言語や文化が今も生きています。豊富な珊瑚礁、東洋一美しい砂浜、または癒しの島として有名ですから、訪れたことのあるお客さまも数多いでしょう。この土地には、弊社でもずっと取り扱っている「宮古ビデンスピローサ」という薬草素材があります。沖縄諸島ではこの草は地下深くに根をはり、切っても切っても生えてくる厄介者の雑草として良いイメージでは語られないことが常です。この猛烈な生命力をもつ「雑草」の薬草としての可能性を見いだした武蔵野免疫研究所の吉田社長から、「なぜに宮古島のビデンスピローサはあれほど強力な抗酸化力と抗炎症力、免疫活性力をもつのか」という話を聞き、私は訪問する前からこの島の隠れた魅力に取り憑かれました。

 

  その魅力は数多く、また広範囲にわたり、簡単には説明できませんがあえて要約すると

【1】宮古島は世界的にも珍しい珊瑚礁そのものが隆起してできた島であり、地盤は琉球石灰岩と呼ばれるサンゴのミネラル分とサンゴが発する癒しのエネルギーを豊富に含んでいること
【2】山も川もない平板な土地なので、水はそのまま地下に浸透し、サンゴのミネラルを大量に含むこと
【3】度重なる台風来襲のたびに平坦な島には海の海水が霧状に降り注ぎ、海のミネラルが加えられるだけでなく、植物は塩分に痛めつけられるが、強い太陽光線で抗酸化力を伴いながらすぐに再生すること。またその都度島は洗い流されること
【4】温帯で育つ植物、亜熱帯で育つ植物の両方が根付くこと
【5】夏も冬も植物が育つこと
【6】沖縄本島からも遙か遠く、日本本土のものが入り込まないこと
【7】環境汚染源となる重工業も、基地も、そして原発もないこと
【8】自然界そのものに対する信仰が根付いていること
【9】地理的にアジアのへそとなる場所にあること
【10】島の人は、島外の人にもオープンであること

などがあげられます。これらの魅力を知ってからほどなく、3・11大震災が発生、私は訪問する機会を逸してしまいましたが、続く原発事故で露呈した諸問題からお客さまを守るためには、この島での農産物の確保は急務であると感じ、すべてを急ぐことにしたのです。

  実際に島で現在行われている農業の大半は国から助成金の出るサトウキビや葉たばこの栽培がメインです。これらは通常大量の農薬と化学肥料を使って行われ、決して自然な状態ではありません。本来なら、栄養あふれる安全で清浄な野菜がたくさん作れる環境にありながら、消費地である日本本土が地理的に遠いことが航空便、船便の寡占状態を生み、輸送コストが高値止まりしてしまい、島の野菜農家さんは大変苦労されていました。ここでも国は離島の生活向上というお題目で安易にお金を落とす環境を作りだしてしまい、その代わりに基地の受け入れや自然破壊には目をつぶりなさいという愚策を続けてきたのです。これは、私に言わせれば福島をはじめとする原発所在地に助成金を流し込んで理知的で自覚的な人々を押さえ込んできた構図とまったく同じです。

  数度の訪問ののち、宮古島には志ある少数の人たちが、ずっと以前から前向きなアクションを続けてこられたということがわかってきました。ご縁とは不思議なもので、ちゃんとあるべき所に私たちを運んでくれたのです。しかし残念なことに、「島の環境を守りたい、食べる人に安全な食品を届けたい」という彼らの意志は、圧倒的な輸送コスト高で大変厳しい状況にありました。流通が難しいという現実から、実際の作付けは現時点で微々たるものですが、平坦な島にはまだ耕作可能な土地がたくさん残されています。さらに、人の面でも、本土から私も安全な食を作りたいという移住者や、都会に出ていた島の人が島回帰の流れを作っています。まだ、多大な輸送コストをどうクリアしていくかという大きな問題は横たわってはいますが、不自然なサトウキビや葉たばこ栽培に振り向けている予算の少しでも安全な農産物の生産と流通に振り向けるよう行政にはたらきかけを行うためにも、私たちが宮古島に可能性を感じて、この島の野菜をはじめとする農海産物の魅力と可能性を広げていきたいと思っています。それが、原発事故で崩壊し、または失った何かから学び、同じことを繰り返さない道に繋がっていると信じているからです。

- 中川信男の多事争論 - 2011年10月発刊 Vol.49

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