円通毉療の毉は医ではありません。
医は元は醫であり、そのまた元が毉で、これが医の最古字ですが、円通毉療ではこの毉の字を使います。
医や醫そして毉については諸説ありますが、毉→醫→医という時系列の移り変わりを踏まえた時に、最も理解しやすいと思うのが、以下のような解釈です。
医は石の鍼である矢じりを器に入れた形で謂わば物質的手段を、殳は神降の時に発せられる警蹕などの特殊な声音を発する姿勢で謂わば宗教的手段を、酉は酒→百薬の長・漢方薬を、巫は巫女の巫ですが天と地そして自我と真我を仲介することを、それぞれが表すものと考えます。
時代の移り変わりと共に、毉の巫が酉に変わり、そのうちに酉が外れ、殳も外れて医だけになり、現在の科学を基礎にした物質的手段主体の医学・医療になったのです。
毉療は温故創新の原点回帰
円通毉療における毉療は、医療の原点回帰でもあります。
ただ、単なる原点回帰ではなく、毉療の原点と本質を踏まえつつ現代西洋医学や現代東洋医学を含めて現代に一円融合する温故創新の原点回帰です。
とにかく科学(科=とが=罪の学でもある)的であることが何よりも優先されてきた現代西洋医学、本来の東洋医学の土台である道教・儒教・仏教の三教、特に『易経』の思想哲学が抜け落ちた現代東洋医学から脱皮して、本当に人々の健康と幸福に資するようにと構築されたのが円通毉療です。
その円通毉療の最重要ポイントは毉という字の土台である巫で、二つの意味があります。
一つは、巫の字の工の部分を「天と地に繋がる」、つまり、人間は宇宙大自然と繋がった存在であることを自覚することです。
これが天人合一で、本来の東洋医(毉)学最大の眼目です。
もう一つは、二つ並んだ自我と真我の二人は隔てられているようでも本来一つであることに氣付くことです。
これは、土の上で向かい合う自我と真我(坐)は本来は單であることを示す(禪)坐禪の意味にも通じます。
白隠さんの『坐禪和讃』に「衆生(自我)本来仏(真我)なり。
水と氷の如くにて、水を離れて氷なく、衆生の外に仏なし……」とある通りです。
以上の二つの意味を持つ巫を土台にするのが円通毉療です。
息と食が循環し生かされている
私達が生きているのは、息と食によります。
息や食が止まる時、それは死を意味します。
息は基本的に天に近い鼻から空氣(空の氣:酸素)を吸い込み、体内で新陳代謝の後、口から二酸化炭素を呼出します。
他方、食は地に近い口から地の産物を摂り入れ、やはり体内で新陳代謝の後、二便(植物に対しては生産物)として地に排泄します。
このように、息と食が円通循環するのです。
息も食も共に自我が意識的に調節することも可能ですが、基本的には真我によって無意識的に行われています。
自律神経(自ずからのリズムで神の経[糸])によって、私達は本当は「生かされている」のです。
息と食、何れも本能ですが、その営みたるや人知を超える絶妙なもので正に神業。
天の父神由来の息と、地の母神由来の食が私達の身体で生きているのです。
母なる地の源は、字の中に母の字が入っているように海(産み)で、海底火山の噴火によって山ができ里ができ、海・里・山の幸が生み出され、それが私達の身体になります。
父なる天の源は、宇宙(uni [一つの]verse[回るもの])ですが、宇宙とは無限絶対無始無終の存在で神のことです。
その神の御心がspin するSpin・rit、つまりSpirit で、これが出入するのが息=呼吸、Respiration です。
Expiration が呼、Inspiration が吸です。
旧約聖書の創世記に神が「土塵で人(アダム)を形づくり、鼻に神の息吹を吹き込んだ」と記されているのも息と食のことを記しているのだと思います。
因みに、呼吸のリズムは海の波のリズムとシンクロしており、その海の波のリズムは地球や月や太陽さらに銀河系といった宇宙の自転・公転という回転コマ運動に由来します。
息と食は元を辿れば一体のものなのです。
六角田中医院院長 医師
元・世界中医薬学会聯合会 常任理事
田中 実(たなか みのる)
1998年六角田中医院開業。
伊藤良・森雄材両師に師事、東洋医学(中医学)の啓蒙に携わる過程で東洋医学の理解には道教・儒教・仏教、易経の理解が不可欠と気づき、四書五経・古神道・言霊・数霊・密教を含め研究に取り組む。
「生命・病・健康・癒し・自然治癒力・科学・宗教・教育・医師とは何か」等の諸テーマの一元的解明を試み、独自の医療哲学を確立。
2007年内科認定医、東洋医学専門医、認定産業医を辞し、自覚を込めて「生命毉(円毉)」と称す。
生命毉療・円通毉療を実践し、修身斎家治国平天下をめざす。
六角田中医院(漢方専門)京都市中京区六角通東洞院東入オフィス5ビル3F
075-256-0116(原則予約制・水曜休診)
HP:
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