今、眼の前に嫌な出来事、嫌な人、嫌な状態など、思い通りにならないことがある場合。その現状に対して嫌だと思ったり愚痴を言ったり、抵抗や反発をしても、状況は変わりません。それどころか、その嫌な状況を固定化してしまう可能性があります。
嫌な状況に対して、愚痴や不平不満を言うというのは、とても当たり前のことです。でも、その当たり前の行為が意味するのは「自分には今、嫌な現実が起きています」という追認です。もう少し強い表現をすると、「自分には嫌な状況が起きても仕方がない。自分に嫌な状況が起きるのは、当然である」と思っているということになります。
愚痴や不平不満を言うことが、道徳的に良くないと言っているのではありません。嫌な状況から早く抜け出したいと思うのであれば、愚痴や不平不満を言って、現状を否定しないほうが良いということなのです。
現状を肯定するための方法
そうはいっても、嫌な現状に対して感謝するのは難しいですよね。そこで、あくまでも思考実験の一つとして、心がまったく伴っていなくても、渋々でも現状を受け入れるフリをしてみましょう。上辺だけでも良いので、肯定する言葉を考えてみましょう。嫌な出来事、自分な嫌いなところ、他人の嫌な面、社会的な問題……すべてのネガティブに対して、まあそんなことがあってもしょうがないか! と、次のような受け入れる言葉を探す練習をしてみてください。
「しょうがないな?、これもありかな?」
「悔しいけど、こんなこともあるよね」
「この世の中、地震もあれば台風もくる、なんでもありだなぁ。そう思ったら自分の現状もありかもしれないなぁ」
どうしても受け入れる言葉が思いつかないときは、「私は今の状況を受け入れられないと思っているんだなぁ」と現状を受け入れられない自分の思考を受け入れてみましょう。
現状を一旦受け入れることで、現状を否定するというパターンを崩すことができます。現状を崩して新しい局面に変化させることができます。
受け入れる言葉を、ある程度、抵抗なく言えるようになったら、次は積極的に肯定する練習に進みましょう。たとえば、次のような言葉です。
「あれはあれでよかった」
「まあいいかぁ」
「そう思っていいよね」
どの言葉も過去や現状を肯定する言葉です。頭(思考)はいつもなにか問題を探しては「改善」「解決」しようと待ち構えています。一度改善、解決しても、もっと上手に、もっと効率よくするにはどうすればよいか? と思考が止まることなく続いています。改善、解決しなければいけないというのも、現状を否定する思考パターンです。「あるがままでOK」「そのままでいいよ」という「肯定」が、その思考パターンから脱出するとても良い方法です。そのためには、改善する、より良くするという、一見プラスに見える考え方を手放す必要があります。
さらに進むと、すべての事象をあるがまま、起きるまま認めるという気分がわかるときがきます。自分でさまざまなものをコントロールしようという気持ちを手放したとき、心がとても軽くなります。
有漏路(うろじ)より
無漏路(むろじ)に帰る一休み
雨ふらば降れ 風ふかば吹け
一休宗純
(所詮この世はあの世へ帰るまでの一休み。雨が降るなら降れ。風が吹くなら吹け。)