子どもに贈りたい「生きる力」のたね

【Vol.105】しなやかさ

光と影、男と女。

異なるものを二つとも認めて無理に融合させないという陰陽思想、素晴らしいですよね。

対極にあるものの存在理由を考えるとき、
筆者はよく「モーターが動くしくみ」を思い出します。

N極とS極のように、男女は違うからこそ二人でいると
エネルギーを生み出せるのかもしれません。

ただし、うまくいっている場合に限りますが(笑)。

二者択一は諍いを生みやすい

この世では、二元論で片づけられてしまうことが多いですよね。

教育の世界でもそうです。

一斉保育か自由保育か。

シュタイナーかモンテッソーリか。

ここでいう自由保育は、決して「放任」ではありません。

ただ、多くのお母様が求めておられるのが、
ある程度、時間や内容が決められた一斉保育であるのは確かです。

「椅子に座っていられる子」=「良い子」という風潮がどうしてもあります。

これは日本の小学校以降の教育が、黒板の前に先生が立ち、
一方的に教える「与える教育」が基盤になっているためです。

この流れが変わってきたのは、この10年ほどのこと。

数年前、朝ドラ出演俳優さんにインタビューしたとき、
お子さんを「シュタイナーで育てたい」とおっしゃっていました。

かなり浸透していることに驚いたものです。

先ほどの、シュタイナーかモンテッソーリか。

このシュタイナーをAとし、モンテッソーリをBとすると、
①Aが良い②Bが良いのどちらかで議論になるコトがあります。

教育というものは議論になりやすいものですが、
議論になれば良い方で、罵り合いになることもあります。

コミュニケーションの講師をしていて思うのは、
この「議論」が日本人は慣れていないのだということ。

さらにアメリカからディベートが入ってきてしまいました。

ディベートは「議論」ではなく「討論」です。

今の日本に必要なのはどちらかというと「議論」のはずですが、
そういうったことを進めていける園や学校は、まだ少ないと感じます。

生きていくうえで重要なのは、そういった二者択一ではなく、
①でも②でもない「第3の道」を見つけること。

それを思いつく「しなやかさ」が重要ではないでしょうか。

それは「どちらもいい」かもしれませんし、
「どちらでもない」別の選択肢かもしれません。

例えば、西洋医学か東洋医学かではなく
「どちらもいい」と捉えたほうが道は開けますよね。

道は一つではない方が生きやすいはずです。

どちらか一つだけを選ぶ道というのは、所属しているグループ内の絆は深まりますし、
承認欲求は満たされますが、異なる考えの人と諍いになりやすいものです。

また、所属しているグループとの間に折り合いがつかないできごとが起こったとき、
前に進めなくなってしまうというデメリットも考えられます。

子育てにも「しなやかさ」を

第3の道を見つける力は子育てにも役立ちます。

お友達の家に遊びにいったとき「帰りたくない!」と
子どもが駄々をこねることってありますよね。

「帰るの!」「いやだ!」と押し問答になってしまうと、
お友達家族にも気を遣いますよね。

「じゃあ、帰りにドーナツ買って帰ろうよ」「○○のビデオを見るんじゃなかった?」
という新しい選択肢を与えると、子どもはそこに興味を持つことができます。

子育てはアイデアがあるかどうかでストレスがまるで違います。

働くお母さんも「母親をがんばる」か「仕事をがんばる」かだけだと、
心がポキっと折れてしまうかもしれませんが、
「たまには一人でカフェに行く」「一時的に仕事を減らしてもらう」などの
選択肢を持てたなら、ストレスが軽減するかもしれません。

「第3の道」を見つけるためには、しなやかさと発想力が必要です。

まずは、大人が身も心もやわらかく、日々を楽しめたらいいですよね。

編集室Roots
代表
藤嶋 ひじり
(ふじしま ひじり)

保育士から編集者に転身。
日経BP社『日経キッズ+』、小学館『edu』など教育雑誌や、
NHK朝ドラ『あさが来た』など公式ドラマガイドの取材・執筆。
インタビューは1,500人以上。たまに保育士。心理カウンセラー。
庭でハーブや野菜を育てる。元シングルマザーで三人の子の母。
歌と踊りが大好き。合氣道初段。

「生きる力」を育て直す己育て(こそだて)マガジン『Roots』
http://www.ikiruchikara-roots.com

【Vol.104】気づく力

突然ですが、あなたはどんな人が嫌いですか?

