日本初のベジタリアン雑誌「ベジィ・ステディ・ゴー」の編集長かつ、出版社であるキラジェンヌ株式会社代表でもある吉良さおりさんは、出版業というハードな仕事をこなしながら、まだ2歳手前の小さなお子様を育てるワーキングマザー。その小柄な体からは想像もつかないような力強い求心力で周囲を巻き込みながら、大きなミッションを具体化し続ける姿はまさしく「台風の目」そのもの! 現在お二人目をご懐妊中とのことで、さらに多忙を極めそうな吉良編集長に、「ベジィ」を創刊したきっかけや、「子育てをしながら働く」ことについてお話ししていただきます。 |
「ベジィ」の出版を決断したのは、人々の意識を変えたかったからです。結婚・子育てという人生設計が具体化してきたものの、周囲を見まわすと、いずれ生まれる自分の子供に通わせたい学校がありません。それはお察しの通り、給食の問題。経費の都合か、あまりにもお粗末だと感じたものの、その問題をひとりで解決するにはあまりに非力です。いつも自然食品店を利用していても、一般の人々の価値観が変わらなければ、結局つまずいてしまいます。だからこそ、この雑誌を通じて人々の意識を変えていきたいと考えました。
ファッション雑誌のようにおしゃれ感があって、楽しそうな媒体でないと浸透しないと考えたので、最初のアプローチは、「こういう生活いいよね、楽しそう、おしゃれ」。誰もが健康になりたいし、幸せになりたいのですから、そこに焦点をあわせたほうが興味をもってもらえますから。もともとベジタリアンに関心のなかった人から届く読者ハガキに、「この雑誌を読んで興味をもつようになりました」と書かれているのを読むと、すごくうれしくなりますね。
「ベジィ」の読者層は10代後半から70代までと幅広く、子育て中の読者は3割程度なので、誌面には育児に関する情報がありません。私自身が子育て中ですし、もともと子供の将来を思ってのことでしたから、子供に関することはやはり力を入れたいので、いずれはぜひ別冊を出したいですね。自然派育児のママ達と月に一回お食事会を兼ねた情報交換会をしているのですが、彼女たちとも、「何かやりたいね」という話で盛り上がっています。
私は以前、フランスに留学した経験があります。フランスでは裕福なブルジョアのマダムでも仕事を持っていて、もしかすると仕事をしていない女性はいないのではないかとさえ思うほどでした。もちろん、ベビーシッターに関する国の制度が充実していることが日本との大きな違いのひとつではありますが、なによりもフランス人男性はイキイキと仕事をしている女性のことが好きなんです。
そういった風景を見て、「子供を育てながらでも(仕事は)続けられるんだ」と思ってきたので、私自身も当然ながら、出産後も仕事を続けることに違和感はまったくありません。自ら働くことで男性の苦労も理解できるようになる一方で、主人とも何かにつけ対等に話ができますし、自分の意志で何でもできますし(笑)。
「仕事と家庭の両立はたいへんでは?」と聞かれることがありますが、私はむしろ、仕事をもっている方がバランスよく自分の状態を保つことができています。私みたいなタイプの女性が専業主婦だと、日々の暮らしの中での小さな不満がたくさんたまってきて、それがすべて夫に向いてしまうと家庭崩壊にもなりかねません(!)。私にとっては、そんな不満を発散できるのが仕事の場ですし、事実とてもうまく発散できているので、まったくストレスがないのです。もしも専業主婦をしていたら、かなりのストレスでしょうね。ですから、毎日家事をしながら子育てに専念している専業主婦の方々はすごいと思います。
幼児虐待のニュースをよく耳にしますが、大抵は専業主婦で、若い母親であることが多いですね。人間は年齢を重ねていろんな経験をすると柔軟にもなってきますが、まだ若すぎると許せなかったり、受け入れられなかったりすることも多いものです。母親の愛に甘えることができない子どもたちはとてもかわいそうですが、若い母親をじゅうぶんにケアすることができない社会構造である以上、一概にその母親そのものが「悪」だと私は言い切れません。だからこそ、できることならば子供を生んだ後の女性も、社会に出て仕事をした方がいいと思っているんです。
同時に、家事と仕事の両立というのはやっぱりたいへんなことなので、やりがいと責任感とのバランスも十分に養っていく必要もあります。新たな一歩を踏み出す決断をした女性がどんどん社会に復帰できるような環境が整ってほしいですね。
ベジィ・ステディ・ゴー
2008年に創刊したベジタリアン専門誌「ベジィ・ステディ・ゴー」は徐々に読者を増やし、ベジタリアンの魅力と価値を楽しくおしゃれに伝える媒体として、その影響範囲を確実に広げています。弊社の中川信緒も登場した最新号はご覧いただきましたでしょうか? |
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「ベジィ」も特集を組むなど、ローフードへの関心が高まっていますね。その一方、「朝はフルーツ、昼・夜はサラダで飽きちゃいそう…」という声もチラホラ。そんな不安を吹き飛ばすのが、本誌でもご執筆いただいている超人気ローフード・エヴァンジェリスト石塚ともさん翻訳の、『ローフード・フォー・ビジー・ピープル』。題名からもお察しのとおり、忙しい毎日のなかでも楽しめる簡単レシピと、原著にはなかった石塚ともさんの解説も満載で、ローフーディストのバイブル本ともいえる仕上がりです。 |