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カンボジア地雷除去支援

江角泰 (えずみ たい)

NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。

【Vol.57】地雷原から議場へ、議場から一般市民へ

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 前号からの続きで、2011年11月28日からカンボジアの首都プノンペンで開催された、対人地雷全面禁止条約(通称:オタワ条約)の第11回締約国会議の様子を、報告いたします。今回は、会議最終日の5日目です。 

 5日目の午前中のセッションは、前日に引き続いて「条約の普遍化」です。この日は、マレーシア、フランス、南アフリカ、日本、カンボジア、セネガル、国連地雷対策チーム、カナダが発言しました。その中で、ほとんどの国家が、新しく締約国になった南スーダンとツバルを歓迎し、近く条約を批准すると発表したフィンランドとポーランドも祝福されました。この会議後、フィンランドは2012年1月9日に条約を批准し、159番目のオタワ条約の締約国となりました。残る非締約国は37カ国です。

 そして、「国際協力と支援」のセッションに移りました。このセッションで目立ったのが、「南南協力(※1)」という言葉。まずインドネシアが、「南南協力」は長期的に見て効果的であることを主張しました。またコロンビアも、国境を接するエクアドルやペルーとの経験をシェアしていることを挙げ、「南南協力」の重要性を強調していました。ペルーは、エクアドルとの共同の発言のなかで、両国は国境地域の地雷撤去、詳細な情報提供や機材の交換、2国間トレーニングや手続き、費用のシェアなどを、まるで1つの国のように協力して実施していることを強調していました。今後、このような国境を接する国同士が協力して地雷対策活動に当たることが、真の平和につながっていくのかもしれません。日本は、この会議中に「南南協力」がテーマのサイドイベントを開催していましたが、コロンビアとカンボジアでサポートしている「南南協力」プロジェクトの詳細を報告していました。

 そして、「法令遵守(コンプライアンス)」のセッション。ICBL(地雷廃絶国際キャンペーン)は、まず、3締約国(ギリシャ、ベラルーシ、ウクライナ)によって、貯蔵地雷の破壊に関する期限が4年近く守られていないことに、深刻な懸念を表明。多くの締約国が条約の規定を長い間守らないことは、条約の信頼性とインパクトに疑問が抱かれることになると主張しました。2番目に、締約国は条項3で、訓練用として幾らかの地雷を保持することが例外として認められていますが、この例外の明らかな乱用が、単なる報告の問題ではなく、法令遵守の問題として見る時が来ていると主張しました。あまりに多くの締約国が、許可された目的のために役立たせる様子もなく保持していて、〝地雷は単に、倉庫で座っているようである〞と述べました。3番目として、コンゴ共和国が延長申請をすることなく、除去期限が過ぎるという条約の違反をしていることを指摘。延長申請は、この会議が開催された週にようやくなされましたが、多くの国が除去の活動を進めることがないことは、実行の問題だけではなく、コンプライアンスの問題にもなりかねないと懸念していると報告しました。残りの問題として、2011年にスーダンで、政府と反乱軍の両方から、新たな地雷の使用があったという報告や主張が繰り返されたことに焦点が当てられました。治安が悪く、その主張の調査ができていないとのことですが、国連職員による懸念に基づけば、主張は深刻で、いくつかのタイプの地雷の使用が、武装勢力もしくは軍によってなされたことが確かであるようです。しかし、対人地雷なのか、対戦車地雷なのか、それとも両方か、どの勢力が使ったのかということは、明らかではありません。ICBLでは、スーダンに締約国とこの問題を話し合うことを勧めており、最もはなはだしい条約違反になる可能性があるとして、締約国による喫緊の考慮すべき問題とされています。

 そしてこの日の午後、国内に埋設されている全ての地雷の除去の期限延長を申請していたアルジェリア、チリ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、エリトリアの除去期限延長が採択されました。

 最後に、次回の第12回締約会議は、2012年12月3日から7日にかけてジュネーブで開催されることが決められ、議長は、スロベニアのマチャズ・コヴァチッチ氏が選ばれました。5日間の会議でしたが、内容は盛りだくさんで、議長が最後に感謝の言葉を述べ、その時に涙ぐんでいるようでもありました。これから第12回締約国会議まで、この記事をご覧の皆様にも、世界中の地雷問題に少しだけでも、関心を持ち続けてもらえれば嬉しいです。オタワ条約は、一般市民が声を上げれば、世界を変えることができることを証明しているのですから。

※1 南南協力とは、開発途上国の中で、ある分野において開発の進んだ国が、別の途上国の開発を支援すること。

江角泰(えずみ たい)

江角泰(えずみ たい)氏 NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。
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- カンボジア地雷除去支援 - 2012年6月発刊 Vol.57

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