前号では、電磁波そのものについて説明しました。今号では、電磁波のもう少し詳しい特性と、それにまつわる少し奇妙な現象について、考えてみたいと思います。
電磁波は周波数によってその性質が大きく変わります。低い周波数帯の電磁波は、空にある電離層で反射され、遠くまで届く特性があります。短波ラジオで遠い海外のラジオ放送を聞く趣味をもつ人もいました。現在、携帯電話で使われている周波数帯は、大別すると二種類あります。2.4GHz(ギガヘルツ)程度の周波数帯は直進性が強く、ビルの壁などに当たると反射してしまうため、あまり遠くへは届きません。もう一つの周波数帯700MHz〜900MHz(メガヘルツ)の電波は、反射もしますが、建物などがあると回り込む性質があるため、地下街などでもよく届きます。アンテナの数を少なくできるため、「プラチナ・バンド」と呼ばれています。携帯電話会社がこぞって獲得を競っている周波数帯です。これくらいの電磁波の知識があれば、新聞の記事などもより理解しやすくなると思います。
理路整然と話をしていても、理屈どおりにいかないのが世の常です。人のアレルギー(免疫システムの過剰反応)は、さまざまなものに対して起きますが、電磁波も例外ではありません。電磁波アレルギー、あるいは電磁波過敏症と呼ばれる状態の人は存在します。どれくらい過敏かというと、例えば、電子レンジで加熱したものを口にできない人もいるそうです。理論的には、電子レンジの使用後に「電波が残ってる」といった状況は、原理的にありえません。しかし、現実にそういう人がいるようです。(『脱・電脳生活』より)
過敏症の方々の存在は、電磁波に対する感受性が人によって違うことを示しています。つまり、電磁波が危険だと一概に言っても、すべての人にとって、いますぐ危険とは限らない、ということです。過敏症の方は適切な対策を取るべきですが、特になにも感じない方が、無理に心配する必要はありません。
電磁波でガンになるという説もありますが、その特定はとても難しいのが現状です。ガンについては、一般的に左のような要因が挙げられています。
生活圏にある化学物質(アスベストなど)、放射線被爆(原発など)、遺伝、ストレス、加齢による遺伝子の変化、生活習慣(タバコ、飲酒、食生活、運動不足)、ウイルス(ピロリ菌など)。
しばしば健康雑誌などでは、「ガンは携帯電話の電波でなる」「ガンはウイルスでなる」などと、あたかも原因が一つだけであるかのように断定している記事を見かけることもあります。しかし、実際には複数のありふれたものによる要因が絡み合っていると指摘されており、原因を特定することは非常に難しいことを知っておくべきでしょう。
医師のなかには「電磁波で加熱したものは食べるな」と公言する人もいますが、医師は物理学に弱い人が多いと感じています。電子レンジで加熱すると電磁波によって水分が振動し、摩擦熱が生じて温度が上がります。ビタミンCが熱に弱いのは事実ですが、それは電子レンジだからではありません。コンロで加熱しても同様に壊れます。むしろ、水は電子レンジにより激しく揺さぶられると、水のクラスターがちぎれて細かくなるという点が指摘されています。電子レンジにかけた水はクラスターが細かいので体に染み込みやすいのです。顔を洗ったり、飲むといいという話もあります。
もしさらに詳しく知りたい方は、環境省のレポートを参照されるとよいでしょう。電磁波を測定するための機器はさまざま出ていますが、電場の測定単位がV/m(ボルトパーメートル)のものを選んでください。磁界も測定できるものもありますが、こちらの単位はμT(マイクロテスラ)やmG(ミリガウス)が使われているものを選んでください。