今4月1日、弊社は2名の新卒と1名の第二新卒の社員を迎えることになりました。この数年間の国際情勢は若者にとって厳しいことばかりですが、だからこそ、大切にしたいことがあります。それは、私たちは国家や社会を論じる前に、先に人ありき、という価値観をもっていることについてです。ともすれば安易に世界の常識、社会の常識などといいますが、じつのところ常識とされるものにはつねに異論があり、なにかが絶対善で、なにかが絶対悪というような単純な構造にはなっていません。このところ、ネットを中心に極度に単純化され感情に働きかけるような善悪二元論が世界中を圧巻している状態で、確かにそのどちらかに安住してしまえば考えることが必要なくなり、態度決定がとても楽になりますが、同時に攻撃的になります。ネットで見聞きして急にできあがった自説の正しさを立証するために人を攻撃したところでなにも解決しないどころか、暗澹たる空気感だけが残るのです。世の中は実に複雑で、単純ではないことは、人間一人ひとりの違いにフォーカスすれば明らかになってきます。誰一人として同じ人はいないからこそ、この世は面白いのと同時に、学び合うことが可能になります。ロシア人だ、ウクライナ人だとレッテルを貼り、人としての固有さから焦点がずれた瞬間に争いがおき、悲しみが増幅します。
弊社にも「ウクライナ人を支援するなんて、おまえは白痴じゃないか!ちゃんと真実を見ろ!」という激しいメールがたくさん届いていますが、私たちはウクライナ人だけを助けようとしているのではなく、争いの陰で悲しみ苦しんでいる人に助力したいという、ただその一念です。見ているのはあくまで一人ひとりの人であり、陰・日向を問わずなんらかの批判の集団ではありません、とそのメールにお答えすることにします。
(本稿は3月16日に書いていますので、事態の変化が起きている可能性があります)
2021年9月11日の投稿
過去、新卒入社で迷っているスタッフについて私がSNSに投稿した記事を引用します。私たちは、どこまでも「人」に立脚して仕事を、そして判断を続けていきます。昨日、中目黒店のシフトが回らないということで、急遽シフト人員として、お店に入りました。ほんの3時間ほどです。自分が設定したレジなのに、具体的なオペレーションがよくわからずに、思いっきり脇汗かきました。ディッピングも超下手くそで、自分がもうお店の役には立たないのも、よくわかりました。
そこで、お得意様といろいろお話し出来たのもすごく楽しかったのですが、中目黒店の開店のときからがんばってくれているスタッフと二人きりになり、ちょっとだけ話すことができました。彼女はちょうど就活中で、内定も出ている中でプレマへの就職を検討していると店長から聞いていたので、総合職的な仕事のイメージと京都への引っ越しを前提に彼女に新卒で入るとどんな感じになるか、という話していたのです。よくよく聞いてみると、「私は、プレマルシェのジェラートを、少しでも多くの人に知って欲しいと思っています。」と言われて、この間の役所からのイジメによる疲労も吹っ飛びました。
「ジェラートを、誰かの、自然食屋への接触の最初のきっかけにする」と決めて、この仕事を始めた訳ですが、まさか、3年半、ずっとまさにそれをやりたいと思って、決まっているはずの就職を自分の中で決め切れていないという彼女の中の迷い。このコロナ騒動で出店計画もすべてゼロリセットで、完全にニュートラルに考えているなかで、こういうことを澄み切った瞳で言われると、さすがの私も、密かに心が躍ります。
「一度きりの自分の人生なので、悔いのないようにしてください」と伝えたのも本音、彼女のような人に、いずれ新しい店を育てて欲しいと思うのも本音。そもそも、どこに、どれだけの売上げが立つ店をやりたいという気持ちは全くなく、むしろ「誰が、どんな思いでこの仕事をやろうとしているのか」が、私にとっての唯一の出店の動機であることも改めて思い出し、今まで蹴ってきた出店の誘いや計画も「やめて良かった」と振り返りました。
経営計画ありきでも、店ありきでもなく、商品ありきでもなく、人ありき。いろいろ難しいこともたくさんあるけれど、誰がいつどうなってもおかしくない世の中で、残っている人生でやりたい仕事の進め方はこの方向でやっていきたいと、改めて決意しました。
なお、プレマはもう10年以上、表だっての新卒採用は行っていません。でも、来年、1人は決まっています。それは、やはりダイナーで長く働いてくれているスタッフです。私がどんなに特定のことに厳しいか、どれだけ朝令暮改で気まぐれか、ということもよくわかってのことだと思うので、この先が楽しみです。
ひまわりの花はウクライナの象徴と思うのは早計すぎます。両国の国花を調べてみてください