年始早々、高校生の息子と言い争いをしました。今年の年始は、家族で数日間を暖かな宮古島で過ごし、充実した海遊びを終えて、19時ごろに京都に到着しました。息子は新学期が始まる前にどうしても散髪に行きたいとのことで、格安カットのチェーン店が入っている大きなショッピングモールに行こう、お腹も空く時間なので、着いてからどうするか考えよう、ということにしました。
散髪が終わるのを待っている間に、胃腸も疲れているから早く家に帰ってゆっくりしながら、値引きのお惣菜でも食べて早く休もうという気分になってきました。ただ待っているのも退屈ですから、順番に割引のシールが貼られていくのを眺めつつ、半額になったお寿司などをバスケットに入れていきます。息子以外の分を選ぶことができたところで彼も売り場にやってきました。「食べたいものを入れていき。もう閉店間際でどんどん値引きになっているタイミングやから、定価のじゃなくて、せめて3割引くらいになっているのから選んでや」と言いました。息子はスポーツマンで、今はアメリカンフットボールをやっています。体型はお相撲さんのようで、体重は重ければ重いほどいいので、しっかり食べることができる年末年始には100キロを目標に努力が必要とチームから要求されている様子。とにかくカロリーを摂ることが求められています。息子が揚げ物などが入ったハイカロリーな弁当をいくつも物色している間に、彼は私にブツブツ言うのです。なにを言っているのかとよく聞くと、「電子レンジがないから、冷たいまま食べないといけないのがイヤだ」とボソボソと愚痴っています。
あいにく、私はプレマの社長かつ超貧乏を経験しているため、お惣菜の割引にこだわりがあるいっぽうで、有害性が指摘されている電子レンジは家には置いていません。また、私は有害電磁波の専門家であり、その対策の発明家であることはお客様であればご承知の通りです。こんなことを言う彼ですが、家では米は会社で売っている番場さんの無農薬米しか好んで食べることはなく、違う米を炊こうものなら「この米は番場さんの米じゃない」と言うくらい米の味にはうるさいうえに、冷めた食べ物がとても苦手で、基本的にできたての温かい食べ物を求めています。つまり彼は、冷めた弁当を電子レンジがない自宅に持ち帰って食べるのはイヤで、このショッピングモール内のどこかで温かいものを食べたいということを言いたいのです。しかし、ストレートにそう言うと私の気分を害するのがわかっているのか、やたら家に電子レンジがないことについて言及しながら安くなった弁当のショーケースをあっちにこっちにと移動し続けているのです。電子レンジが家にない責めがあまりにうるさいので、「電子レンジで体調が悪くなる人もいるねん」と息子に言うと、「そんな人、いいひんわ!(いないわ)」と言い返されました。腹が立つのは飲み込んで、買い物を済ませて車に戻ったものの、息子のあまりに事情を知らない言い方が、運転中に我慢できなくなりました。「ふざけたことを言うな!」「どんな気持ちでおれがプレマをずっとやってきたか、ちゃんと食べたいだけ食べられるように仕事の努力をしてきたか、なにもわからずにガチャガチャ言うな!」と感情が抑えきれずにぶち切れてしまい、家に帰っても食欲はすでになく疲れ切ってしまい、そのままベッドに行きました。この子を育てているなかで、成績が悪くて学校に呼び出されたときにも、こっそり私の大事なものを持ち出したときにも、このように激怒したことは一度もなく、私もどうしてこんなに腹が立つのかわからないくらい、腹が立ったのです。
ほんとうに大事なこと
二日後、息子が神妙な顔つきで、メモを片手に謝ってきました。「僕は僕なりに、お父さんがどういう気持ちでプレマの仕事をしているのか、電磁波についてどういうことをやっているのかホームページで読みました。なにも知らずに偉そうなことを言ってしまい、申し訳ありません」と、いつになくしっかり謝ってくれました。
「あのな、別におれは電子レンジに害があるとかないとか、そのこと自体にさほどの関心はないねん。こういうのは、人によって言うことが違うし、電子レンジを使ってなにも起きない人がほとんどで、おれも人を怖がらせるためにこの仕事をしているのと違う。ただ、なにも起きない人がいる一方で、電子レンジが動いただけで頭が痛いとか、柔軟剤の匂いだけで空気が吸えないとか動悸がして気が狂いそうになるとか、農薬や高度に加工された食べ物で皮膚や内蔵がボロボロになるとか、そういう人もお客様にたくさんおられるねん。おれは、学ぶということはより社会的に弱い人のことを理解して、なにかができるようになるための力をつけることやと思ってる。これが正しい、あれが正しいと決めつけることじゃなく、より弱く、より困っている人になにかをしようとできる人間になってほしい。それが働くということやし、大人になるということやと思っている。電子レンジでなにも起きない健康な身体があるんやから、それは感謝して、そうではない人もいることを忘れないでほしい。たとえ成績が悪くても、人を論破して自慢げに生きるよりは、弱い人と一緒に悲しめる人になってほしい」。
この事件を機に、伝えるべきことが伝えられた年始となりました。