【Vol.58】太陽活動と経済活動の相似

　さて今回は太陽の話から始めたい。2012年4月、国立天文台が重大な発表をした。これまで太陽では、約11年周期で磁石のS極とN極がひっくりかえるような磁場の反転が起こってきた。しかし、現在プラス極が2つと、マイナス極が2つの合計4つの極ができている。これは、今から約360年前の17世紀に半世紀続いた寒冷期と同じ太陽の状態だという。つまり、地球は温暖化していくのではなく、寒冷化していく可能性があるのだ。

　1645年ごろ、ロンドンのテムズ河は凍結し、長らく作物の不作が続き、経済もまた停滞した。それから360年の時を隔てて、今同じ現象が起ころうとしている。それは、太陽活動の相似だけではなく、経済活動にもまた歴史上2度目のグローバル化がさらに大きな規模で起こっている。

　エコノミストの水野和夫氏の指摘によれば、当時の先進国はイタリア諸国やスペインなどで、ここに世界の富が集中していた。ドイツやイギリスは今でいう後進国にあたり、何とか先進諸国の生活水準に追いつこうともがいていた。1650年以前は、小麦の値段は250年間にわたり、平均するとプラス、マイナス10％しか変動することはなかったのだが、後進国の生活水準が上がると、小麦の価格は一気に2倍以上になり、それ以降2度と下がることはなかった。つまり、米が小麦にあたるなら、ヒエや粟がライ麦にということになるのだが、それまでライ麦を食べていた庶民が、一旦小麦のおいしさを知り、小麦を好んで食べるようになったということである。

　現在世界で起こっているグローバリゼーションもまた同じである。アメリカやヨーロッパ、日本などの10億人の先進諸国の生活水準に、BRICsなど28億人が追いつこうとして、資源の奪い合いが起こっている。

　石油や食料の価格は、今後数十年かけてBRICs諸国が先進国と同じ生活水準に到達するまで下がることはないと歴史は教えている。　石油や鉄、食糧などの資源の価格が何倍にも上がると、当然工業製品の原価（変動費）が上がるので、製品の価格が高くなり、やがて競争力を失うので、ますます物を売ることで利益が出にくくなる。ちなみに、2002年ごろまでは、石油は1バレルあたり平均20ドルぐらいであったのだが、それ以降は1バレル70～100ドルになっている。これが今のデフレの理由である。

　16世紀の英国はエリザベス1世が長らく国を治め、スペインの無敵艦隊をアマルダの海戦で破り英国繁栄の基礎を築いた。その後、世界の覇権を握り、植民地から安く資源を手に入れることで資本主義は成熟していった。しかし、地球上に資源を安く手に入れられる植民地はもはやどこにも存在しない。よって、経済がかつてのように成長していくことはないだろうから、政府も経済成長や増税よりも、緊急に財政の緊縮化をしないとまずい状況である。しかし、当時もスペインやフランスは生活のレベルを変えることができず、つまり支出を減らすことができず赤字を積み重ねたあげく財政破綻した。

　話を元に戻すと、今、太陽に起こっている変化と、地球上の経済活動の変化が同調している様にも見えるのだ。資本主義が行き詰っている、と見ることもできるが、同時に地球上の人々の生活が同じ水準に近づこうとしていていると見ることもできる。経済格差を乗り越えて、つまり今の経済の停滞を奪い合いではなく、お互いに少しずつ与えることで乗り越えることができれば、人類はさらに進化することができると信じたい。

　実は、太陽には好調も不調もなく、人が勝手にそう見ているだけである。これからしばらくは厳しい時代が続くのは間違いないが、この試練を乗り越えた時に、かつて英国が石炭から石油へ、新しいエネルギーを手に入れ、産業革命を成功させたように、原子力に代わる本当にクリーンなエネルギーを手にすることができるのではないだろうか。人の意識の進化は、必ず技術の進歩に現われると思うからである。次回は感情と意識の進化について。

矢吹三千男

矢吹三千男氏生来の虚弱体質で16歳の時に十二指腸潰瘍を患い、ヨガと占いにはまる。二十歳の時には身長が175センチで体重は50キロ。いつも複数の薬を持ち歩く。様々な健康法を実践するもほとんど効果なく、ようやく食養生で体質改善に成功したのは30代も半ばを過ぎていた。その時、生まれて初めて「健康」を実感する。製薬会社勤務などを経て、その後バッチフラワーに出会い、現在（株）プルナマインターナショナル代表。著書『感情のレッスン』文芸社刊