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鍼療室からの伝言

鍼灸師の西下先生による陰陽や自然食。二十四節気など古来の智恵のお話

圭鍼灸院 院長 鍼灸師
マクロビオティック・カウンセラー

西下 圭一 (にしした けいいち)

新生児から高齢者まで、整形外科から内科まで。年齢や症状を問わないオールラウンドな治療スタイルは「駆け込み寺」と称され医療関係者やセラピストも多数来院。自身も生涯現役を目指すアスリートで動作解析・運動指導に定評がありプロ選手やトップアスリートに支持されている。

観戦から学ぶこと

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元旦のニューイヤー駅伝に始まり、2日、3日の箱根駅伝、高校ラグビーや高校サッカーなどが無事に開催され、正月らしい気分を味わい、新年を迎えられました。選手たちのインタビューで目立ったのは、コロナ禍でも開催できたことに対する、関係者への感謝の言葉。走れることが決して当たり前ではないと思い知らされたのでしょう。

一方で、観る側の私たちからすると、出場してくれた選手たちに感謝したいですね。自身はもちろん、チーム関係者に感染が疑われただけでも出場を辞退せざるをえない状況で、日々のトレーニングを休むことなく積み重ね、ここまでたどり着いた選手たち。とくに昨年の春から夏にかけては数々の大会が中止され、力を発揮する場がなくなっても、心が折れることなく続けてきたからこそでしょう。目先のことに振り回されず、信じてやり続けることの大切さを見せてもらえました。

今年の箱根は……

「応援したいから、応援に行かない」のキャッチフレーズで、箱根駅伝では、沿道での応援を控えるよう呼びかけられ、例年120万人ともいわれる沿道の人影はまばら。それでも一部のメディアでは、人が多すぎるとの批判が出ていましたが、主催者発表で例年の85%減だったようです。2日間の沿道は、とても寂しく画面に映りました。昨シーズンは無観客で始まったプロ野球やサッカーJリーグが、夏には入場制限を5千人に緩和したとき、テレビに映る観客席はスカスカな印象でしたので、ほぼ同じ感じといえるでしょう。

とはいえ、沿道の人出を制限しきれないところに、駅伝の特殊性があります。箱根駅伝ではコースのほとんどが国道1号線、事前チケットを購入しなくても選手を見ることができる。例年を知る者からは「スカスカ」でも、「密」に見える人もいるかもしれません。

箱根駅伝では、1人が20km以上、2日間で10人がたすきを継いで217kmを走りきる。今年は最後の2kmで首位の逆転劇があって最後まで目が離せませんでした。逆転した側の選手・チームは、最後まで諦めずに信じ続ける心の強さ、逆転された側の選手・チームは過去最高位でのゴールが立派でした。最後まで、なにが起こるかわからない。それがレースというものです。

公道が試合会場という点でいえば、豆粒ほどの小石を踏んでしまって、走りのバランスが崩れることがある。20kmもの距離を走るうちに、小さな違和感が、やがて足裏全体に拡がる痛みに変わり、片脚にまったく感覚がなくなってしまうこともある。緊張のあまり、口がカラカラに乾いた状態で走り始め、途中で脱水症状を起こしてしまうこともある。無難に走り切ってたすきを継ぐだけでも過酷なものです。

小さな違和感

「違和感を見過ごさないように」とは、これまでにも中高生たちに何度となく伝えてきたことです。駅伝ランナーほどでなくとも、最初はほんの小さな違和感が、それを見過ごして同じ動きを続けていけば、動くたびに痛みを感じ、やがては立っていることすらできなくなることもあるのです。

「これまでの病院・治療院では、そんなことを聞かれたことがなかった」と言われるほど、質問を繰り返して原因を探っていくことがあります。「そんなこと、自分でも考えたこともなかった」と言われることもある。アスリートの場合は「痛みがなくなる」のと「治る」ことの違いは、日常生活ができれば治療が終わりではなく、競技復帰できたときに完治といえること。過酷なレースの観戦からは、そこに結びつくヒントが見つかることもあるのです。

けれども、本当に学んでいるのは、信じる心。大会が開催されるか否かに振り回されず、淡々と日々やり続ける姿勢。想い続けることの大切さを、今年の新春も学ばせてもらえました。

- 鍼療室からの伝言 - 2021年2月発刊 vol.161

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