子宮をはさんで握手
ある助産師さんの新生児に対するコメントに、働いている母親から生まれた子はなんだかせわしなくて、働いていない母親から生まれた子はおっとりしている、というものがありました。
働く母親としては少々つっこみたくなるというか、必ずしもそうではない例もある気がしますが、経験ある助産師さんから、母親の活動の仕方と新生児の活動の仕方がリンクするというような感想が出てくるのは面白いです。
赤ちゃんは母親のおなかの中でいろんな刺激を受けています。胎児の五感のなかでも一番早く発達するのは触覚といわれます。足の裏に物が当たるというようなこともわかるらしいので、母親が忙しく動き回るタイプだったら、生まれてからも速めのテンポを好んだり、ほとんど動かない生まれたての時期ですら、なにかせわしない、という印象を与える赤ちゃんに育ったりするのかもしれませんね。
妊婦健診時のエコー検査で、おなかの赤ちゃんが指をしゃぶっているのを見て感動した! なんて話も聞きます。おなかの中にいるときから触覚があると考えると、触ることと触られること、両方が楽しめる指しゃぶりは、確かになかなか楽しい行為なのではないでしょうか。
胎児は、子宮の壁を触るような動きもするそうです。わたしは、妊娠中、おなかに手を当ててちょっと温めるとおなかの中の子どもが気持ち良さそうにぐりっと動く、というような印象を幾度か持ったのですが、わたしが触っているその場所を、子どもも触ってくれていたのかもしれない。子宮をはさんだ握手と思うと幸せです。
心地よい音、やわらかな光
聴覚も、比較的早くから発達します。だから、母親の動悸が高まりがちだと、子どももその音に慣れるのかも。外界の音も聞こえるようなので、母親がどんな環境にいるかで、胎児への刺激の質の違いは出てくるでしょうね。
だから胎教になる音楽を……などといい始めるとややこしいのですが、妊娠すると女性は、自然に動きのリズムや聴きたい音が変わってきます。自分の経験を思い出しても、文字通りノイズに近い音楽も聞いていたのが、そういう音(楽)は好まなくなりました。妊娠中の自分が心地いい生活様式に沿っていければ、それが胎教なのではないかな、と思います。
光もそうです。胎児はおなかの中で光を感じるようになります。妊娠すると、蛍光灯や、夜に電化製品が発する小さな光でも、まぶしかったり、見るのが辛くなるような人もいます。妊娠中や産後養生中の人に針仕事はさせない、といったことも昔からいわれています。実際に目を酷使するとすごく疲れるし、視力が落ちやすいのですけれど、ひょっとしたらおなかの赤ちゃんが、光の刺激に疲れた、と教えてくれているのかもしれません。
目を休めるには眠るのが一番です。眠いとか、だるいとか面倒とか、ゆる~いモードになりやすい妊娠期間に、素直に横になり、目をつぶって眠ってしまうことで、すごく自然な調整ができるのでは、と思います。巣作りの時期ともいえる期間に、ナチュラルなものを選びやすいのも同様です。
必要に応じて休む、自分が気持ちいい刺激に囲まれる。これは普通に、とても幸せなことですよね。妊婦の活動は瞑想を生活に取り入れることにも似ています。そのためか、子育てが一段落した母の「妊娠だけでもまたしてみたい」という意見、実は、結構多いです。