前回は「虫歯から始まる全身の病気」という本をご紹介しながら、虫歯や歯周病などで感染してしまうと全身に細菌が回り、しいては心臓や腎臓にも細菌が到達するということや、動脈硬化の肥厚した血管壁にも口腔内の細菌が存在し、臓器の炎症や関節炎、血液成分の数値の変化などがおこることについてお話ししましたが、今回は、かみ合わせなどの物理的因子が全身の病気をつくることについてお話ししたいと思います。
初めに私の考える理想的なかみ合わせの状態についてお話ししておきます。かみ合わせの理想的な状態とは顎の関節が一番良いポジションでぎゅっと咬むことが出来、また其 処の位置から自由自在に顎を左右に
動かせ、横に動かしたときに奥歯の当たりがなるべく無く、また、右に
動かしたなら、左の上下の歯は接触しない、(また反対の動きも同じ)、
そして顎を前に動かした時にも奥歯の当たりが無いという事が理想的です。言葉にすると解りにくいですが、そのような状態が理想的です。歯の治療をするときに、この状態になるように顎の位置を決定し、歯の位置を矯正したり、虫歯の治療をするのが本来の歯科医師の職務なのです。この位置は人間の身体に最もストレスがかからず、なおかつ今ある歯が守られると私は考えています。顎の一番良いポジションがどこかということを、歯科医はいつも考えながら
最善の治療をしています。がしかし、今患者さんが咬んでいる位置に合わせて調整せざるを得ない場合も多いのが今の医療の現状とも言えます。患者さんの不定愁訴がある場合は、
ほとんどのケースで顎の位置がずれ いることが多いと感じます。
虫歯になるとその歯を治療しますが、虫歯を削りその削った部分を代替えの材料で修復します。しかし先程現した人間の理想的なかみ合わせに、その修復した歯の高さを調整することは、例えて言うなら、サイコロ8個くらいをカップに入れ良く振って全部同じ目を出すのと同じくらいの鍛錬が必要とされ、まさにそれは至難の業です。顎の位置にずれがあると、虫歯を作ろうとする物理的因子の力のコントロールができないので、いくら歯を磨いていても歯を壊そうとする力には勝てず虫歯になってしまいます。
顎の位置が正常位とずれることなくあることが真のアンチエイジングだと私は考えています。顎の位置が前後左右高さの三次元的に変化し、それと同調して身体に症状が現れたり、病気を引き起こしたりするのです。またその逆もあり、外傷で身体に怪我をしたり手術したり、病気になったことによって、身体のバランスが崩れ、顎の位置がひっぱられ狂っていくこともあります。この身体がひっぱって顎の位置が変わっていく方は、いくら歯を綺麗に磨いてメンテナンスしていても、身体のアライメントを調整しないと、残念ながら時間とともに虫歯が増えていってしまう傾向にあります。歯を良い状態で長持ちさせるには、定期的に歯の周りの衛生状態や力をコントロールすることが大切です。またご自分で出来ることとして、極力日常の生活では、身体の使い方で左右のバランスを失うことがないように心掛けると良いでしょう。例えばいつも一方向で足を組む癖があったり、左右不均衡な激しいスポーツをしたりしたら、必ず使った方と反対の筋肉も動かしたり体操をして均等を図ることが必要です。現代科学では虫歯は歯の周りの汚れから細菌が繁殖し歯を溶かしていくというふうな学説が定説ですが、この軟食時代に身体の中心力が失われているヒトが益々増えていくと、次世代の虫歯は身体の歪みやゆがみによって作り出され、電磁波や生活環境、姿勢、食生活、心、その他がすべてリンクし身体のバランスを失わせることが虫歯の原因となることが常識となるでしょう。
田中 利尚
田中 利尚氏 歯科医師・整体師 日本抗加齢医学界専門医 国際統合医学界認定医 「咬合(かみあわせ)を制する者は歯科をも制す」という、歯科医学の見落とされている最も大切な力学的調和という根本理論に触れ、かみあわせを追求。しかし身体が変位していると良いかみ合わせを構築できないところに西洋医学の限界を感じ統合医療を目指し東洋医学(整体)を勉強。 顎が痛い、お口が開かない、首肩の凝り、腰痛、うつ病までを含む顎関節症の治療にも取り組んでいる。 「健康は歯から」を確信している。 |