究極の医療は円通毉療

天人相応太極円通図(2)

前回は、天人相応太極円通図が、病や健康を(本来そうであったように)陰陽の法則から考えるうえで、とても大切であることを述べました。まずは個人レベルでの話でしたが、今回は、社会レベルでの病や健康、つまり、社会問題を考えるうえでも大切であることを述べたいと思います。

vol108-13-1.gif

WHOの健康の定義に、「肉体的にも精神的にも社会的にもすべてが満たされた状態」とありますが、社会問題も陰陽の法則からの考察が役立ちます。たとえば、権利と義務です。日本国憲法第25条に「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とありますが、義務を有するとは書かれていません。これは陰陽の法則からは片手落ちと言えるでしょう。

江戸時代屈指の名君と言われた上杉鷹山の影響を受けたとされる、第35代米国大統領のJ・F・ケネディはその就任演説で、「国民よ、国が諸君のために何ができるかを問うのではなく、諸君が国のために何ができるかを問うてほしい」と述べていますが、日本国憲法、そして、国民意識にはこのような視点が欠如あるいは乏しいと言えるでしょう。

個と全体の関係とバランス

朝鮮一の名医と謳われた許浚(ホ・ジュン)は、「人体と国家は同じである」と言いました。個々の細胞は全身のために働き、その全身によって個々の細胞が生かされているように、個々人は国家のために働き、その国家によって個々人が生かされているのです。

そもそも全身は、元はといえば受精卵という単細胞なのです。それが分割して約60兆(最近は37兆)ともいわれる細胞になりますが、あくまで元は一つであり、受精卵がそのまま成人になっているだけなのです。しかも「部分即全体」の法則で、個々の細胞は見かけは役割分担で多種多様ですが、受精卵と同じ遺伝子をもつ同一細胞と見做せます。

国家と国民の関係も、全身と個々の細胞と同じです。もしも個々の細胞間で権利と義務のバランスが崩れ、権利ばかり主張する細胞が現れて増殖すれば、それは言わば癌細胞の増殖のようなもので、やがて全身が死に至るでしょう。

自分と他人または社会の関係において、権利と義務と似ているようで全く非なる言葉に感謝と報恩があります。自分が他人や社会から尽くしてもらうことがありがたいからこそ(感謝)、自分が他人や社会に尽くすことがより大切なのです(報恩)。因果の法則に照らして長い目で観れば、個人レベルでも社会レベルでも報恩感謝は真の幸福を約束するでしょう。

平等と不平等の関係もそうです。両者は正反対のように見えますが、表裏一体のものです。機会が平等だからこそ、結果不平等なのであり、結果平等というのは実は不平等なのです。運動会で順位をつけない、理解しようとしない子供がいるから授業を進めない、といったこともあるようですが、陰陽の法則を無視するものであり、不健全かつ非建設的なことと言えるでしょう。

失敗は成功の元であり、負けて己に向って「なにくそ!」と思えるからこそ、次回の勝ちにつながり、共に成長し進化できるのです。社会生活においても素朴に考えれば、努力した者が報われる社会の方が健全であり、努力してもしなくても結果平等の社会は不健全でしょう。

他にも、自由と責任、伝統と革新、知性と感性、アナログとデジタル等々、陰陽の法則で物事をとらえて考察することは有益だと思います。

tanaka-minoru.jpg

六角田中医院院長 医師
元・世界中医薬学会聯合会 常任理事
田中 実(たなか みのる)

1998年六角田中医院開業。
伊藤良・森雄材両師に師事、東洋医学(中医学)の啓蒙に携わる過程で東洋医学の理解には道教・儒教・仏教、易経の理解が不可欠と気づき、四書五経・古神道・言霊・数霊・密教を含め研究に取り組む。
「生命・病・健康・癒し・自然治癒力・科学・宗教・教育・医師とは何か」等の諸テーマの一元的解明を試み、独自の医療哲学を確立。
2007年内科認定医、東洋医学専門医、認定産業医を辞し、自覚を込めて「生命毉(円毉)」と称す。
生命毉療・円通毉療を実践し、修身斎家治国平天下をめざす。
六角田中医院(漢方専門)京都市中京区六角通東洞院東入オフィス5ビル3F
075-256-0116(原則予約制・水曜休診)
HP:
http://homepage3.nifty.com/rokkaku-tanaka/

天人相応太極円通図

 10月号では健康の本質が円通にあることを述べましたが、もう少し具体的にお話をして円通の考え方、そしてそれを図示した天人相応太極円通図が如何に大切かについてお話したいと思います。

