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カンボジア地雷除去支援

江角泰 (えずみ たい)

NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。

【Vol.22】変革の主体者は自分

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今年の4月、テラ・ルネッサンス(以下、本会)が開発支援を実施するタイ国境の村での、マイクロクレジットの回収が終わりました。地雷原が残り、地雷の被害者や最貧困層が多いことから、この村での開発支援を2008年10月に開始しました。いくつかのプログラムを実施していますが、その中の1つが、JICA基金を利用して実施したマイクロクレジット制度。マイクロクレジットは、失業者や十分な資金のない起業家、または貧困状態にあって商業銀行からの融資を受けられない人々を対象とする、非常に小額の融資(ローン、クレジット)です。2006年ノーベル平和賞を受賞したバングラデシュのグラミン銀行の制度がよく知られています。

本会が対象としたオッチョンボック村では、他のカンボジアの農村と同じように、月7~8%、時には10%以上という高利に苦しめられていました。 農業やビジネスに必要なお金がない農民や貧困層は、高利貸しからお金を借りる場合がほとんどです。多くの農民が作物の収穫が終わる10ヶ月や1年を単位としてお金を借りるため、月10%以上の利率というのは、結局年利100%以上という高利です。つまり借りたお金が100ドルだとすれば、200ドルを1年後には返さなければならないのです。
返済できなければ、もちろん担保として土地や家を取られてしまいます。
カンボジアの農業は天候に左右されやすいため、この高利貸しからの借金を返済できずに土地や家を取られ、結局農民が農業をする土地もなく、住む家も無くなり、貧困から抜け出す機会さえも奪われてしまうことが、農村では頻発しているのです。一方のお金持ちは、何もしなくても貸したお金が倍となって1年後には返ってくるのですから、こんなに楽なことはありません。貧富の格差は拡大するばかりです。

そこでこの村では、貧困層を中心に住民組織を設立し、その中に村銀行を設立しました。住民組織は100家族がメンバーとして加盟し、村人自らが選んだリーダー、副リーダー、書記によって運営されます。本会からマイクロクレジット制度の原資を村銀行へ渡し、その制度に則ってリーダーら3名の役員を中心に、村人たち自身が運営し、各メンバーへそれぞれ50ドル、月2%で6ヶ月間の融資をしました。

回収の結果は、97%の返済率。多くの銀行やNGOはこの数字だけをとって、マイクロクレジットがうまく運営されていると言いますが、本会がこの制度を導入した理由はあくまでも貧困削減。どれだけ生活状況がよくなったかを見なければいけません。実際昨年のこの村での作物の収穫は、ここ10年で最悪といっていいものでした。村人の大半が農業に従事するこの村では、ほとんどの村人が、融資をとうもろこしやキャッサバ、大豆、豆などの栽培に使用しましたが、まさに収穫、という時期に降った大雨により、それらの作物はすべて台無し。村銀行を運営する住民組織は、ここで重要な決定をしました。村人のほとんどが作物の失敗によりお金がない状況を考慮し、返済期間にこだわらず、返済を先延ばしにすることを認め、返済を強制しませんでした。この制度を運営していたのは本会ではなく、またビジネスで儲ける必要のある銀行が運営するのとは明らかに違うやり方でしたが、このような柔軟性はまさに僕たちの望んでいたことでした。しかし無担保で、しかも返済期間に返済を強制せず、また大不作であったにもかかわらず、返済を先延ばしにしたのはわずか2家族。返済率が97%以上というのには驚きです。本当に大きな借金を抱えた人でさえ、国境を越えてタイで労働者として働き、そこからお金を送って返済する人もいました。

この制度は、返済しても2%の利子のうち1%が増額されて、次年度すぐに再融資を受けられます。残りの1%は村銀行を運営する住民組織のリーダーや副リーダー、書記の3名の役員の報酬として村のなかで還流します。3名は、住民組織の役員としての仕事と収入を得られます。NGOや銀行が管理するマイクロクレジットとは違い、自分たちの資金として使うことができるのです。2%の利子も村人たち自身の話し合いで決められたことから、村人たちのこの制度への信用と期待、そして責任感が、返済率の高さにつながったのだと思います。自ら変えよう、変わろうとする人々は強い。多くの国際機関やNGOが活動し、援助慣れしたカンボジアの人々の中にあって、この村の人々は、自分たちでお金を出し合い道路を整備したこともあるといいます。お金もない、貧しい、政府が何もしてくれない、NGOが援助してくれない、不平不満は言うのは簡単ですが、それだけでは何も生み出しません。
そんな中で、自らが変革の主体者となろうとするオッチョンボック村の村人からは、大きな勇気をもらいました。

残念ながらマイクロクレジットを利用した村人たちが失敗した、ハイリスク、ハイリターンの農業の問題、これについては次号で書きたいと思います。

江角泰(えずみ たい)

江角泰(えずみ たい)氏
NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス中学校建設プロジェクトも担当中。

- カンボジア地雷除去支援 - 2009年6月発刊 Vol.22

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