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インタビュー取材しました。

護りながら 生かしていく認定NPO法人 テラ・ルネッサンス アジア事業担当・江角 泰氏

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2009年にラオス支援活動として設立したプレマシャンティスクール。
そのとき現地で交渉や建設の指揮をとってくださったのがNPO法人テラ・ルネッサンスです。
その創設者鬼丸氏インタビューの続編として、カンボジアに駐在しているアジア事業担当の江角氏に、プレマシャンティスクール設立について、また、現地での支援の実際についてお話を伺いました。

江角 泰(えすみ やすし)
1981年生れ。宮崎公立大学在学中にカンボジア・スタディツアーに参加。『地雷ゼロ宮崎』にて活動。卒業後、立命館大学大学院にてカンボジアの平和構築を研究する傍ら、NPO法人テラ・ルネッサンスにてインターン。卒業後、同団体に就職。2008年よりカンボジア駐在。カンボジアで地雷埋設地域の脆弱な障害者世帯の生計向上事業や村落開発支援事業、ラオスでの養蜂事業等を実施中。

 

内戦後のバブルで急激に変化したカンボジア

江角 そうです。大学院の研究でも、テラ・ルネッサンスのインターンとしても、何度もカンボジアに来ていましたが、2008年に正式に駐在となりました。テラ・ルネッサンスが取り組む問題でもありますが、私自身が興味のあるところでもありました。また、当時のメンバーの中で、カンボジアのことを一番よくわかっている状況ではあったと思います。

――どんなことに取り組まれましたか?

江角 活動内容は除隊兵士の生活支援です。別の日本のNGOインターバンドが2000年くらいからカンボジアで活動していて、テラ・ルネッサンスと共同で活動することになり、事務所も共有させてもらいました。紛争中に兵士の方がたくさんおられ、内戦が終わり、余剰の兵士がリストラされていくなかで、紛争中に負傷した兵士(地雷被害者が多い)が辞めた後に生活していくのはかなり困難だったのです。

――社会復帰の支援ですね?

江角 そうです。ただ、元兵士ではない庶民の地雷の被害者で、かなり厳しい生活をしている方もいらっしゃったので、そういった方も対象にできないかという課題もありました。反対勢力、たとえばクメール・ルージュのポル・ポト派の人たちや、元兵士ではない女性たちなど、そういう人もサポートすべく、除隊兵士の支援は一旦区切りをつけて、新しい形での支援を開始しています。さまざまな環境で育ってきた人たちがいらっしゃるので、できるだけその方に合う形になるよう、いくつかの訓練をしています。例えば魚を捕る技術はあっても網がないので取れないという状況であれば、網を支援することで魚が取れますよね。そういった方法もあります。

――活動するなかでどんなことが大変ですか?

江角 カンボジアではコミュニティ単位での支援が困難だと言われていましたが、実際に難しいですね。特にお金が絡むことを共同で管理する場合、どうしてもグループに分かれてしまったりトラブルの原因になったりします。
――戦争が終わっても、今度は貧富の差が広がり経済的支援が大変だとか。
江角 そうです。先ほどの話にもつながりますが、カンボジアもラオスも、今、村単位、コミュニティ単位で支援しようとしています。ラオスでは村単位でまとまりがあり、みんなで協力する方向にあるのですが、カンボジアでは結束がさほど強くないのです。実は、2005年ごろから急激に経済発展したカンボジアは、リーマンショックの2008年までバブル期でした。土地に価値があるとは思われていなかったのが、土地を購入して数ヶ月置いているだけで20~30倍になるほど高騰するのです。それは農村の人たちにも大きな影響を与えました。余っていたはずの多くの土地は、富裕層に買い占められ、誰もが土地を欲しがりお金の話になる。昔は相互扶助があったのですが、拝金主義のようになってしまいました。そのなかで、どうやってお互い助け合いながら、いいコミュニティをつくっていくのか。それが難しいことの一つですね。

 

本当の豊かさとはなにか考えさせられるラオス

江角 大きく違うと思います。もとは差異はなかったのでしょうが、ラオスの方がいい意味で経済発展が少し遅れているのです。カンボジアの場合、内戦の影響が大きく、一気に自由経済となり、経済発展のために急激な外からの投資で一気に格差が広がってしまいました。土地の値段のバブルもその象徴の一つで、そういったなかでカンボジアの伝統的なものであったり、お金にならない素晴らしい文化が消えていってしまった状況があります。ラオスは現在もそうですが社会主義国家で、経済の流通や外国人の入国を制限してきた経緯があり閉鎖的でした。2010年代に入ってオープンになってきましたが、伝統的な自分たちの暮らしを継続してきたので、それが地方の村では持続可能な形として残っています。
東南アジアのカンボジアとラオスは同じ最貧国と言われますが、そこは疑問です。ラオスに行くと、そんなに貧しいのだろうかと。どちらも小さな国で経済的には確かにどちらもお金は持っていません。世界銀行が国際貧困ラインとして定めた、「生活費1日1・90ドル」というラインがあり、1日1ドル以下で生活している国を「絶対的貧困層」としていますが、それだけで果たして貧困と言っていいものか。ラオスの人たちは自給自足できています。お米も野菜も作り、きのこや木の実も豊富です。家畜を飼い鶏も牛もいっぱいる。消費しなくても、豊かな自然が残っているので生きていけるのです。
一方、カンボジアでは、作物を自分たちで作っておらず、お金がなければ食べることができないので、出稼ぎに行ったりします。それは単純に貧困の範疇に入るのかもしれません。

