先月号で栄養の話を少し離れて、本業(?)である形成外科の診療と体を知って、学んで実践する「H S T B:エイチエストータルビューティー」についてお話させていただきました。本業の流れになったので、今月号では変わったコンセプトのオリジナル製品について書かせていただきます。
診療中、「鈴木先生おすすめの化粧品はなんですか?」とよく聞かれますが、以前は自信をもっておすすめできる製品がありませんでした。自分が試して納得したものを患者様に提供することをモットーとしています。「なければ自分で作るしかない」。そう思ったのがH Sオリジナルコスメの原点です。
第一号の「カクテルクリーム」は2000年の開業と同時に発売しました。使用が許可されている美白成分を、法定の上限を守りながら複数配合することにより、いくつもの段階でメラニンの生成を抑えるように処方した美白クリームです。高い美白効果が得られると好評をいただき、今でもたくさんの需要をいただいています。
オリジナル製品のいくつかは、共同での製造販売のお話がありましたが、企業様の利幅が少なく価格が合わないという理由で実現することはありませんでした。当院では患者様に毎日無理なく使っていただきたいという考えから、化粧品から利益をいただこうとは考えておらず、開発費は度外視で、最低限の製造費と必要経費を考えて価格を決めているからです。
私はほとんど使っていません
オリジナル化粧品を作っていながら私自身は製品をほとんど使っていません。これこそがブランドコンセプトなのですが、クリニックに来ていただく患者様にはファンデーションさえいらない美しいお肌になっていただく。そのことをサポートするのがオリジナル製品の役割です。いずれはなにも使わなくてよい生活を送っていただくことが目標です。
患者様からくすみのご相談を受ける際、皮膚の取り扱いを指導するだけで改善することがあります。お手入れや洗顔(タオルで拭くときも)の際に摩擦をされている場合が多くあり、摩擦はメラニン色素の形成を促しますので頬骨の高い部分やフェイスラインの骨の部分に一致して色素沈着(くすみ)が認められることがあります。また摩擦することによって皮膚のバリア機能が刺激を受け、正常なターンオーバーを邪魔してしまうこともあります。さらに、間違った方向への過剰な摩擦はシワやたるみの原因となります。ですから「なるべく触らない」ということが美しい皮膚への近道となるのです。美しくなりたいためのお手入れの刺激が美しい皮膚から遠ざける原因となるとしたら皮肉な話ですから、クリニックを初めて訪れる患者様にはメディカルエステで皮膚の取り扱いの説明を受けていただくように努めています。
最低限の基礎化粧品は揃っていたのですが患者様からクレンジング剤を作ってほしいと要望をいただき、開発を試みましたが納得できるものができませんでした。そこでファンデーションをオフするクレンジングは必要ないと発想を転換し、オフにクレンジングが必要ない日焼け止めを開発しました。紫外線から肌を守るUVケアは必須だからです。唯一基礎化粧品ではないメイクアップパウダーにはエステの分野などでクレイパックの材料として使われる原料を用い、乾燥感がなく使うほど肌によいファンデーションを作りました。
お肌が本来の状態に戻ったらアイテムを減らし、最終的にはメイクのいらない素肌美人になっていただく。私は日焼け止めと洗顔石鹸のみ使っていて普段はノーメークです。還暦を過ぎていますが、患者様に褒めていただくことも少なくありません。