休みにせよ、お金にせよ、ついつい「より多く」を求めてしまいます。同じ資産を持ちながら「これだけしかない」と嘆くか、「これだけある」と感謝するか、心の持ちよう次第で内面的な心の豊かさが変わります。積極的な考え方を選択する人は、心身の健康を維持しやすく、外面的な豊かさも結果的に獲得しやすいのではないかと思います。
仕事で逃げ出したいような気分になるとき、東日本大震災直後に毎週末ボランティア活動に通っていた宮城県七ヶ浜町でお会いした方々のことを思い出します。船も家も家族も失われた方が、「命だけは助かって良かった」と言い、「自分よりもっと大変な方がいるから」と別の被災地のボランティアに駆けつけておられました。当時、避難所で共同生活を営み、お風呂にさえ入れない状況にありながら、失ったものに目を向けるよりも、在るものに感謝して逞しく行動される人の姿を見て、「人は何と強く、高貴に生きられるものか」と深く感銘を受けました。
一方で歴史を振り返って、さまざまなハイテク機器に囲まれて生活の便利さは格段に良くなっても、心の豊かさが伴わないと人が自ら作り出すさまざまな悩みの種はいつの時代もなくなりません。海・山・川・大地・動植物のすべての自然環境が、悠久の時を経て環境に適応した変化を続けています。たとえば飛行機の機体のように、調和の取れた美しいデザインは同時に機能性にも優れているとされますが、調和のとれた状態を人は健全で美しいと感じます。「より多く」を求める煩悩に悩まされるとき、一つの指針は時間や距離を超えて「調和のとれた美しいものに向かっているかどうか」を評価することではないかと思っています。オルタナティブファーム宮古の判断基準の一つ(おそらく根幹)です。
まろやかで濃厚な味わい。手間と時間をたっぷりかけてできあがったミネラル豊富な天然甘味料。
オルタナティブファーム宮古代表
松本 克也(まつもと かつや)
自動車メーカーなど14年の研究職を離れ、2012年5月に家族4人で宮古島に移住。
約1万平米の畑で主に有機サトウキビを栽培し、黒糖蜜やキビ砂糖などの加工品を製造。
畑で黒糖作りが体験できるプログラムも準備中。
その他、有機バナナの栽培、未完熟マンゴーの発酵飲料の製造に携わる。