子どもを想うからこそ…
母親だったらほとんどみんな、わが子を健康に、幸せに、育ててあげたいと考えています。でも、その「健康に、幸せ」の基準はかなり人それぞれです。
たとえば先日、わたしの2歳の娘が目を離したすきに、落ちていたピストルの弾(プラスチック製)を鼻の奥に詰めこみ、近所にある夜間救急に出かけるはめになりました。そのときその場で会ったのが、うちの子とひと月違いの男の子とそのお母さん。男の子は軽症のやけどで、「おくすりほしい~」と泣き叫んでいます。そばにいる母親は「もうすぐもらえるからね」と懸命になだめているのですが、2 歳の子が痛みとショックの慰めを薬に求める姿にわたしは軽い衝撃を受けました。うちの子たちは薬を飲んだことがないので……。
児童館に行ってみると、どうして食べてくれないの~と嘆きながら、つかまり立ちしている赤ちゃんに、コンビニで買ったと思われる、カップに入ったゆでたお豆をあげようとしているお母さんもいます。添加物は最小限なのかもしれないけど、コンビニで買うくらいだったら、あげなくてもいいのでは ? と、わたしは心の中でつぶやくわけですが、どんなに忙しくても、ちゃんと月齢に合わせた離乳食を心がけ、「子どもが食べてくれない」と嘆くお母さんは、そりゃあコンビニの手も借りたいくらい、とても大変なはずです。
わたしの育児の判断基準は、できる限り手間がかからないこと、自分に合っていること。小児科に行くほうが手間だから、軽度のやけどの手当てくらいはおうちでするし、痛みのショックも、おうちで癒やします。離乳食は無理にあげるよりは母乳ですませます。まあ何も知らずに主流のやり方に逆らうほど気が強くないので、自信をもってその選択ができるよう、多少の理論武装は必要となりました。
もちろん最初からがっつり情報収集するのも、育児のあいまにそんな時間はないし、面倒です。だから迷うときは、「昔の人はやっていたか ? 」と、自問自答しました。今のわたしたちが生きている以上、昔ながらの子育てをすれば、子どもは無事に育つはずですよね ?
あらゆるジャンルについて言えることですが、メインカルチャーに対するサブ、あるいはオルタナを探すと、意外とトラディショナルなもの、エスニックなものがそこに含まれます。あとから振り返れば、育児の場合も、オルタナティブなやり方には、伝統的でユニバーサルな方法が宿り、ある意味、わたしは王道を追求することになりました。
本当に“らく”な育児
そうして、第一子の子育てがローリー・ブーケ著『親子で楽しむおむつなし育児』(河出書房新社)という本の形になり、第二子の子育てが、スーザン・マーケル著『親子にやさしい自然育児』(草思社)になりました。
おむつなし育児とは、平たく言うと、紙(布)おむつがない時代の赤ちゃんの育て方です。え、おむつがないなんて大変でしょう、と思われる方。これは、やってみるとわかるのですが、おむつを使わない時間を作ったほうが本当に楽 ! 下の子は、新生児からおむつなしで育てたので、うんちの多い新生児期に、おむつなしがどれほど楽か、声を大にして叫びたいくらいです。
そして、後者がこの連載のお題そのものともいえる「自然育児」の本です。この本はアメリカの小児科医が著者であることがポイントです。子どもの一番の専門家は医者ではなくその子の母親であると説き、最新の医学研究によって立つ内容は、科学的にも説得力をもっています。薬の害、自然治癒の大切さ、予防接種のこと、最新のベジタリアンダイエットの有用性などなど、話題も豊富なので、ご興味のある方はご覧になったら、ひと通りのポイントが身につくと思います。
この本の英文タイトルを直訳すると、「かかりつけの小児科医が知らないことがあなたの子の害になりうる:育児へのもっと自然なアプローチ」となります。お医者さん(あるいは保健所)の規格に合った子育てをがんばらず、もっと肩の力の抜けたアプローチをしたら、子育てはきっと、今より楽になります。と、いうことを、これから書かせていただきます、どうぞよろしくお願いいたします。
『小児科医が教える 親子にやさしい自然育児』 スーザン・マーケル(著) 望月 索(訳) 山田 真(解説) 出版社:草思社 |
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『親子で楽しむ!おむつなし育児』 ローリー・ブーケ(著) 望月 美和(訳) 三砂 ちづる(解説) 出版社:河出書房新社 |
望月 索(もちづき・さく)
5歳と2歳の2女の母。不摂生も極まった37歳で妊娠。高年出産のうえ当然のようにトラブル妊婦だったが、産婦人科の方針とソリが合わず、近所の美容院で助産院なる存在をたまたま知ったことで、自然分娩へと舵を切る。 トラブル妊婦が自然分娩できるからだを作る過程でライフスタイルは真逆に変化。気づくとハードコアな自然派お母ちゃんに。 編集、ライター、プレマの東京スタッフの1人。 |