前号では癌を遠ざける努力をすることについて書かせていただきました。
できてしまった癌を早期に発見して、有効な治療を施すことはもちろん重要ですが、それ以前に癌や生活習慣病など、コントロールできる疾患については、予防を心掛けることがより重要であると思うのです。
しかし、「癌になったら」の情報ばかりで、予防についてはほとんど私たちの耳には届いてきません。
この原稿を書いているとき、『ちびまる子ちゃん』の作者である、さくらももこさんが乳癌で死去されたニュースが飛びこんできました。
まだ53歳。さまざまな才能に溢れ、多くの人々に愛された彼女の早すぎる旅立ちに憤りをおぼえます。
マンモグラフィーは万能か?
私たちの周りには操作された情報が氾濫しています。
その情報によって多くの人の命が危険にさらされているとしたら。
私たちは自分で考え、判断する力を身につけなくてはいけません。
マンモグラフィーは乳癌の初期症状である微細な異常を発見できるとされていますが、マンモグラフィーを受けるということは「被爆」をするということです。
つまり、検査自体に被爆による発癌のリスクがあるのです。
そのことを自覚しないまま「定期的」に放射線を受け続けた結果、癌ができてしまうという、受け入れがたい結果を招くかもしれないことを理解しておく必要があります。
2009年、米国予防医学専門委員会は受診の不利益が大きいことから40代の女性にマンモグラフィー検診を推奨しないことを決定しました。
また、2014年、スイス医学評議会の委員からなる研究グループが有力医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に「マンモグラフィー検診では死亡率低下の効果はない」と発表しました。
海外では安全性について議論が交わされているのに、日本では放射線を使用する検査への危機意識が感じられません。
そればかりか、マンモグラフィーを受ければ乳癌が見つかり、最悪の事態を免れると考える人が非常に多いことに驚かされます。
日本人女性には向いていない
日本人は乳腺の密度が高い「高濃度乳腺」の人の割合が高く、マンモグラフィーの画像では乳房全体が白く映ります。
癌などの病変も白く映るため、異常を特定するのは非常に難しく、高濃度乳腺の乳房にはマンモグラフィーで異常病変を見つけるのは困難であるといわれています。
特定できない場合、患者にそのことを伝え、他の検査を受けるように指示するべきです。
しかし、高濃度乳腺で判断が困難だった場合「異常なし」と伝えている事実が、相当数存在するというのです。
さらにマンモグラフィー検査は、女性が耐えられる限界まで乳房を圧迫するため血管が破壊され、発見されていない癌細胞を拡散してしまう恐れさえあるのです。
これでは異常が存在した場合、最悪のプロセスをたどってもおかしくないでしょう。
マンモグラフィーで発見できる病変は、すでに相当な大きさに成長している場合が多く、その場合、触診で発見可能なことも多く、この段階なら別の場所に転移していてもおかくありません。
マンモグラフィーは乳癌のスクリーニング(検査による選別)に最適ではないのです。
念のために書き加えますが、決して無関心に放置しても良いと言っているわけではありません。
癌や生活習慣病にならないための食生活を実践し、乳癌については乳房の自己触診を習慣づけ、さらに定期的に医師の触診や超音波検査を受けるなどして、自分の身は自分で守る努力をしてほしいのです。
人任せや氾濫する情報を鵜呑みにせず「自分のこと」として選択肢をCHOICEする姿勢が大切だと思います。