今さら聞きにくい「よく聞く言葉」を詳しく解説します
食生活のことが気になるようになってきてからたまに聞くのが「まごはやさしい」という言葉。子どもを産んでから、やっと健康に気を遣うようになったタイプで、もしかしたら知ってて当たり前のことなのかもしれませんが、よくわかっていません。「標語」みたいなものですか?
(所沢市・食生活を気をつけてたら少し痩せてきた母より)
A.日本の伝統的な日常食その食材を示したことば
答える人 中川信男
ユネスコに無形文化遺産として登録された「和食」。なぜかラーメンやカツ丼、もしくは、豪華な会席料理こそが和食というイメージがあるようですが、本当に価値があるのは、日本の伝統的な日常食。それを象徴しているのが素材の頭文字をとった「まごわやさしい」という言葉。すべて網羅しているわけではありませんが素材を端的に示しています。これはカロリーベースの西洋栄養学とは本質的に別ものと考えておくべきだと思います。病気やダイエットにおいてカロリーを考慮することも必要ですが、カロリーよりも重要な要素があるのではないかというのが現在の海外での常識。カロリーベースの栄養学は日本だけかもしれない、ということを念頭に置いておいてください。
ま:まめ
豆、および、豆の発酵食品のことを指します。味噌、醤油、納豆、そして豆腐のような豆の加工食品で、日本人にとって欠かせない植物性たんぱく質です。そもそも日本人は魚以外に動物性たんぱく質を食べる文化がなく、豆類から植物性たんぱく質を摂取してきました。発酵させたり乾燥させたりして保存できます。
ご:ごま
広い意味でのナッツ類のこと。日本人の場合、やはり基本は、ごま。おひたしなどにして食べます。ビタミン豊富でミネラルバランスがよく微量栄養素が含まれています。これも乾燥保存できます。
わ:わかめ
昆布などを含む海藻類全般を指します。これも乾燥や塩漬けで保存ができ、うまみもあるため、内陸部でも出汁にしたり味噌汁に入れたりして使われてきました。運送事業が発達するまでは、食品を保存する技術が発達してきたのですね。
や:やさい
いうまでもなく野菜にはあらゆる抗酸化物質、ミネラルやビタミンはもちろん酵素や食物繊維が含まれ、健康の主体といわれてきており、現在も変わっていません。「まごわやさしい」のなかで唯一あまり保存が利きませんが、ありがたいことに日本ではどこでも野菜を作ることができます。切り干し大根、たくあんなど発酵や乾燥など長期保存する技術もありますよね。季節を通じて食されてきました。
さ:さかな
島国の日本は海産物は豊か。内陸にもそれなりに新鮮に届けることができ、干物にする方法も。「DHAやEPAが豊富」と最近はいわれます。それも事実ですが、日本人にとっては長く食されてきた、なくてはならない動物性たんぱく質源であったことは間違いありません。
し:しいたけ
きのこ類全般のこと。海外ではスーパーフードとされており、βグルカンなどが含まれているため免疫食品であるという認識です。やはり保存性にも優れており干すとさらにおいしくなりますよね。カロリーも低く繊維質のかたまりなので腸にもいい。日本では椎茸が日常的に食べられてきており、舞茸などはアメリカでスーパーサプリメントといわれています。日本は温暖湿潤なところが多く、きのこが育ちやすく長く食されてきました。
い:いも類
いもといえば、昨今、じゃがいものイメージかもしれませんが、そもそも日本人が食べてきたのは、里芋やさつまいも。さつまいもは、甘みの素材としておやつにおかずに食されてきました。山では自然薯(山芋)も採れます。自然薯は滋養食の最たるもの。里芋もそうです。お手当てにも使われますよね。
自然食の方は、「まごわやさしい」を自然に摂っていらっしゃることでしょう。これから食生活を考える方は、カロリー栄養学の30品目を摂ることに神経質になってしんどくなるよりも「まごわやさしい」を平たく取り入れることから始めてみては。ただ、食材はいいものを選びましょう。一般的によく売られている味噌や醤油は、本来の醸造法をとっておらず機能性がないものも多いもの。発酵食品だけでもいいものを使っていただきたいです。