明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
昨今歯科医院を受診される患者さんの中で、他の病気も治療されていますかという問診をすると特に多いのが、ガンとうつ病です。ガンはもはや三人に一人から二人に一人はかかる時代になってきています。また、結構な頻度で、うつ病を経験したことがある、または現在うつ病や精神疾患などで心療内科を受診し投薬を受けているという方がいらっしゃいます。
最近では、うつ病には脳の中の扁桃体という場所が大きく関係していることがわかってきています。先日NHKの「病の起源」という番組の中で、ドイツで頭の中に直接針を挿入し電気刺激をしてうつを治療する方法が紹介されていました。また、人間の祖先からの環境要因の変化として、うつになってしまう四つのことを挙げていました。それらのキーワードは「天敵」「孤独」「記憶」「言葉」です。人間は狩猟時代、天敵から身を守るために集団で行動していたので孤独に弱く、記憶を支配する海馬と扁桃体が隣接連動しているために、痛い思いをした記憶が強烈に残り、その記憶を言葉で伝えることが出来るようになったために、同じ痛い経験をしなくても同じ感情になり反応してしまうというのです。
扁桃体の活性が上がらないことはうつを防ぐ力となります。人間関係において相手と自分が平等であると認識すると扁桃体の活性が上がらないことがわかっています。大昔、人間が狩猟生活を送っていた頃は、その日に捕った食べ物を皆で分けて生活していました。皆が平等でいられたのです。現代の生活では人間の上下関係が色々なところで存在するために平等でなくなり、扁桃体を刺激してしまう様です。
私は三年程前に、かみ合せの変化による脳内や身体の変化を目で見て解るようにしたかったため、手と足と額に電極を付けて5分程度で体内の検診をする機械を導入しました(SKY ー10)。うつ病に焦点を当てていたわけではなくたまたまですが、扁桃体の変化も見てとることができました。以前「機能と形態」の章で触れましたが、身体の歪みにより、ボディバランスがシンメトリックでなくなり、その結果、歯の噛み合わせが大きく狂ってしまうことも、実は脳内の形態異常を起こし、それが故に血液循環が悪くなり神経伝達物質のセロトニンやドーパミンなどの量が減ることとなり、うつ病や精神疾患が起こるのではないかとも私は考えています。
うつに関しては専門外ですが、身体と心の連動性から軽いうつ症状の軽減を考えると、先ずは胸を開き顎を上げ深呼吸をすることが大切です(下丹田呼吸ができれば尚良いです)。「呼吸」のところでふれましたが、あ~でもない、こ~でもないと考えすぎると人間は呼吸するのを忘れてしまうからです。また、神経細胞を活性するには運動が良いと言われていますので、階段の上り下りをするなど平常時よりも若干心拍数を上げられると良いです。うつの時は運動なんてできるわけ無いと思うかもしれませんが、バランスをみながらできたらよいと思います。心にアプローチするためには身体から攻めるのです。上を向いてスキップをしながらうつ状態で居ることは難しいはずです。もちろん、歯のかみ合わせやボディバランスもとても大切です。
田中 利尚
田中 利尚氏 歯科医師.整体師 日本抗加齢医学界専門医 国際統合医学界認定医 「咬合(かみあわせ)を制する者は歯科をも制す」という、歯科医学の見落とされている最も大切な力学的調和という根本理論に触れ、かみあわせを追求。しかし身体が変位していると良いかみ合わせを構築できないところに西洋医学の限界を感じ統合医療を目指し東洋医学(整体)を勉強。 顎が痛い、お口が開かない、首肩の凝り、腰痛、うつ病までを含む顎関節症の治療にも取り組んでいる。 「健康は歯から」を確信している。 |