昨年末のある朝、いつも通り神棚へ向かって〝感謝のお祈り〟を捧げていると、突然言葉が胸の内にとどろきました。「再びヴァカバッド・ギーター※を毎日一節ずつ読みなさい」。
ハッとして目を開けると、目の前に飾っていたパラマハンサ・ヨガナンダさまの写真が、まるで3D画像のように生々しく浮かび上がり、少々いたずらっぽくニマニマと笑いながら私を見つめていました。それはもう2次元の写真ではありませんでした。ヨガナンダさまがそこにおられるかのよう、目からは鋭くも慈愛に満ちた光が放たれていたのです。
※インドの聖典のひとつ。
人生の節目とインド
ヨガナンダさまは、1900年初頭、インドから西洋へヨガの教えを伝えに渡ったヨギです。ヨガを通して自己の本質と一つに結ばれ、神との合一を実践し生きる存在として、人々を導きました。
私は25歳のときに、ヨガナンダさまの世界的名著『あるヨギの自叙伝』(森北出版)を読んでから、インド哲学を通して魂の探求をおこなってきました。今もそれは変わりません。結婚後、約11年間のアメリカ生活では、ヨガを日々実践しながら、まるで隠者のように生活していましたが、帰国後は再び社会に積極的に関わりを持ち、この与えられた命を献身的に使うフェーズに入りました。その後の約13年間、日本でヒプノセラピストとして、人の潜在意識にこびりついた過去の記憶の浄化のお手伝いに日々尽力してきました。
人生は螺旋のように上昇しながら変化し続けます。とどまろうとしたところで、宇宙の秩序は容赦なく背中を押すのです。今世だけでも幾度となく終わりを迎え、そしてまた新生してきたことか。その大きな節目には必ずインドがありました。
「再びギーターを読みなさい」というメッセージから数時間後、信じがたい奇跡的なシンクロが起こり、今年初めにインドを旅することになりました。バラナシにある国立サンスクリット大学の教授から、直接ヴェーダを4日間学ぶという、願ってもない機会が舞い込んできたのです。私はこの友人からの誘いに飛びついて、すぐにエアーチケットを取りました。そこに迷いなどみじんもなく、神の恩寵以外なにものでもないお導きだと感じていました。
聖典ヴェーダに記されている知恵と知識は、教授ですら一生かかっても学びきれるかわからないほど膨大な量です。その約5000年前の叡智が、一般公開はされていないものの、国立サンスクリット大学の図書館に保存されているらしいのです。
インドの聖典ヴェーダの叡智
「世界が始まる前からヴェーダは存在した」。授業はそこから始まりました。「人は新しいことを創り出すことはできない。すでに神が創られたすべてが聖典ヴェーダに書かれてあり、その知識、知恵を人は探しているだけ。いわば、ヴェーダに書かれてあることを再度探している〝リサーチ〟に過ぎない。インドの偉大な数学者ラマヌジャンでさえ、ノーベル賞の発見でさえ、新しい公式を発見したのではない。神がすでに創ったものをリサーチして引き出してきたのだ」。
私は問いました。「なぜ人間は、すでに在るものをまた探す時間を与えられているのでしょうか?」それに対する答えは、「人は欲望を持ちながら成長する。良いことを社会に役立てたいとも思うし、また、悪用してみたくなるのも人間である」というもの。
日本で過ごしたこの13年ほどは、アメリカにいたときほどヨガを実践してきたわけではありません。しかし、今後さらに深く自己の本質と繋がって、エゴや個我を削ぎ落としながら社会に奉仕していくためには、日々深いヨガの実践が不可欠だと感じた、身の引き締まる2019年のスタートでした。