ゆるいつながりが大きなチカラになることがある?
コロナ禍になり、人と人のつながりが大切だとつくづく感じ、昨年から月に一度、カフェイベントを開催している。食べながら対話することで人とつながる。目的もなく、効率的でもなく、ただ、その場に居合わせて話す。ゆるくつながるというのがポイントだ。実際に始めてみると、お客さん同士に共通の知り合いがいたり、何年も音沙汰のなかった方が、遊びにきてくれたりしてうれしい驚きがある。最初は夫婦二人で始めたが、いまは友人にランチやデザートを作ってもらうこともある。だれかの得意を実現できるような場でもあればいいなと思っている。一人ではできないことが、だれかと一緒なら勇気が出たりするものだ。
最初はお客さんが数名だったカフェも、4月は開店と同時にほぼ満席。続けていくことで少しずつ認知され、興味を持ってもらえるようになってきた。忙しさのピークが終わり一息ついたころ、店の前がざわつき始めた。向かいに80代のご夫婦が50年以上やっている蕎麦屋があるのだが、そこから黒煙が出ていて、よく見るとオレンジ色の大きな炎が店内に見える。通りがかりの自転車に乗った男性が消防署に連絡し始めた。近くを歩いていた二人組の男性は、店主と知り合いのようで大きな声で話しかけて様子を聞き、「消火器がないらしい!」と私たちに声をかける。すぐに妻がカフェにあった2つの消火器を見つけ、二人で蕎麦屋に向かうと、男性が消火器を持ち躊躇なく店内に入り火を消した。この見事な連携で消防車が来る前に鎮火したのだった。中にいた店主も無事に店の外に出てきた。
しかし、あの黒煙は怖い。私も消火しようとして少し黒煙を吸ってしまったが、その後、なんとなく調子が悪くなった。命の危機を感じることが、いかに人の心身に影響するか、実際に体感した一日だった。ウクライナの人々は報道だけでは計り知れない恐怖なのだろう。身近な場所で上りたつ黒煙を見るだけでもこれほどのダメージを受ける。しかも、自分たちの命が狙われているとなると、想像を絶する不安と恐怖だ。一日も早く平穏な日々に戻ることを願わずにいられない。
数日後、蕎麦屋の様子を見に行った。このまま閉店するのではと気になったのだ。しかし、「しばらく店を休みます 店主」という張り紙があった。ほっとして、元気が出た。いつかまたカフェイベント後に、蕎麦を食べながら店主と話したい。