青々と大きな葉を広げるバナナ。背丈はゆうに4メートルを超え、どっしりとした幹は20センチメートル以上になります。その堂々とした姿から、私たちはなんの疑いもなく「バナナの木」と呼びます。しかし、驚くべきことにバナナは生態学的には「木」ではなく、「巨大な草(草本性の植物)」なのです。
太いバナナの幹(仮茎)も葉っぱの鞘の部分が幾重にも重なりあってできています。葉っぱは約60度ずつ角度を変えながら、らせん階段を上るように次々と出てくるため、上の葉っぱが下の葉っぱの太陽光を遮るような無駄がありません。朝から夕方まで、すべての葉っぱで光合成をし、成長に必要なエネルギーを効率よく作り出しています。
さらに、葉っぱは成長に合わせてサイズを大きくしていきます。幹が太くなるのに合わせて、それを支える葉っぱもまた、2メートルを超える大判サイズに進化するのです。「下草や低木をものともせず、数メートルの高さで巨大な葉っぱを360度全方位に広げ、朝から夕方まで光合成しまくる」というのは、成長の観点では非常に有効です。しかし、これは諸刃の剣で、東西南北あらゆる方向から吹いてくる風を大きな団扇のような葉っぱでまともに受けることになります。幹は蜂の巣のような三次元構造で強度を保っているものの、その本質はやはり「草」。強風にはめっぽう弱いのです。かつて、台風対策を知らなかった初期のころの私の畑では、一夜にして100株以上のバナナが幹の真ん中から折れ、バナナが全滅することも経験しています。
しかし、バナナは無防備に強風に煽られている訳ではありません。風を受けた葉っぱは、まるで裂けるチーズのように葉脈に沿って裂けていきます。風の強い場所だと櫛の歯のように細かくバラバラになります。しかし、葉っぱは数十以上に切り裂かれても、成熟葉はちゃんと緑色のままで、光合成の機能を果たしているのです。1枚の美しい葉っぱで太陽光を受けるのに比べれば、光合成の効率は落ちるかもしれません。しかし、「強風に煽られて命を落とすよりずっと良い」と、柳に風で受け流す術を身につけているように見えます。
出てきたばかりの若葉(一枚葉)と櫛状に風を受け流す葉っぱ