かっこつけた人、自分を好きそうな人、目立ちたがる人、いい人を演じる人、
アドバイスしてくる人、親しげに寄ってくる人、ぶりっこな人……。

その「嫌い」のなかに、自分のヒントが隠れているかもしれません。

生きる力のひとつは「気づく力」。

世間の情報やうまい話に疑問を持つこと、一見乱暴そうな人の背景や想いに気づくこと、
日常のなかにある「幸せ」に気づくことなども含まれます。

なかでも、奥底に眠る「自分の本当の欲望」に気づけるかどうかが、
自己肯定感を育てることと深く繋がっているといわれています。

子育てやパートナーのカウンセリングに携わるとき、
傾聴だけではなく「あなたはどうしたいですか?」と聞くことがありますが、
わからない方がとても多いです。

「自分のことは一番自分が知っている」と思いがちですが、意外に知らないもの。

自分の顔も、鏡や写真でしか私たちは知ることができません。

唯一、自分を知る手がかりが「快」と「不快」。

つまり「感情」なのです。

健康系雑誌の取材で知った東洋医学系の考え方に
「『感情』は湧き出てくるエネルギーであり、コントロールできるものではない」
というものがあります。

私は、この考えを取り入れ、人間は「感情」をコントロールするのではなく、
そこからヒントを得るべきではないかと考えています(もちろん発散は必要です)。

悲しみ、怒り、うれしさ、その感情の元となるのは「快」や「不快」です。

怒りの源が「悲しみ」であることも多いですよね。

自分が心地よいと感じること、不快を感じること、
どちらも重要な「自分の手がかり」です。

例えば、人を「嫌い」と感じる理由は

①自分に似た要素を持っている
②自分に無いものを持っている
③理解ができない(知らない怖さ)

強引に分けると、3つのどれかではないでしょうか。

不快感は心の奥底に眠る「本当の自分」に繋がっているのです。

以前、ハーブ研究家のベニシアさんに教育系雑誌で
2年間インタビューしていたことがあります。

「大切なことは、ここ(ハート)に聞けばわかります。

モヤモヤ、ザラザラしたら、それはNOということ。

頭ではYESだと思っていても考え直した方がいいのです」と教えていただき、
とても納得したのを覚えています。

筆者も若いころは随分と、この違和感を無視し、思考で選択してきました。

この違和感は心理学者カール・ロジャーズのいう「自己不一致」につながります。

親が自己一致していないと、子どもと相対するのに余計なパワーが要りますし、
子どもも自己不一致のまま育つことになりかねません。

子どもと育ち合っていくには「本当の想い」と向き合う勇気が必要です。

気づいても認めるにはパワーが要りますし容易なことではありませんが、
子どもの心を知る手がかりにもなるはずです。

見えないからこそ「気づく力」を

人に沸き起こる感情「好き」「嫌い」を変えることは困難です。

数人育てると、親子でも相性はあると気づきます。

子どもが「○○ちゃん、嫌い」と言ったら、
私は「どうして?」と聞くようにしてきました。

少しずつ紐解いて、その○○ちゃんを嫌がる理由に近づきつつ、
俯瞰して想像できる○○ちゃんの想いを「~って思ったのかもしれないよ」と代弁。

好きになれるポイントを探してあげられるように意識してきました。

「気づく力」は「想像力」や「素直になる力」にも関係しています。

簡単ではなさそうですが、「自分の意外な一面」を、
少しでも素直に受け入れられるようになれたら、大人も子どもも、
「新しい心の扉」が開いて、風通しのいい関係を築いていけるのではないでしょうか。

編集室Roots
代表
藤嶋ひじり
(ふじしま ひじり)

保育士から編集者に転身。
日経BP社『日経キッズ+』、小学館『edu』など教育雑誌や、
NHK朝ドラ『あさが来た』など公式ドラマガイドの取材・執筆。
インタビューは1,500人以上。たまに保育士。心理カウンセラー。
庭でハーブや野菜を育てる。元シングルマザーで三人の子の母。
歌と踊りが大好き。合氣道初段。
「生きる力」を育て直す己育て(こそだて)マガジン『Roots』
http://www.ikiruchikara-roots.com

