朝倉さん(右)と 山下(左) |
アサクラ代表の朝倉玲子さんが、至福のオリーブオイル「オルチョサンニータ」に出会ったのは10年前のことでした。 2年間のOL生活の末に「事務職は不向き」と決断し、自然食のケータリングサービス会社に転職。新しい職場で本物の食材のすばらしさに目覚め、料理修行のためにイタリアに渡ったという行動派の朝倉さんに、「オルチョサンニータ」(以下、オルチョ)と歩んだ10年間を振り返ってお話ししていただきます。 |
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イタリアでは有機オリーブを栽培する農家民宿に住み込みで働きながら、地元の家庭料理やオリーブ栽培を学びました。最後の一年は、当時三つ星レストランだったリストランテでも働き、イタリア料理に欠かせないオリーブオイルにどんどん魅了されていきました。
土地毎においしくて高品質のオリーブオイルがあることを知ると同時に、日本で流通するオリーブオイルの質にも疑問を抱き始めました。「本物のオリーブオイルを日本に届けたい」「南部イタリアの家庭料理のおいしさと手軽さを紹介したい」という思いも強まり、まずはオリーブオイルのテイスター・ディプロマを取得しました。
おいしいオイルはいろいろありますが、栽培方法や製造工程などを調べると、納得できるものは簡単には見つかりませんでした。一般のイタリア人にはあまり知られていない様子でしたが、生産者間でオイルをブレンドしたり、国外産オイルを混ぜていたりするのは当たり前で、ひどいものだとサラダ油がブレンドされているものまであったんです。
ヨーロッパではイタリア、スペイン、ギリシャなどがオリーブオイルの産地として有名です。イタリア産は特に人気が高く、各国に輸出されていますが、あの小さな国土で世界中の需要をまかなえるはずがありません。
生産者はよく分かっていて、「混ぜものなし」を謳い文句にしつつ、実はちゃっかりブレンドしていることも少なくありません。というのも、オルチョのようにオリーブ農家が搾油・瓶詰めまで行うケースは少なく、基本的には農家がオリーブを搾油所に持ち込み、その工賃をオイルで支払うため、搾油所はそれらのオイルを自家農園分と混ぜて「自家栽培のオリーブオイル」として売っていることが非常に多いのです。
そんななか、イタリア国内の農家や製造元をめぐり歩いてやっと見つけたのが、ジョヴァンナさんたちが丹誠込めて作る本物のシングルエステート(単一農家が製造する)「オルチョサンニータ」でした。
彼らも以前は搾油所に持ち込んでいましたが、年によって相場も安定しないため、「自分たちで絞って直販しよう」という決断をしました。私はまさにそのタイミングで出会うことができたので、あらゆることを前向きに話し合うことができました。
容器変更による不具合などは今も要注意ですが、当初はボトルの汚れやラベルの歪みといった初歩的なミスも多く、彼らの基準がなぜダメなのかを伝えることが最初の一歩でもありました。
日本のデパートやスーパーの食品売り場にも各種オリーブオイルが並んでいますが、10年以上のロングセラーはというと、大手のもの以外にはなかなかありません。味や価格の問題よりも、日本人の細かさと外国人のおおらかさに折り合いがつかずに断念してしまうからではないかと私は思うんですよ(苦笑)。
ジョヴァンナさんたちは日本人的な細かい要望も真摯に受け止めてくれるすばらしいパートナーなので、私はとてもラッキーです。10周年を一緒に祝うために来日したジョヴァンナさんに、「なぜ素人同然の私にオルチョを託したの?」と聞くと、「玲子は若かったし、自分たちもこれからだったから、一緒に成長できると思った」と言われました。お互い無我夢中だったからいつも辛抱強く向き合ってこられたんですね。
10周年のお祝いに集まってくださったお客さま方からもいろんな質問がでて、ジョヴァンナさんは、「有機認証があればいいわけじゃないのね」と、日本人の食に対する興味関心の深さに戸惑っているようでした。イタリアでは食材から料理するのが一般的で、日本のように加工食品が氾濫しているわけではなく、農薬の問題はあっても添加物汚染は深刻ではありません。そのせいか、日本人の食に関する危機感にはピンとこないようなのですが、そういった意識の高さに対しても、徐々に理解を深めてもらえればと思っています。
ちなみにオルチョは有機認証済みですが、状況をみながら「必要」と判断した年にだけ、認証機関が認める殺菌剤を最低量使います。果実や土中への影響を考えると極力使用しないことが望まれ、2006年以降は彼らの試行錯誤の甲斐あって使用せずにきています。
5年前からは堆肥を緑肥に変更し、かつ最低限しか投入していないそうです。自然栽培にかなり近づいてきていて、畑の状態も年々良くなってきています。オルチョが年々おいしくなっているというお声をいただきますが、こういった工夫が味に反映されているんですね。細かく説明しなくても、お客さまはその変化を感知し、評価してくださっていることをうれしく思います。
実はこうした生産者の取り組みも付加価値であり、お客さまの安心や満足につながるはずなのですが、彼らにはその感覚がないのでこまめには報告してきません。これまで私は、オルチョの使い方講習会という形で、オリーブオイルの良さや食・農の大切さを伝えてきましたが、これからは、彼らの日々の取り組みもしっかりと引きだして発信していくことも自分の仕事だと思っています。
「オリーブオイルの鼻につく独特の臭いはオイルが劣化している証拠。ほんとうに新鮮で質の良いオイルはとてもさわやかな香りがします」と朝倉さん。高品質のオリーブオイルはなかなか日本の市場に定着しないのが現状ですが、特に最近は健康効果からオリーブオイルを摂り始める人も多いため、「正しく選ばないと逆効果になりはしないか」と心配気です。 こだわりのオリーブオイル「オルチョサンニータ」は、作る人と届ける人、そしてお料理するあなたの愛情をたっぷりと吸収して、食卓を囲う明るく元気な笑顔を約束します。 |