信頼あっての期待
年始の箱根駅伝、今年も青山学院大学が圧倒的な強さで4連覇を果たしました。
一人が約20㎞の区間を10人で襷をつないでいく駅伝という競技でプラン通りに走り切るところに、速さを超える強さを感じました。
駅伝が強いチームのランナーに共通していることは精神面の強さ。とくに自信・信頼・期待の3つの面でほどよくバランスがあること。
前走者が必ずここまで襷をつないできてくれるという大きな「信頼」、あわよくば少しでも順位を上げてきてくれればという「期待」、よもや順位を下げてきたとしても自分がなんとかするという「自信」。
私たちが人間関係などで「ガッカリする」と口に出してしまうとき、相手への期待だけが大きすぎて、実際には信頼しきれていなかったり、自分に自信がないようなときがあるような気がします。
3つのバランスに欠けることの脆さみたいなものでしょうか。
また、強いランナーは日々のトレーニングにおいても、才能・努力・効率の3つのバランスを保っています。
ランナーだから練習ではひたすら走り続ける「努力」だけかといえば、決してそうではありません。
自分の身体バランスのなかで弱いと感じるところを補強運動したり、体幹トレーニングをしたり、ときには積極的に休息を取ったりと「効率」を考えて練習に取り組んでいます。
そうした「努力」と「効率」があって「才能」が開くのです。どんなに努力をしていてもうまくいかない、そんなときは効率を考えてみてもよいかもしれません。
実は、体を使って努力をしているほうが楽なことで、自分と向き合って効率を考えるのは、その何倍もしんどかったりもするのです。
44歳にして現役メジャーリーガーのイチロー選手(3月号発行時点でメジャーリーガーではない可能性も)といえば、努力の人というイメージがあるでしょう。
しかし、素振りやキャッチボールのような基本動作の努力だけをしてきたわけではありません。
彼は10代のころには、自分には体のケアが必要なことに気づいていたといいます。
人と比べて体が硬いから、念入りにストレッチをおこなわないとケガをしやすい体であることを知り、練習や試合の前後のストレッチに人の何倍もの時間をかけるようになります。
彼のすごいのは、それを30年間続けていること。
早い段階で自分の短所を知り、自身と向き合って効率を考え抜いた結果。
だからこそ、自分自身を信頼できるところまで自分を追い込むことができるのでしょう。
「問い」をもつ
ダイエットやエクササイズに関するトレーニング本が、どこの書店にも並んでいます。
健康への意識が高まり、運動する習慣を持つ人が増えるのはとてもいいことだと思います。
気をつけたいのは、トレーニング本で紹介されているのは著者にとって良かったトレーニング法であり、読者にとっての最善とは限らないということ。
年齢や体質はもちろんこれまでの運動経験も異なるのに、誰に対しても最善であるというのは考えにくいことなのです。
自分にとっての最善は何か?
そんな「問い」を持ち続けることが必要です。運動に限らず、仕事でも学習でも、日常の中でのことでも、努力を重ねていきつつも、成果をチェックし、効率を考えることも忘れてはなりません。
行き詰まりのようなものを感じたときは、思い切って変えてみる。やり方、方法、居場所をちょっと変えた先に、また新しい出会いがあります。
旅に出てみるのがいいけれど、それが叶わないなら散歩でもいい。いつもと違う通勤ルートを通ってみることでもいいかも知れません。
普段はなかなか会えない人に会いに行ってみることもいいでしょう。「問い」を持ち続ければ、自分なりの「解」に出逢えることでしょう。