突然ですが、あなたはどんな人が嫌いですか?
かっこつけた人、自分を好きそうな人、目立ちたがる人、いい人を演じる人、
アドバイスしてくる人、親しげに寄ってくる人、ぶりっこな人……。
その「嫌い」のなかに、自分のヒントが隠れているかもしれません。
生きる力のひとつは「気づく力」。
世間の情報やうまい話に疑問を持つこと、一見乱暴そうな人の背景や想いに気づくこと、
日常のなかにある「幸せ」に気づくことなども含まれます。
なかでも、奥底に眠る「自分の本当の欲望」に気づけるかどうかが、
自己肯定感を育てることと深く繋がっているといわれています。
子育てやパートナーのカウンセリングに携わるとき、
傾聴だけではなく「あなたはどうしたいですか?」と聞くことがありますが、
わからない方がとても多いです。
「自分のことは一番自分が知っている」と思いがちですが、意外に知らないもの。
自分の顔も、鏡や写真でしか私たちは知ることができません。
唯一、自分を知る手がかりが「快」と「不快」。
つまり「感情」なのです。
健康系雑誌の取材で知った東洋医学系の考え方に
「『感情』は湧き出てくるエネルギーであり、コントロールできるものではない」
というものがあります。
私は、この考えを取り入れ、人間は「感情」をコントロールするのではなく、
そこからヒントを得るべきではないかと考えています(もちろん発散は必要です)。
悲しみ、怒り、うれしさ、その感情の元となるのは「快」や「不快」です。
怒りの源が「悲しみ」であることも多いですよね。
自分が心地よいと感じること、不快を感じること、
どちらも重要な「自分の手がかり」です。
例えば、人を「嫌い」と感じる理由は
①自分に似た要素を持っている
②自分に無いものを持っている
③理解ができない(知らない怖さ)
強引に分けると、3つのどれかではないでしょうか。
不快感は心の奥底に眠る「本当の自分」に繋がっているのです。
以前、ハーブ研究家のベニシアさんに教育系雑誌で
2年間インタビューしていたことがあります。
「大切なことは、ここ(ハート)に聞けばわかります。
モヤモヤ、ザラザラしたら、それはNOということ。
頭ではYESだと思っていても考え直した方がいいのです」と教えていただき、
とても納得したのを覚えています。
筆者も若いころは随分と、この違和感を無視し、思考で選択してきました。
この違和感は心理学者カール・ロジャーズのいう「自己不一致」につながります。
親が自己一致していないと、子どもと相対するのに余計なパワーが要りますし、
子どもも自己不一致のまま育つことになりかねません。
子どもと育ち合っていくには「本当の想い」と向き合う勇気が必要です。
気づいても認めるにはパワーが要りますし容易なことではありませんが、
子どもの心を知る手がかりにもなるはずです。
見えないからこそ「気づく力」を
人に沸き起こる感情「好き」「嫌い」を変えることは困難です。
数人育てると、親子でも相性はあると気づきます。
子どもが「○○ちゃん、嫌い」と言ったら、
私は「どうして?」と聞くようにしてきました。
少しずつ紐解いて、その○○ちゃんを嫌がる理由に近づきつつ、
俯瞰して想像できる○○ちゃんの想いを「~って思ったのかもしれないよ」と代弁。
好きになれるポイントを探してあげられるように意識してきました。
「気づく力」は「想像力」や「素直になる力」にも関係しています。
簡単ではなさそうですが、「自分の意外な一面」を、
少しでも素直に受け入れられるようになれたら、大人も子どもも、
「新しい心の扉」が開いて、風通しのいい関係を築いていけるのではないでしょうか。
編集室Roots
代表
藤嶋ひじり
(ふじしま ひじり)
保育士から編集者に転身。
日経BP社『日経キッズ+』、小学館『edu』など教育雑誌や、
NHK朝ドラ『あさが来た』など公式ドラマガイドの取材・執筆。
インタビューは1,500人以上。たまに保育士。心理カウンセラー。
庭でハーブや野菜を育てる。元シングルマザーで三人の子の母。
歌と踊りが大好き。合氣道初段。
「生きる力」を育て直す己育て(こそだて)マガジン『Roots』
http://www.ikiruchikara-roots.com