今月は、砂糖の歴史を簡単にご紹介します。黒糖作りの工程はシンプルで、圧搾機で搾ったサトウキビのジュースを釜で焚き詰めて、型に流して冷やし固めたらできあがりです。工程がシンプルだからこそ、実はとっても繊細で、素材や工程のちょっとした変化で黒糖の品質(味・香り・口溶けなど)が大きく変わってしまうことは、これまでにも本紙でご紹介してきました。
今月は「工程はシンプルだけど作業は大変」という話題からスタートします。500gのサトウキビジュースを焚き詰めて、できる黒糖はわずか100g程度です。サトウキビジュースのブリックス(糖度)は約19で、黒糖では約95です。すなわち、ジュースに含まれる水分を蒸発させた結果「糖度が5倍に、重量は5分の1に濃縮される」ことになります。
重量5分の1になるまで水分を蒸発させる工程が手間を要します。通常の製糖工場では、プールのような長方形状の平窯で表面積を大きく稼いで、長時間かけて水分を蒸発させていきます。
大規模の製糖工場では、複数の加熱容器を連結した多重効用缶という設備で、効率よくサトウキビジュースを焚き詰めていきます。1番目の缶内のジュースを加熱・沸騰させて発生する高温蒸気を次の熱源として、2番目の缶内のジュースを加熱していきます。その際、高温蒸気は冷やされて再び水になりますが「一定容積のなかで気体を凝縮して、液体にすると内部の気圧が下がる」という物理法則に従って、2番目の缶内が減圧されます。これによって沸点は下がり、2番目の缶内のジュースはより低温で沸騰することになります。
加熱容器を連結してこのサイクルを繰返すことで、どんどん缶内が減圧されていき、最終的には、60℃程度の低温で熱効率よく沸騰・濃縮が進みます。ちなみに、サトウキビジュースの搾りかす(バガス)を燃やしてボイラーの熱源にしています。