――ラオスはむしろ豊かだとも言えますね。他国が決めることなのかどうか。

江角 そうなんです。本人たちが「貧しい」と思っているのかどうか疑問です。伝統的な手法は、時間がかかったり非効率であったりすることもあるのですが、実は、長い目で見てみると、そのほうが自然と共存でき、持続可能だったりするのではないでしょうか。

――そのラオスにあるプレマシャンティスクール、現在はどんな状況ですか?

江角 建設してから10年目になります。当時は小学校を卒業しても、中学校が15キロほど離れており険しい山道のため、通うのは難しい状況だったので建設されたものです。現地の方との話し合いなどカンパニオン村に決まる過程に関わらせていただきました。現地政府の中学校として建設した学校ですので、教育省が管理して運営をしています。毎年見にいけているわけではありませんが、先生方がきちんと管理して授業をやっていただいています。生徒もすごく真面目です。先生たち、特に校長先生がきれいに管理されていてゴミもありません。建設前に不発弾の撤去作業をしたので、校舎の土地は樹木も生えてなかったのですが、校舎の建設後、先生と生徒たちが中心になって、この土地のすももや桃の木を、日本の桜のように学校の周りに植えてくれました。それが結構大きくなって、2月くらいには花が咲いています。

 

現地の文化や伝統を護りながら生かす

江角 ラオスもカンボジアも、素晴らしい文化があります。自然と共生する姿を見て、これを壊してまで経済発展させる必要があるのかと。ラオスも少しずつ変わってきており、すぐに現金収入になるトウモロコシの栽培などが盛んになってきました。望めばこれからも自給自足の暮らしを持続できるのに、自然が破壊され、一面トウモロコシ畑に変わっていっている。プレマシャンティスクールを作ったノンヘッド郡の郡長さんや現地政府のトップの人と話をすると、それはよくわかっておられるようで、森を護りながらも、村人はお金も欲しいという状況があると。
そこで新たな事業を始めています。一つは養蜂の支援です。シエンクワーン県に伝統的に養蜂をしている地域があり、それを発展させて技術や知識を学びながら現金収入にも繋がればと考えています。養蜂なら自然も破壊しませんよね。森も護りながら養蜂で現金収入に繋がればと始めたところです。

――日本になくて現地にあるものは?

江角 一つは人の繋がりです。シエンクワーンでは自家製の焼酎を作る家が多く、来客に振る舞います。中川社長も勧められていました。温かく迎える文化があり、拒絶されたり協力してくれなかったりしたことはありません。
カンボジアは最初に訪れたころ、まだあまり水がきれいじゃなかったので、体調を崩したりお腹を壊したりしたのですが、不安になったことがなくて。なぜかと考えてみると、誰かが必ず声をかけて気を遣ってくれるからなのです。しかし、経済発展とともに変化しています。お金を得た人は自分の財産を守ろうと大きな家を建て、周りを囲い始めています。昔の家は開放的で、みんな出入り自由だったのですが。

――昔の日本の姿ですね。

江角 まさにそうですよね。

――2つの国のどこが魅力ですか?

江角 人々の繋がりを含めた伝統的な文化や、知識や智慧です。しかも、かなり高度なものを感じます。占い師やお坊さんのような方を含め、アニミズム的な信仰というか自然と共生してきた知恵など。今、一緒に働いているカンボジアの農業の先生は「薬草」を使います。病気の治癒にも使いますが、農業にも家畜の飼育にも使います。いわゆる西洋文化においては科学的に証明されていないので、評価がされていないだけではないかと思うのです。

――もしかして日本はそれを学ぶべきかもしれませんね。

江角 本当にそう思いますね。日本でも一昔前には当たり前にあったことなのではないかと。現代社会では科学的に証明されているかどうかが重要ですが、まだまだ科学で証明されていないものは、世の中にたくさんあると感じますし、自然の中で人間は生きてきたのだとつくづく実感しています。
現地の人が知っていること。外から見るとわかること。どちらもあるはずです。現地の人にとって当たり前すぎて価値に気づかない、外からだからこそ見つけられるものもあると思うので、これからも現地の人にしっかり話を聞いて教わりながら進めていきたいと思っています。

- 特集 - 2018年6月発行vol.129

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