らくなちゅらる通信10 周年記念号~時間にしか作れないものがある~
プレマ株式会社中川信男インタビュー

2007 年9 月に創刊した『らくなちゅらる通信』は
企業が発行するフリーペーパーとしては、かなり異例の広告を主軸としない広報誌。
あくまでも“らくなちゅらるな暮らし”を提案する、その内容に驚く人も多いようです。その創刊の意図を始め、10 年の変遷について、代表中川へのインタビューをお届けします。

会社の信頼性を高めるコミュニケーションペーパーを

―10周年おめでとうございます!

中川 読者のみなさま、執筆者のみなさま、『らくなちゅらる通信』に関わるすべての方に、まずは心から感謝の意を表します。おかげさまで10 年間、120号を発行して参りました。

―まずは創刊の意図から伺えますか?

中川『びんちょうたんコム』はECサイトですので、お客様とのコミュニケーションはメールや電話で行います。しかし、プレマのお客様は、本来、オンラインが苦手な方が多く、当時から紙ベースのコミュニケーションを求める声がありました。そこで、毎月、定期的に紙媒体を発行できないかと考えたのです。

一般的には商品の説明だけのチラシを同梱しますが、そういったものなら現在もありますよね。弊社も当時からチラシは入れていましたが、どうしても場当たり的になってしまいます。また、創刊当薬事法の取り締まりが強化されたという背景の影響もあります。商品の説明をしようとすると、どうしても限界がある。商品について何も語れないのであれば、会社の信頼性を高めるほかありません。「プレマさんが売っているものならば絶対に間違いがない」と思っていただけるようにするしかない、と思ったのです。

とはいえ、「私たちはこんなに素晴らしい会社です」と伝えたところで信用できませんよね。そこで、卓越した情報を提供することで信用していただこうと考えたのです。これが一番大きな事情です。すでに誰かがやっていそうで、実は、誰もやっていない、ということをやろうと思ったこともきっかけです。純粋にメディアとして通用するようなクオリティの媒体は、現在も、フリーペーパーとしては『らくなちゅらる通信』以外、皆無ではないかと自負しています。

中川 実は、もう一つ理由がありまして『らくなちゅらる通信』を通じて少しずつ、私のカラーを脱却したかったのです。チームで運営していることにならないので。社長脱却のひとつのプロセスでもあったわけです。しかし、その計画はうまくいきませんでした。会社自体が過渡期で、揉めごとがあるのは仕方がないとして、委任すると業績が劇的に悪化してしまった。スタッフが〝自分らで決める〞ということをしなければ、頭を使ったり工夫したりしなくなってしまうので、責任を持って決断してもらいたかったのですが。

―スタッフさんへのメッセージの意味もあったのでしょうか?

中川 残念ながらスタッフは読んでいないらしく感想もあまり聞きません。しかし“発行すること”に意義があると思っています。直接的な効果性を考えると疑問を感じられるかもしれませんが、一番大事なことは、やり続けることだと私は思います。それが何であれ時間でしか証明できないことがあるはずです。始めたことが2年で終わってしまったら、信頼性を作っているとは言えないですよね。

―信頼は蓄積ですよね

中川 そうです。信用の醸成ともいえるでしょう。現在のクオリティの『らくなちゅらる通信』を初対面の方にお渡しすると「これを毎月10年も出してるんですか?」という話になる。それは内容だけの問題ではありません。「こんな広報誌を10年も発行している会社なら間違いないだろう」ということが言外にある。時間の裏打ちがあってこそなのです。

今、弊社は事業モデルの転換期で、ジェラートの製造が、その第一歩です。仕入れて売るのではなく、自分たちの手で作るということが小さく始まり、かつ、これまでのお客様には売っていません。儲けだけを考えるなら、すぐにでも通販で売るほうがいいのですが、輸送するには、ドライアイスで一旦マイナス70度まで冷やすことになる。

うちのジェラートのような繊細なレシピだと品質はもちろん、味がガクンと落ちてしまう。乳化剤や安定剤を使えば安定しますが、そういうものを使わない、もしくは植物性のものしか使わないため、ドライアイスで冷やして輸送すること自体がNGなのです。

店舗で食べていただく味を100とすると60にしかならない。そこで、実際に店舗で味わってもらう人を少しでも増やし、「おいしい」ということ、「輸送すると味が落ちる」ということを理解していただいたうえで通販に乗せていこうと。これも時間でしか織りなすことのできない大切なことだと思います。私は常に、「時間にしか作れない何かがある」と考えていますが、その一つが「信用」なのです。

大切なのは「お客様の問題」を解決できるかどうか

中川 広報誌としてこの水準まで来たら他社には追いつけないと思います。私がもう一つ考えているのは、人に追いつけないところまでいくということ。現在、ネットショップが急増し、安さが売りの店もありますが、彼らにはついて来られません。考えが根本的に違うからです。彼らはおそらく自分のために働いていますが、私は「お客さんの問題解決をしたい」と考え、そのために働いています。

社屋にある店舗は、教育機会だと思っています。通販の場合、お客様がどういう人か想像がつきません。接客は「自分が問われること」ですのでスタッフには不評ですが、やめるわけにいきません。目の前のお客様に喜んでもらえない人が、見えないネットの向こうのお客様を喜ばせられるわけがないからです。

接客が好き嫌いという次元ではなく、人の問題を解決したいと思えるかどうかが重要です。『らくなちゅらる通信』も同じで、人の問題を解決したいと思っているから、今のような内容になっているのです。自分軸で考えるなら商品の紹介だけしていればいい。

でも、もしかしたらお客様の問題解決の一縷となるかもしれない。お会いしたとき「実は何年か前の記事のおかげで、今があります」といった変化の報告を聞くことがあります。それだけで、発行する意味があると思っています。

―発行してきてのご苦労は?

中川  毎月の原稿です(笑)。120号、毎月違うことを書くのが大変です。当初は800字ぐらいだったので、背景を解説しなきゃいけないのに話を展開しにくく、字数を増やしてもらいました。今、仕事のなかで一番しんどいのが文章を書くこと(笑)。書き始めたけれど、やっぱり違うということもありますよね。執筆者の方にも本当に感謝しています。

―執筆者の選択基準はありますか?

中川 以前は取引先の方にお願いしていましたが、やはりお客様の問題を解決してくださるかどうか、人の心を打ち、後の人生の岐路に何かいいヒントになることを書いていただけるかどうかです。

連載が長い山内先生や田中先生の記事は、とりまとめて加筆修正すれば実務書としての価値があるのではないでしょうか。情報発信の練習になると思います。田中先生は秋田時代から書いていただいていて、東京で開院されたとき読者の方が患者さんとしていらしたそうです。

―執筆者の方の問題解決でもある……

中川 そうです。お客様、執筆者、弊社、すべてにとって良い“三方良し”がいいですよね。
医師が著書を持つと患者さんの信頼を集められますし、患者さんも治療方針を理解しやすくなりますよね。

―今後の展望をお聞かせください。

中川 現況を発展させていく方針です。本当は、別のメディアを持ちたいという思いもあります。
宗教、習慣、社会規範の裏側から見る……世の中のタブーに切り込む媒体を作ってみたい思いもあります。
スポンサーがあると利害相反を受けるから書けないわけで、弊社一社だけがスポンサーなら書けますよね。
ディープかつ、マイノリティかつ、ダークサイドな媒体を、いつか作ってみたいです。