国産の有機栽培大豆・米を木桶で天然醸造させる無添加の味噌造り。
鼻を抜ける香りがほかとは違う。冷めても味噌汁が美味い。
地元はもちろん全国にファンを持つマルカワみそ。
手作り味噌教室、大豆潰し機の貸出し、味噌の預かりなど斬新な取り組みを発案する
専務・河崎紘一郎さんに、これまでの歩みや今後について伺いました。
左から常務取締役・河崎紘徳さん、代表取締役・河崎宏さん、専務取締役・河崎紘一郎さん。「足の具合もういいの?」「おかげさんでね」と家族経営の温かい雰囲気が満ちている。2014 年からオーガニック素材を使った玄米和食の社員食堂がスタート
大正3年、麹屋として創業したのが始まりです。
各家庭で作られていた味噌は、買う時代へ。
その流れとともに、昭和17年、味噌屋に生まれ変わりました。
弊社の特徴の一つは、木桶による天然醸造仕込。
麹にとって理想的な環境である木桶で一年熟成させた味噌には、
ステンレスタンクには出せない味噌本来の美味しさと風味があります。
また雪国福井の地の利を生かした良質な地下水による仕込み。
そして、日本で唯一の自家採取の「蔵付き麹菌」。
麹菌は、普通、麹屋から仕入れます。
国内の味噌蔵は約1000社。それに対して麹屋は7社。
メーカーが違っても似た味になってしまうわけです。
弊社も麹を買っていたのですが、独自の方法で麹を蘇らせたと聞いています。
長年蔵に住み着いていた自然の麹菌には、豊かな風味があります。
父である現社長の代になってからは、
すべての製品に国産有機栽培の大豆と米を使用しています。
父が東京農業大学在学中に、
食品の薬物汚染について知ったのがきっかけだったそうです。
北海道・秋場さんの大豆など自然・有機栽培の素材をすべての製品で使う。
自社農園でも1ha の土地で大豆を自然栽培している
例えば、米は種籾のときから薬剤にまみれ、
栽培中は化学肥料・除草剤・農薬を繰り返し使われ、
おにぎりや弁当などの製品になる段階で、さらに何種類もの添加物に晒される。
食べ物は、お金のために生産効率を上げるものなのか、
人の命を全うさせるためのものなのか。
自問自答した父は「無農薬の味噌を作りたい」と決意。
しかし先代には「経験もない者が」と即却下されます。
私自身、「米蒸し3年、豆炊き5年、仕込み一生」と
言われて育てられましたので無理もないことです。
卒業した父は地道な下積みを経て、
36歳のとき、もう一度先代に頼み込み、許可を得て始まったのが、
現在の国産有機栽培の素材を使った味噌造りです。
手作り味噌で心の豊かさを
私は最初は継ぐことを考えていなかったのですが、
高校3年生のとき、父から
「『食』という字は『人』に『良い』と書く」という話を聞き、
心を動かされました。
専門学校で経営を学び、卒業後、東京で「食」にまつわる企業に勤めていました。
その経験から大切にしているのは
「味噌の魅力を思い出してもらうにはどうすればよいのか」ということです。
毎朝食べられていた「主食」から「嗜好品」へと変化してしまった味噌の立ち位置を、
味噌屋として問い直さなければと思うのです。
味噌が家庭で作られていた時代、各家庭それぞれの味噌の味がありました。
本当に美味しくて心身が満たされるのは、やはり手作り味噌のはずです。
そこで、まずは「味噌造り」の楽しさを知ってもらうため、手作り味噌教室を始めました。
さらに手作り味噌をお預するシステムを発案したのです。
せっかく手作りしても、集合住宅など現代の家では
ベストな環境で寝かせるのは困難です。
最適な環境である「蔵」でお預かりして、しっかり熟成させるサービスは、
全国でも類を見ないと、ご好評いただいています。
天然醸造の味噌造りでは、目に見えない麹の働きを信じて待つことが必要です。
子育てにも通じますが、すぐに結果が出ないものを信じることは「愛」ですよね。
心と心を通わせること。
それを味噌を通じて伝えていきたいです。
日本人が失ってはいけない大切なものが味噌には込められています。
毎日の食事のなかで、その心を感じてもらえたらうれしいです。