10月号では健康の本質が円通にあることを述べましたが、もう少し具体的にお話をして円通の考え方、そしてそれを図示した天人相応太極円通図が如何に大切かについてお話したいと思います。
例えば、「体を温めよう」というのがありますが、六角田中医院では天人相応太極円通図・万病相火一元論に基づいて「頭寒足熱が大切」と説きます。世間では誰か名前の通った方が「体を温めよう」というと、みんな右へならえで只々「体を温めよう」になってしまって頭寒が抜けてしまうのです。「頭を冷やせ」というように頭は冷にして静(冷静)である方がよいのです。陰陽の発想、それを詳しく展開した天人相応太極円通図の発想が欠如しているからです。
子供が寝て頭のスイッチが切れると手足が温かくなります。これは頭寒足熱です。緊張して上がると頭が真っ白で冷や汗をかき、反対に手足が冷えてガタガタ震えたりトイレが近くなります。これは頭熱足寒です。だから「落ち着け」となるのです。
煩悩の「煩」の字は、頭に足が付いた象形を表す頁が火で燃えていることを、「悩」は脳の象形である右側の旁で心を使うことを示しますが、これが実は病や老化の基本形になるのです。若い頃の写真を見ると、顔が締まって髪も黒くてふさふさですが、年と共に顔が膨らみ髪は薄く少なく白くなりますが、これは頭熱で焼けるからです。脳血管障害や心臓血管障害が年と共に増加するのも、脳が焼け心臓(部分即全体の法則で腹部で脳に当たるのが鳩尾の処で心臓の処です)が焼けるからです。詳細は別の機会に述べますが、ほとんどの生活習慣病はこのようにして起きるのです。基本的なことは05年の学会で発表し、07年の『生命毉療は円の毉療』等にまとめています。
要するに、病を考える時には「陰陽」の考え方が根本的に大切なのです。そもそも病とは、外枠の疒の冫は二水(にすい)で陰、内側の丙は火の兄(ひのえ)で陽で、陰陽のアンバランスのことなのです。天人相応太極円通図を観てください。日常生活ではついつい左側の白い勾玉部分が過剰になり頭熱に、その反動で足寒になりがちです。だから、頭寒足熱が大切なのです。上虚下実(じょうきょかじつ)といってもいいです。この足熱は、「足に氣血を満たそう」ということですが、どうも満足という言葉は其処に由来するのではということで、考察を加えて16年の『円通毉療の日常診療』の中で「満足療法」として発表したのです。
日本人って素直で素晴らしいところがあるのですが、ついつい単純に雷同するところがあります。「体を温めよう」となると頭寒足熱や煩悩や満足といった伝統的な言葉があるのに、何でもかんでも温めようになりがちです。「頑張らない」という本が売れると何でもかんでも頑張らないとなり、頑張ろうという言葉を使うと白い目で見られかねません。「水飲み健康法」が話題になると、体格や男女の別や体質や気候や運動量に関係なく、2リットル飲もう! みたいになってかえって漢方でいう水湿・寒湿の病になったりします。健康や病の本質であるバランスのとれた陰陽で円通する、という本来の発想が欠けているからです。
天人相応太極円通図はとてもシンプルなのに、観方次第で多くのメッセージを見つけることが出来ると思います。
六角田中医院院長 医師
元・世界中医薬学会聯合会 常任理事
田中 実(たなか みのる)
1998年六角田中医院開業。
伊藤良・森雄材両師に師事、東洋医学(中医学)の啓蒙に携わる過程で東洋医学の理解には道教・儒教・仏教、易経の理解が不可欠と気づき、四書五経・古神道・言霊・数霊・密教を含め研究に取り組む。
「生命・病・健康・癒し・自然治癒力・科学・宗教・教育・医師とは何か」等の諸テーマの一元的解明を試み、独自の医療哲学を確立。
2007年内科認定医、東洋医学専門医、認定産業医を辞し、自覚を込めて「生命毉(円毉)」と称す。
生命毉療・円通毉療を実践し、修身斎家治国平天下をめざす。
六角田中医院(漢方専門)京都市中京区六角通東洞院東入オフィス5ビル3F
075-256-0116(原則予約制・水曜休診)
HP:
http://homepage3.nifty.com/rokkaku-tanaka/