女性は16歳になると結婚できるが、男性は18歳にならないと結婚できない!
私が男女の婚姻開始年齢が異なることを知ったのは、確か小学生のころだったと思います。そのとき私は、こうした男女間の制度的な差異の存在を知り、驚きを覚えるとともに、その理由について、漠然とした疑問を抱いたことを記憶しています。もっとも、そのときには、自分の抱いた疑問について深く掘り下げることまではしなかったと思います。
その後、私が高校生になり、女性の婚姻開始年齢である16歳に達したときには、16歳や17歳で結婚することなどまったく考えられませんでした。また、自分の同級生にも、16歳や17歳で結婚する女性は誰もいなかったように思います。そのため、私は、このころ、婚姻開始年齢の男女の差異について考えることはほとんどなかったように記憶しています。
民法731条と憲法14条
ところが、弁護士を目指して法律を学び出したころから、私は男女の婚姻開始年齢の差異について、再び疑問を抱くようになりました。
一般に、法律の規定には、その規定が設けられる合理的な理由が存在するはずです。そして、私が法律を学び始めたころの民法731条には、「男は十八歳に、女は十六歳にならなければ、婚姻をすることができない」と規定されていましたが、私は、この規定に合理性があるとは感じられませんでした。
この規定が定められている理由について調べてみると、「男女間で心身の発達に差異があるため」などと説明されていましたが、婚姻開始年齢の差異を正当化するほど、男女の心身の発達に差異があるとは思えませんでした。
また、憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と規定しています。そうすると、男女の心身の発達にある程度の差異があると仮定したとしても、当時の民法731条は、「性別」による差別に該当するため、憲法違反なのではないだろうか、私はこのように考えるようになりました。
民法改正
当時の民法731条の規定が憲法違反であるかどうかはさておき、この規定に合理性がないことについては、国内外から多くの指摘がありました。
例えば、1996年には、法制審議会総会において決定された民法改正案要項において、女性の婚姻開始年齢を18歳に引き上げるべきであるとされました。また、2008年には、国連の自由権規約委員会が、日本に対して、男女の婚姻開始年齢の差異を解消するよう勧告しました。さらに、日本は、その後も、国連の女子差別撤廃委員会や児童の権利委員会から、婚姻開始年齢を男女とも18歳とするよう勧告を受けました。
こうした指摘を受け、2018年、ようやく民法731条が改正され、「婚姻は、十八歳にならなければ、することができない」と定められるに至りました。そして、この改正民法731条は、今年の4月1日に施行され、これにより、男女の婚姻開始年齢の差異はなくなりました。
16と18のあいだ
改正前民法731条は、表面的には婚姻開始年齢の男女の差異を定めたものに過ぎませんが、その背後には、この社会で広く、深く共有されてきてしまった性差別的な眼差しが存在するに違いありません。
16と18という僅か2歳の差異のうちに、重要な社会的課題が存在しているのです。