 例えば、「体を温めよう」というのがありますが、六角田中医院では天人相応太極円通図・万病相火一元論に基づいて「頭寒足熱が大切」と説きます。世間では誰か名前の通った方が「体を温めよう」というと、みんな右へならえで只々「体を温めよう」になってしまって頭寒が抜けてしまうのです。「頭を冷やせ」というように頭は冷にして静(冷静)である方がよいのです。陰陽の発想、それを詳しく展開した天人相応太極円通図の発想が欠如しているからです。

vol108-13-1.gif

 子供が寝て頭のスイッチが切れると手足が温かくなります。これは頭寒足熱です。緊張して上がると頭が真っ白で冷や汗をかき、反対に手足が冷えてガタガタ震えたりトイレが近くなります。これは頭熱足寒です。だから「落ち着け」となるのです。

 煩悩の「煩」の字は、頭に足が付いた象形を表す頁が火で燃えていることを、「悩」は脳の象形である右側の旁で心を使うことを示しますが、これが実は病や老化の基本形になるのです。若い頃の写真を見ると、顔が締まって髪も黒くてふさふさですが、年と共に顔が膨らみ髪は薄く少なく白くなりますが、これは頭熱で焼けるからです。脳血管障害や心臓血管障害が年と共に増加するのも、脳が焼け心臓(部分即全体の法則で腹部で脳に当たるのが鳩尾の処で心臓の処です)が焼けるからです。詳細は別の機会に述べますが、ほとんどの生活習慣病はこのようにして起きるのです。基本的なことは05年の学会で発表し、07年の『生命毉療は円の毉療』等にまとめています。

 要するに、病を考える時には「陰陽」の考え方が根本的に大切なのです。そもそも病とは、外枠の疒の冫は二水(にすい)で陰、内側の丙は火の兄(ひのえ)で陽で、陰陽のアンバランスのことなのです。天人相応太極円通図を観てください。日常生活ではついつい左側の白い勾玉部分が過剰になり頭熱に、その反動で足寒になりがちです。だから、頭寒足熱が大切なのです。上虚下実(じょうきょかじつ)といってもいいです。この足熱は、「足に氣血を満たそう」ということですが、どうも満足という言葉は其処に由来するのではということで、考察を加えて16年の『円通毉療の日常診療』の中で「満足療法」として発表したのです。

 日本人って素直で素晴らしいところがあるのですが、ついつい単純に雷同するところがあります。「体を温めよう」となると頭寒足熱や煩悩や満足といった伝統的な言葉があるのに、何でもかんでも温めようになりがちです。「頑張らない」という本が売れると何でもかんでも頑張らないとなり、頑張ろうという言葉を使うと白い目で見られかねません。「水飲み健康法」が話題になると、体格や男女の別や体質や気候や運動量に関係なく、2リットル飲もう! みたいになってかえって漢方でいう水湿・寒湿の病になったりします。健康や病の本質であるバランスのとれた陰陽で円通する、という本来の発想が欠けているからです。

 天人相応太極円通図はとてもシンプルなのに、観方次第で多くのメッセージを見つけることが出来ると思います。

tanaka-minoru.jpg

六角田中医院院長 医師
元・世界中医薬学会聯合会 常任理事
田中 実(たなか みのる)

1998年六角田中医院開業。
伊藤良・森雄材両師に師事、東洋医学(中医学)の啓蒙に携わる過程で東洋医学の理解には道教・儒教・仏教、易経の理解が不可欠と気づき、四書五経・古神道・言霊・数霊・密教を含め研究に取り組む。
「生命・病・健康・癒し・自然治癒力・科学・宗教・教育・医師とは何か」等の諸テーマの一元的解明を試み、独自の医療哲学を確立。
2007年内科認定医、東洋医学専門医、認定産業医を辞し、自覚を込めて「生命毉(円毉)」と称す。
生命毉療・円通毉療を実践し、修身斎家治国平天下をめざす。
六角田中医院(漢方専門)京都市中京区六角通東洞院東入オフィス5ビル3F
075-256-0116(原則予約制・水曜休診)
HP:
http://homepage3.nifty.com/rokkaku-tanaka/

円通の意味(3)

