2月号まで一年間連載していただいた応援ソングライターyu-kaさんのコラムが前号で最終回を迎え、次号4月号より新コラムの開始予定です。ちょうど年度の変わり目、この3月号に空白ができたため、毎月本誌の編集をしながら思うことをつらつらと書いてみようと思います。箸休め的に、よろしければお付き合いください。
門出の季節に桜
3月は日本では年度の区切りで、学校の卒業式が集中します。そのため、3月はなんとなく別れの季節、そして4月は始まりの季節というイメージがあります。3~4月にかけて開花し、満開となる地域が多いソメイヨシノも、そのイメージを強くします。
日本の社会が4月始まりで動くようになったのは、明治10年代からのようです。諸説あるようですが、有力なのが、現在の財務省、当時の大蔵省が、明治時代に定めた会計年度に合わせたという説。ちなみにこの会計年度、当初は1月始まりで、何回かの変更を経て、4月始まりとなりました。これに合わせ、学校なども4月始まりとなっていったようです。
日本で生活していると4月始まりというのは当たり前のように感じますが、こうやって考えてみると、一年の始まりの1月でもなく、旧正月の2月でもなく、4月が始まりというのは不思議な気もしてきます。新年度の区切りがここでなかったら、満開の桜(ソメイヨシノ)を見ても、今とは違う感情を抱いたのかもしれないなあと思います。
3・11から9年
今年の3月11日で、2011年の東日本大震災から9年が経ちます。本誌5月号の特集記事でも触れましたが、当時、私はプレマ(株)の社員で、京都に住んでいて、何日か前に東京出張から帰ったばかりでした。ニュースで繰り返し見た映像と、混乱した空気、焦燥感や恐怖感、そして、翌年福島を訪れたときに見た風景は今もはっきりと思い出せます。そういった記憶のなかで、桜というのは印象的なもののひとつです。これは直接自分で見たわけではないのですが、震災後、支援のため現地入りしたプレマ(株)代表の中川社長が、支援活動中に目にした桜について、幾度も話をされ、その画像や映像が記憶にあるからか、3・11とそれに関連する出来事を思い出すと、そのどこかに桜のイメージがあるのです。
出来事を伝えるということ
あれほどの出来事があっても桜は咲き、季節がめぐる。しかし、最近はその季節のめぐりも変わりつつあります。この9年間に、日本各地での地震、そして異常気象による水害などが起こり、その度に大きな被害が出ました。
自分に身近なところでは、私は山口県出身なのですが、山口県周辺は2018年の西日本豪雨で大きな被害が受け、電車の完全復旧に長い時間を要しました。また、昨年11月に箱根を訪れたのですが、昨夏の台風19号の影響で、箱根登山鉄道が運休したままです。台風19号は、福島や宮城でも大きな被害を出しました。
そういった大きな出来事があるたびに、自分になにができるのだろうかと自問します。現地に行ければ良いけれど、それができない場合、たとえば募金であればすぐにできますし、今はふるさと納税を通じた寄附もできるようになっています。また、本誌もそうですが、信頼できる情報の発信というのも、微力ながら役立てることのひとつなのかなと、思えるようになってきました。なにか大きな出来事があった場合、今はSNSでさまざまな情報が拡散されますが、信頼できる情報を見極めるのはなかなか難しく、善意の拡散がマイナスの影響となることもあります。そういったときに、判断基準のひとつとなれる情報を発信していきたいと思っています。
卯の筆企画
河村郁恵(かわむら いくえ)
ライター・編集者。本州最西端の県出身。大学では国文学を専攻。元プレマ社員だがメディア勤務を経て、独立。満員電車から解放されて今は鎌倉が散歩圏内。夫とデグー(アンデスの歌うネズミ)のふらりと一匹暮らし。