移住間もないころ、地元の方が黒糖を『しょっぱい・苦い』と表現されることを不思議に思いました。その後、サトウキビはさまざまなミネラルやビタミンを含む生鮮食品であること、サンゴ礁やプレートの隆起など島の由来によって土壌成分(作物が土から吸い上げる成分)が異なることを知り、実際にいろいろな黒糖を食べ比べ、製造現場の見学もしました。今は、色を見ただけでおおよその味・硬さが推定でき、香りと味からキビの糖度や鮮度、焚き上げの方法(灰汁処理や仕上げ温度など)も推測がつくようになりましたが、自分でも試行錯誤を続け知識・経験・技術を高めるほどに、むしろその難しさがわかってきました。
最近、自問しているのは、灰汁(雑味)とコク(旨み)の違い。糖度の高さや生鮮作物としての扱いなど原料の品質を高位に維持するのは当然のこととして、焚き上げの際の石灰の使い方と灰汁の取り方には多くの謎が含まれています。石灰(水酸化カルシウム)を使って酸性の搾汁液を中和すると、土由来の不純物がトラップされて沈殿します。一般の黒糖加工所では、黒糖に固めやすくすることを主目的に石灰を使うために、沈殿物もろとも焚き上げ、味には苦みとえぐみを残します。ところが、かなり手間はかかりますが、沈殿物を残して上澄み液だけを焚き上げると、まったりとした旨みは残しながらすっきりした味に生まれ変わります。そして、苦み・雑味成分が減ることも手伝って、キビに含まれる有機酸の酸味を微妙に感じるようになります。砂糖を食べて酸っぱいって不思議な感覚ですよね。黒糖に対する既成概念がひっくり返された瞬間でした。
キビの本来の美味しさを求めて試行錯誤を続けます。