 円通を使った言葉で代表的な言葉の一つは円通大士。実はこれ観世音菩薩の別名です。観世音菩薩には他にも観自在菩薩、正法妙如来など、合計四つの名前があるのです。そして、これら四つの異名を持つ観音の姿形が、読者にはお馴染みの天人相応太極円通図(以下、円通図)なのです。「えっ、そうなの?」と言われそうですが、私的にはそうなるのです。
円通図は既述のように円が中心帰一の回転コマ運動をしますが、これが「円通」で円滑や円満、そして健康に繋がります。
この円通図は横軸にすると波の形つまり波動ですが、宇宙の万物万象は波動です。宇宙は音であるとも言いますが、音は波動でもあり、世の音を観ると「観世音」、その本質は波動なのです。宇宙は無限絶対無始無終の神・仏でもあるので、このような波動を本質とする観世音は神・仏そのものでもあるのです。

vol108-13-1.gif

 その波動は陰陽の勾玉の円通から生じますが、この陰陽は陰陽互根・陰陽転化の関係にあり、観方を自在「観自在」にすると、陰は陽、陽は陰でありつつ、一つです。すべては一つであるという法、これが「一に止まる法=正法」です。これら「円通」「観世音」「観自在」「正法」に大士や菩薩や妙如来が付いているのです。大士は大いなる士であり、菩薩と妙なる如来=仏は仏教の十界から来ます。観音は菩薩でも仏でもあります(『究極の医療は円通毉療』参照)。

 四つの名前は観音の働きに由来します。例えば、ある人が家では「お父さん」、会社では「部長」「先輩」と呼ばれるようなものです。
観音の四つの名前のうち、健康の定義には円通が、その手段には観自在が適しています。

 象徴的なのは、仏教のエッセンスである般若心経の冒頭の「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆皆空 度一切苦厄」です。この部分は般若心経のエッセンスですが、そのまたエッセンスが傍線の部分で「観自在の智慧によれば一切の苦厄から救われる」ということです。度は「縁亡き衆生は度し難い」という時の度であり、彼岸に渡る時の渡は度に川を意味する氵(三水)が付いたものです。一切の苦厄とは、生老病死の四苦とそれに愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦を併せた八苦。つまり、自在に物事を観る(受け止める)観自在を徹底すれば、四苦八苦から救われた心身共なる健康が得られるということなのです。

vol110-13-1.jpg

 観自在を徹底するには、観音を知り尽くした白隠さんが仰った正念工夫(一に止まる今の心を保持するように工夫する)を絶えず心がけること。「ピンチはチャンス」「苦難は幸福の門」「艱難汝を玉にす」です。その理解の方便として当院が開院時から受付台下面に貼っているのか、貴婦人と老婆のだまし絵です。よく見ればどちらにも見えるわけで、貴婦人も老婆も表裏一体なのです。

 自分が直面することはすべてこれと同じです。そして大事なことは「善も悪も糾える縄の如しで自分にとって必要不可欠なことであり、しかもそれは他でもない自分の玉し霊(たましひ=魂)が組んだ今世でのプログラムである」ということです。白隠さんは「地獄大菩薩」という書を残していますが、地獄を味わったからこそ常楽我浄の悟りに至れたと地獄に感謝しています。個人レベルでも人類レベルでも同じです。現在そして未来に起きる艱難辛苦や天変地異による地獄は大変でしょうが、そのことによって初めて玉し霊の覚醒が起き、霊心体共に真に健康で平和な世界すなわち弥勒(ミロク=3 ×6=6+6+6=18→観音の数字)の世に至るのだと思います。

tanaka-minoru.jpg

六角田中医院院長 医師
元・世界中医薬学会聯合会 常任理事
田中 実(たなか みのる)

1998年六角田中医院開業。
伊藤良・森雄材両師に師事、東洋医学(中医学)の啓蒙に携わる過程で東洋医学の理解には道教・儒教・仏教、易経の理解が不可欠と気づき、四書五経・古神道・言霊・数霊・密教を含め研究に取り組む。
「生命・病・健康・癒し・自然治癒力・科学・宗教・教育・医師とは何か」等の諸テーマの一元的解明を試み、独自の医療哲学を確立。
2007年内科認定医、東洋医学専門医、認定産業医を辞し、自覚を込めて「生命毉(円毉)」と称す。
生命毉療・円通毉療を実践し、修身斎家治国平天下をめざす。
六角田中医院(漢方専門)京都市中京区六角通東洞院東入オフィス5ビル3F
075-256-0116(原則予約制・水曜休診)
HP:
http://homepage3.nifty.com/rokkaku-tanaka/