体の中からキレイになる

最近テレビや雑誌などで「AGEs」を取り上げている場面をよく目にします。AGEsとは「Advanced Glycation End Products」の略語で、「終末糖化産物」と訳されます。タンパク質の糖化反応(メイラード反応)によって作られる最終生成物の総称で、さまざまな老化現象に関与する物質です。非侵襲※1かつ短時間で測定可能な機器が多数販売されるようになったのが、周知されるようになった一つの要因だと思います。

私のクリニックでもAGEs測定をおこなっており、美容的な「老化」の指標として測定を希望される患者さんが多くいらっしゃいますが、AGEsの生成と蓄積は美容面だけでなく、白内障、加齢黄斑変性、皮膚老化、コラーゲンの架橋、骨粗しょう症、アルツハイマー病、動脈硬化、糖尿病の発症・進展・合併症などにも影響を及ぼすと考えられています。実際、アルツハイマー型認知症の患者さんは脳のAGEsが多いことがわかっていますし、AGEsの多いⅡ型糖尿病患者さんは骨密度が維持されていても骨折リスクが高いことがわかっています。これは高血糖状態のときにAGEsができやすくなり、「骨質」に関与するコラーゲンを結合させている架橋タンパク質が糖化し劣化するためです。さらに眼の水晶体のAGEsが増えると視力に影響を与えることもわかっていますので、AGEsはQOL(生活の質)を落とすことなく生活するうえで重要な指標といえます。

「糖化」による老化現象は、しみ、くすみ、肌のハリや弾力の低下、キメの乱れなどに顕著に表れるので美容と関連づけられますが、体内の糖化産物の量と相関して老け顔になるとすれば、美容面だけでなく健康にとって重要な指標と捉える必要があります。「大人は内面が顔にでる」といわれますが、これはでたらめではなく、健康状態が外見に表れるのかもしれません。

AGEs=不可逆的?

なるべく良い結果が出てほしいAGEs測定ですが、これまで測定結果は「不可逆的(元の状態に戻れないこと)である」とされてきました。一度悪い結果が出たら改善することはなく、これ以上悪くならないように努力するしかないとされてきたのです。しかし最近、そうでもないという考え方もでてきました。食生活を軸とする生活習慣を改善することによりAGEsの測定結果が改善した、という報告が数多く聞かれるようになってきたのです。

AGEsは食べた糖質が体内のタンパク質と結びついて作り出されるものと、食べ物に含まれるAGEsが蓄積されるものの二通りに分かれます。揚げ物など、高温で焦がして調理した食べ物にはAGEsが多く含まれます。一方、葉野菜や緑黄色野菜には抗酸化作用が期待できる栄養素が含まれますので、プラントベースホールフード※2の食事を生の状態でいただくことを心掛けるだけで、結果は少しずつ変わると思います。

私がプロデュースしているグルテンフリー・ヴィーガンカフェ「CHOICE」の26歳のスタッフは、CHOICEの食事を1年半ほぼ毎日食べ続けた結果、58歳相当だったAGEsの値が年齢相応である28歳相当に改善しました。これは(食)生活習慣を改めればAGEsの蓄積が減少し、体の中も外も美しくなるということを証明した結果ではないでしょうか。