前回は「生命があらゆる面で十全であるためには、この母なる大自然に従って生きなければならないのである」ということから医食同源、いったい何を食べたらよいのでしょうかという問題提起で終わってしまいましたが、今回はその私なりの意見を述べていきたいと思います。
まず第一にヒトと人ということから考えてみたいと思います。
ヒトの食性と人の食文化ということですが、何が違うのかわからない方もいらっしゃるかと思います。
ヒトは霊長類の進化した人類としてのヒト、人は人間としての人、そしてその食をみてみます。
キツネザルなどの原猿類からニホンザルやカニクイザルなどの猿類、ゴリラ、チンパンジーなどの類人猿、そしてヒトという人類へと霊長類は進化してきている訳ですが、その食性については、原猿類は動物性食品が多いのに対し進化すればするほど植物性食品が多くなっていることがわかります。
ゴリラやチンパンジーはほとんど植物性食品を食しています。その流れからいきますと霊長類の頂点であるヒトは完全植物性食品を食べることが望ましいのではということがわかります。
しかし人は火を使い道具を発明しいろいろな形で調理することの文化を得てきました。
人はつきあいでお酒を飲みステーキを食べるという風にヒトの食性とは違う方向への食が築き上げられてきたのです。
この過剰な行き過ぎが人の自然治癒力を失わせ、根本的な病気の源になるであろうことは言うまでもありません。
第二に「食」を歯の数や種類から考察してみますと切歯という前歯、犬歯という三番目の尖った歯、臼歯という臼状の歯のそれぞれの役割は、一番前の前歯は果物のような食べ物を、二番目の前歯は野菜や海藻類、三番目の犬歯は肉類などの動物性食品、四番目以降の臼歯は種のようなもの、ひえやあわや米などの穀物を食べてきたということです。
またその数の比から切歯:犬歯:臼歯はという風に食べる割合は、8本:4本:20本ですから野菜や海藻類や果物を25%、動物性食品を12・5%、穀物を62・5%であり、人間の正しい食べ物は臼歯が多いのだから、穀類が主食で、少量の野菜が副食であることが基本になるのがわかります。過度な動物性食品の摂取が病気を招くことがここからもわかります。
第三に人間は人間が生活している環境において取って食べることのできるものを食べるのです。
北ヨーロッパのように寒いところでは、生息する植物が日本のように四季があるところと全く異なり、イネなど穀類がほとんど育たないため、その土地の土壌にあわせたものを育てたり酪農などをして、その環境に人間が順応してきたことがあります。
何千年も酪農を主としている北ヨーロッパの人達は、85%の日本人が3歳でほとんど活性がなくなる唾液の中のラクターゼという乳糖を分解する酵素を成人になっても持っているので、乳製品を摂ってもあまり害がないようです。
このように地球の中で住んでいる場所が違うことにより、その種族の食べ物が違い、それにより人間の骨格や性質が異なるのですが、異文化のものを過剰に食べ合わせることによっても、多少なりとも病気が引き起こされるのではないかと推察される訳です。
他にも色々お話ししたいのですが、続きは次号に記すとして、昨今、世界中の人たちは日本食が良いということを知りつつありますが、日本人は何故日本食を捨ててしまったのでしょうか。戦争に負けてしまったことから始まり、高度経済成長を遂げ、豊かすぎることが当たり前に成った環境や、核家族化したために代々その家系の伝統を引き継げなくなってしまったことなどに関係があるように思えます。
次回は日本人としての「食」をもうちょっと幅を持たせ具体的に、すすめてみたいと考えております。
田中 利尚
田中 利尚氏 歯科医師・整体師 日本抗加齢医学界専門医 国際統合医学界認定医 「咬合(かみあわせ)を制する者は歯科をも制す」という、歯科医学の見落とされている最も大切な力学的調和という根本理論に触れ、かみあわせを追求。しかし身体が変位していると良いかみ合わせを構築できないところに西洋医学の限界を感じ統合医療を目指し東洋医学(整体)を勉強。 顎が痛い、お口が開かない、首肩の凝り、腰痛、うつ病までを含む顎関節症の治療にも取り組んでいる。 「健康は歯から」を確信している。 |