健康的な生活の秘訣、それは季節感を大切に自然の中で生かされていることを感じながら、日々の生活をきちんと送ることです。
春になると、ルンルンと心が弾み、気分が高揚してきます。東洋医学では春は「発散」の季節、外へ上へとエネルギーが拡散していくと考えられています。春の訪れとともに草木は芽を出し、地中で溜めていたエネルギーが土を破り外へと出してきます。自然の影響を受けていることを考えれば、気持ちが昂るのも納得がいきますね。
ひな祭りの食文化
ひな祭りといえば、ひし餅。その3色、緑・白・朱には大切な意味が込められています。緑は植物、健康な生命を養うものの色。白は清らかな色で、人間を支える骨の色であり、子どもの生命を育てる母乳の色。長寿や子孫繁栄の意味もあります。朱は血液、生命活動そのものの色。また、春の新緑のおかげでおめでたい紅白の縁起物があると見ることもできます。
ひな祭りの御馳走は、ちらし寿司。エビ、レンコン、ニンジン、シイタケ、タケノコなどを刻んでのせ、ミツバや錦糸卵、のりを散らし、春の季節ものが集約されています。鮨めしに酢を使うのは、酢が血液を浄化する作用があるためとされています。ただ、酢は摂り過ぎには注意したい調味料で、一時期「お酢のみ健康法」が流行りましたが、日頃よほど肉食をしているような人でない限り、身体が冷えてしまうのです。
そしてもうひとつ、ハマグリのお吸い物が欠かせません。二枚貝のハマグリの貝殻は、元々の組み合わせ以外ではぴったりとかみ合わないため、「将来、よい伴侶にめぐり合うように」との願いが掛けられているのだとか。
このように、日本の食文化は行事と関わって育まれてきたものです。自然の恵みとしての「食」の時間を共有することで、家族や地域の絆を深めてきたのですね。先人の智恵を大切に受け継いでいきたいものです。
花粉症の原因と対策
春になると厄介なのが、花粉症。症状として、目・鼻といった体の部位では「上」に集中するのが春の花粉症の特徴です。草木が芽吹き、上へと成長していく「上昇」のエネルギーにつられるように「上」の症状が出るのです。
これと比例するかのように、体全体としては手足など「下」が冷たい人が多いことが挙げられます。原因の一つとして、冬の間に根菜類などの「下降」するエネルギーをもつ旬の野菜が不足していることが考えられます。冬のうちに「下」がしっかりしていないままで、春に「上」へのエネルギーが働いたときに引っ張られてしまうのです。
現代の生活習慣では疲労やストレスが溜まりがちで、昼夜や季節を無視して自然からかけ離れた生活リズムを重ねています。また、頭で物事を考える時間が多く、テレビやパソコンなど目を酷使するために、血液を「上」で消耗してしまって体全体に巡らせることができなくなってきていることも原因としてあるでしょう。
春の「発散」というエネルギーを考えれば、花粉症という症状も「出ている」というより「出している」と捉えて、体が発しているサインをきっかけに食事や生活習慣を見直す必要があります。抗アレルギー剤などのクスリによって症状を抑えてしまっても根本的な解決にはならないのです。
また、生物にとっての活動期である春からは、適度に運動することで体をつかっていくことも大切ですね。
鍼灸経絡治療においては、症状の現れている目や鼻の周囲よりも、肘・膝から下の経穴(ツボ)の反応を重要視します。身体とは全体でもって一つの生命体なので、全体のなかでバランスを取る必要があるのです。
すでに症状の現れてしまった人にとって、自分でできるセルフケアとして足湯や下半身浴することでしっかりと「下」を温めることで、体の上下のバランスを取っていくことで症状が和らぐことがあります。ホッとする時間をもつことで生活リズムを見直してみるのもいいかも知れませんね。
春だからと浮かれてばかりいないで、しっかりと地に足のついた生活を送りたいものです。
執筆 圭鍼灸院 院長 西下 圭一 病院勤務を経て、プロ・スポーツ選手からガンや難病まで幅広い患者層に、自然治癒力を引き出していく治療を特徴とする。 鍼灸師、マクロビオティック・カウンセラー、リーディング・ファシリテーター。 |