もうすぐ出会って40年になる中学からの同級生の親友がいます。彼女は大学を卒業してカナダに移り住んだため、それ以来、私たちが会うのは、年単位でやってくる「たまに」だけ。互いの近況をメールや電話でやりとりしながら、会えたときは「またこんなに時間が経ってしまったね」と笑い合う、そんな関係が長く続いていました。
そんな親友が、いろいろな流れのなかで数ヶ月間、日本に帰ってくることになり、半年ほど一緒に暮らすことになったのです。不思議な気分でスタートしたものの、暮らしが始まってみると驚くほどスムーズで、何十年もたまにしか会わなかったのが嘘のようでした。
それぞれ朝起きて「おはよう」と声をかけ合い、その日の予定に出かけ、帰ってきたら夕飯の支度をしたり、その日一日の感想を語り合ったりして、学生時代の合宿の延長のような、それでいて、大人になった今だからこその落ち着いた日々でした。
まったく別の人生を歩んでいるのに安心して過ごせる居心地の良さは、お互いの40年という時のなかで、ひっそりと熟成されていたのかもしれません。
そうはいっても、気づけばふたりとも更年期。かつては想像もつかなかった体調の波や、なんともいえない気分の浮き沈みも、今はリアルな日常の一部です。「なんか最近疲れやすくなった」「私も!」「なんか夜、目が覚めるんだよねえ。ぐっすり寝たいよう」「わかるー」など、愚痴り合っていると話のどこかから笑えてくるのが不思議です。「あれいいよ」「これ、もう試した?」など、現実的な対処法についてももちろん交換し合いましたが、なにより、体のしんどさを軽口で愚痴り合うことの効果は抜群でした。
ちょっとしんどいことを日々のネタへと変えてしまうことは、現実的な対処法以上に素晴らしい対処法であることを体感しました。歳を重ねるからこそ直面する「まさか」の変化や、「もしや」と不安になる瞬間も、だれかと分かち合うことで、こんなにも軽く、私は大丈夫だと思えてしまうんだなぁ、という嬉しい驚きでした。
6ヶ月ほどの共同生活はあっという間に過ぎ去りました。今年50歳を迎える節目の「まさか」の経験が、今後の予測できない「まさか」の事態を楽しくやり過ごす方法を教えてくれたように思っています。
海外事業部
久野 真希子(くの まきこ)
大人のピアノにチャレンジしています。楽譜が読めていなかったと気がつき、そこからやり直したらすごくスムーズで驚いています。