【Vol.103】子どもに贈りたい「生きる力」のたね

初めまして。藤嶋です。

編集ライターと名乗っていますが、保育士、セラピスト、
コミュニケーション講師でもあります。

歌うこと踊ることが好きで、自然のなかでゆっくり過ごすことが一番の幸せ。

一日、海辺でゴロゴロ過ごせます(笑)。

子どものころは「みちくさ」がルーティン。

小学校から家まで道路を通らずに歩ける郊外のベッドタウンで育ち、
片道10分の道を30分以上かけて帰っていました。

土手に寝転んで雲を見るのが好きでした。

 

自由な私 一生懸命過ぎる母

 

そんな私は、学歴重視、礼儀作法を重んじる旧家出身の母に育てられました。

出汁を取るのはもちろん、ベランダで糠漬けをつけ、一汁三菜の和食。

パンもお菓子も手作りで、レトルト食品、冷凍食品、スナック菓子は一切なし。

服も、ほとんど手縫い。

厳しいながらも小さい子が好きな母は、週末はお弁当を作って公園へ。

幼少期は私の個性も受け止めてくれていました。

一方で母は、泣く、怒るなどの「感情を出す」ことを極端に嫌う人でした。

頭ごなしに叱り「感情をコントロールする」ように言われました。

親戚の集う誕生日会で「機嫌を治す」ことができなかった私は、お尻を叩かれたほど。

テレビ番組や書籍、着る服も自由に選ばせてもらえず、
年を重ねるごとに個性も否定されていきます。

小学校2年のとき公園のブランコを漕ぎながら
「今が一番幸せ。これから私は大変な人生を歩むのだから」
となぜか思ったものです。

特に問題を起こす子ではなく、小学校時代は成績もトップでしたが
「いい子になってお母さんに好かれたくないの?」とよく言われました。

残念ながら父も、姉びいきでした。

そういった経緯もあり、自己肯定感が低かった私の人生は波乱万丈でした。

しかし、天性の楽観主義としなやかさで乗り越え、
今は楽しい日々を送っています。

母とも亡くなる前に和解しました。そんな母に感謝していることが3つあります。

礼儀作法、「美しい景色を見て『美しい』と感じる心」を伝えてくれたこと、
そして、個性的で人見知りな私を、YMCAの野外活動クラブに入れてくれたことです。

このコラムでは「生きる力」というキーワードをもとに、
出会ってきたたくさんの人、本、映画などを通して気づいた哲学や、
子育てのヒントをお話ししたいと思います。

 

自然のなかで「感じる力」が「生きる力」につながる

 

今回、ご紹介する本は、知る人ぞ知る『センス・オブ・ワンダー』。

自然を感じることの素晴らしさが書かれている本です。

富士山の麓で暮らす大切な友人からもらいました。

帯には「子どもたちへの一番大切な贈りもの」と書かれています。

波乱万丈人生でも、私は決して「完全なる孤独」を感じることはありませんでしたが、
それはきっと「自然」のなかでたくさん過ごしたからではないかと思っています。

子育ては「親が大切だと思うこと」を引き継ぐこと。

私は、そう思います。

私も「センス・オブ・ワンダー」な体験を子どもにたくさん贈りました。

今、わが家の子どもたちは思春期です。成人した子もいます。

私の子育てが成功したのかどうか、それはわかりません。

苦労もさせましたし、私の方針も娘には否定もされてきました。

ただ、少なくとも「好きなものを好きだと、遠慮なく言える環境」は
与えられた気がします。

長い人生、きっと終わってみるまでわからないことばかり。

でも、土壌に「愛」があれば、どんな人生も、
いつか愉しむことができるのではないかと悠長に構えています。

その「愛」とは、人の愛であり、地球の愛でもあります。

そんな、ゆるい子育て観をお伝えしていきます。

編集室Roots
代表
藤嶋 ひじり
(ふじしま ひじり)

保育士から編集者に転身。
日経BP社『日経キッズ+』、小学館『edu』などの教育雑誌や、
NHK朝ドラ『あさが来た』『マッサン』など公式ガイド本の取材・執筆。
インタビューは1,500人以上。今もたまに保育士。庭でハーブや野菜を育てる。
元シングルマザーで三姉妹の母。歌、ダンス、言葉など自己表現のサポートも。
合氣道初段。「生きる力」を育て直す
己育て(こそだて)マガジン『Roots』
http://www.ikiruchikara-roots.com