先日、台風一過のバナナ畑で、収穫が遅れて完熟したバナナに、数十匹ものミツバチが群がっていました。台風後は花が損傷を受けて蜜源が減り、ミツバチは被害を受けなかった蜜源に集中します。そのため、台風後のバナナの花に、通常よりも多くのミツバチが群がる様子はこれまでにも観察していました。しかし、実に群がる様子を見たのは初めてで、私には驚きの光景でした。
ミツバチが活動のエネルギー源として集める花蜜には、主にショ糖・ブドウ糖・果糖が含まれ、その比率は花によって大きく異なります。完熟したバナナにも同じ3種類の糖が含まれ、果汁が外に染み出してさえいれば、完熟バナナもミツバチにとって花蜜に代わる糖源になり得るということです。実際、ミツバチが利用する糖源は花蜜に限りません。たとえば、アブラムシなどの昆虫が植物の汁を吸ったあとに排出する甘い液体「甘露」も集めます。世界には、この甘露を主な原料として作られる「甘露蜜」という蜂蜜もあります。また、花が少なくなる時期には、養蜂家がショ糖液や転化糖などの糖液をミツバチに与えることもあります。
では、なぜ平常時には完熟バナナではなく、花蜜に集まるのでしょうか。一言でいえば、花とミツバチが互いに利益を得る関係を築いているからでしょう。花は蜜腺という器官で花蜜を分泌し、ミツバチは長い口吻を差し込んでそれを吸います。またミツバチは、花蜜だけでなく、幼虫の成長などに必要なタンパク質源となる花粉も集めます。つまり花には、ワンストップで蜜と花粉が得られる、一挙両得の環境が整っています。そしてもちろん、花にとっては、受粉を助けてもらえるという利益があります。一方、バナナの果汁を得るには、鳥などにつつかれて果肉が露出したり、完熟して果汁が染み出したりする必要があります。それまでほかの動物に食べられずに残っていることも必要です。条件さえ整えば一度に大量の糖を集められる魅力的な糖源ですが、花とミツバチのような「蜜月」の関係にはありません。
台風後の思いがけない発見に、環境に適応するミツバチのたくましさを感じました。
完熟したバナナに集まるミツバチ
完熟したバナナに集まるミツバチ
