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転ばぬ先の栄養学

【Vol.28】カルシウム不足の脅威

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 数え切れないサプリメントが氾濫する今、他のサプリメントを摂る前にカルシウムの摂取をお薦めするにはふたつの理由があります。まずは、日本に暮らす人々は国土事情から宿命的にカルシウム不足を強いられていること。その上に、カルシウムの吸収を阻害する加工食品が氾濫し、ますますカルシウム不足に陥っていることです。

 「カルシウム不足は万病のもと」と言っても過言ではありません。人体の約1・5%はカルシウムで、そのうちの99%が骨に貯蔵(貯金)されますが、残りのほとんどは血液中にあり、細胞内にもわずかに存在します。実は、血液中と細胞内に存在する微量のカルシウムこそが我々人間の生命に決定的な影響を与える重要な働きをしています。例えば、骨や歯を形成する、筋肉の収縮と弛緩をコントロールする、神経の興奮を抑える、細胞内の体液を弱アルカリ性に保つ、血液を凝固させ止血作用に関与する、細胞代謝を活性化する、免疫力を高める、ホルモンの分泌を調節する、多くの酵素を活性化するなどです。

 カルシウムは日々摂り続けなければ不足しますが、重要な働きをするカルシウムが血液や細胞内で一日たりとも不足状態に陥らないように、生命維持のための特殊な調節機能が人間には備わっています。摂取不足が起これば骨を溶かし、血液や細胞内の濃度を補うのです。ということは、摂取を怠ってきた人はカルシウム貯金が少なくなる一方ですから、骨はスカスカで脆くなり、骨粗鬆症や脊柱側彎症になってしまうのも当然のことといえます。「後悔先に立たず」ではありませんが、日々怠ることなく(骨を溶かさず)毎日の食生活にカルシウムを上手に取り入れ、家族全員が不足状態に陥ることのないよう心がけましょう。

 カルシウムは高血圧、動脈硬化、糖尿病のインシュリン分泌、老人性痴保症、子供の成長、神経の安定、女性の健康維持などに大きく関わっています。これらについては次号以降にお話しします。

山口清道

山口清道氏
日本予防医学研究会理事、フルボ酸・腐食性物質機能研究会会長。大手企業や新聞社、薬剤師会、教育委員会その他の各団体が主催する講演会で講師を務め、『食品破壊の実態』『カルシウム不足の脅威』などをテーマとする講演回数は1000回を越える。
現在は講演活動を休止し、食品科学研究所・BAOBAB代表、株式会社バオバブ代表取締役として、イメージ商品が氾濫する現代における、ほんもの食品の研究開発に取り組む。

- 転ばぬ先の栄養学 - 2009年12月発刊 Vol.28

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